朝日新聞にはひと月に一回であったか、「池上彰の新聞斜め読み」というコラムがあり、ジャーナリストの池上彰がちょっとした辛口新聞批評を書いている。けっこう朝日新聞への注文なども書いており、こういうのを続けているというのは朝日新聞も偉いところがあるなぁと常々思っている。

それはともかく、けさの「斜め読み」は、「都議会のセクハラヤジ 人権への感度問われる」と題して例のセクハラヤジ事件をめぐる報道を俎上にあげている。

まず、「事件」が起きたのは今月18日だったのだが、翌日の朝日新聞が全国版じゃなくて都内版に記事を載せたのをとらえて、こういう重要な問題を全国版で扱わなかったのは問題じゃネ?ということを言っている。フムフム、そりゃそうだと頷いて読んでいたのだが、続いてこんなことを書いている。

こういうときこそ新聞コラムの出番だと思うのです。愚かな野次、問題になっても名乗り出ない卑怯な議員、それを庇う都議会自民党。取り上げ方は、それこそコラム筆者の腕の見せどころです。

はい、全くその通りですな。で、毎日、読売は21日、日経は22日に一面コラムで取り上げた。しかし、肝心の「天声人語」はなかなか書かない。というわけで、池上コラムの後段は怒濤の展開である。

いつになったら取り上げるのだろうとやきもきしていたら、23日、野次を発した都議が名乗り出ました。名乗り出る前に取り上げることはなかったのです。この反応の鈍さは残念です。
   
で、そのあとやっと「天声人語」が書く。

発言の主が名乗り出てから、「天声人語」は24日付朝刊でようやく取り上げました。筆者が過去に目撃した自民党国会議員の地元事務所でのセクハラ行為についての話から書き出しています。筆者のセクハラに対する怒りがほとばしるような筆致が続きます。あまりにストレートな怒りで、コラムならではのひねりに乏しい気がしますが、これは望み過ぎかな。
  
この辺、「遅い上に出来もイマイチじゃねーか」と言っているわけですが、ツッコミはさらに続く。

この文章を読むと思います。これほどまでに重大なことだと考えるなら、なぜすぐに取り上げなかったのですか、と。
   
そして、最後にトドメ。

あまりに愚かな行為は、取り上げる気もなくなることがありますが、人権に関する感度が問われているのですよ。

実によくわかっていらっしゃる。

つまり、天声人語を書いている人間は、別にこんな問題どうでもいいと思っていて、しかし世の中が騒ぎ出したので「うむ、社会の木鐸としてはコレは何か書かねばなるまいッ」と突然閃いてしまい、で、本音ではどーでもいいと思いつつも、そこは流石にアタマのいい朝日新聞の記者であるから、もっともらしく「憤っている(フリをした)作文」を書いて、「ハイ一丁上がり!他紙よりちょっと遅れたが、義理は果たしたゼ」とかうそぶいているのではないか、そういうのではイカン、と池上氏は言っているワケである。

しかしそういう経緯をアカラサマに書くのは下品であるから、池上氏は婉曲に、しかしホントのことがわかるように皮肉をまじえてお上手にお書きになっているのだった。

というわけで、オレなんかがこんなところでいくら天声人語を批判してもノレンに腕押し、何の社会的影響もないわけだが、天下の池上彰にこんな指摘を受けたら、さすがの天声人語子も反省せざるを得ないのではないか。この機会に「その通りでございますジャーナリスト失格でした」とかいって筆を折ったらいいんじゃねーか。ま、そんなことするような良心があったら、とっくにやめてるか。