たまには記事をアップしたほうが良かろうと思って、まぁどうでもいいことを書くわけなのだが、ポエム(笑)は基本的に体質に合わないオレなのだが例外的にとっても好きな詩人がいて、つまりそれは山之口貘である。

あの、今は亡きフォーク・シンガーの高田渡がその詩に好んで曲をつけて歌っていたことからもわかるように、栄達とか名利とかいったものから背を向けて、とゆーか、ホントは名利が欲しいような気もないではないんだが、にもかかわらずそもそも向こうからそんなものが来る気配もないような人間のペーソスを表現させたら、もう天才的な詩人であった。妙に難解なことを言って偉ぶろうというところがないのも素晴らしい。

それとあと一つ言っておきたいのは、「やまのくち・ばく」とパソコンで打つと、「山之口」と出てくることがあるが、正しくは「山之口」である。「貘」も「獏」も意味的には、あの夢を食うという空想上の動物「バク」なので違いがないが、ここンところは注意が必要である。ちなみにタレントの大和田獏は「獏」のほうである。どうでもいいけど。



山之口貘 妹へ送る手紙

なんという妹なんだろう
――兄さんはきっと成功なさると信じています。とか
――兄さんはいま東京のどこにいるのでしょう。とか
ひとづてによこしたその音信のなかに
妹の眼をかんじながら
僕もまた、六、七年振りに手紙を書こうとはするのです
この兄さんは
成功しようかどうしようか結婚でもしたいと思うのです
そんなことは書けないのです
東京にいて兄さんは犬のようにものほしげな顔をしています
そんなことも書かないのです
兄さんは、住所不定なのです
とはますます書けないのです
如実的な一切を書けなくなって
といつめられているかのように身動きも出来なくなってしまい
満身の力をこめてやっとのおもいで書いたのです
ミンナゲンキカ と、書いたのです。