タイムマシンで未来からやってきたという触れ込みの例のジョン・タイター以来、「未来人が語る近未来の歴史」というジャンルがオカルト業界で確立しつつあるようだ。そういう人間がネットにいろいろ近未来のことを書き記していくというのが典型的パターンで、で、「当たった」だの「外れた」とかいって騒ぐのは、こういうのを全然信じていないオレからしてもなかなか楽しいことである。

とりわけこの手の話でよくできていると思うのは、「エヴェレットの多世界解釈」とか何とかいうよくわからん話を援用して、「多元宇宙は無数にあるので、未来人が行ったり来たりするうちに宇宙は分岐してしまい、結果的に未来人の語った通りの未来が来ないこともある」みたいな言い訳がちゃんとできる仕組みになっているところである。だから、全部当たらなくて当然よ、と開き直れるのである。賢いのである。

閑話休題。これは2011年の段階ですでに日本にも出回ってたらしく「4年遅れかよ!」とツッコミを入れられる方もいるだろうが、最近オレがようやく知ったこの手のストーリーに、2060年から来た軍人だとかと称する人間が、2010年11月から翌年2月にかけて韓国のネットに書き込みを残していった、という話がある。

オリジナルのサイトがどこにあるかも知らんし、仮に分かっても韓国語などわからんから、あくまで日本語のサイト(このNAVERまとめとか)を見るしかなく、もちろんタイムスタンプの捏造などの可能性があったとしてもその辺にツッコミをいれる術もないので、あくまで「お話」として消費する立場から言わせてもらうのだが、これ、けっこう面白かった。


「2013年の時点で北朝鮮の金正日は死亡している」というのはアタリだが、ま、健康悪そうだったのは確かであるし、「2013年に李会昌が韓国の大統領になる」とか「2012年に大恐慌が来る」とかいうのはいきなり外れ。2015年に第3次世界大戦だかが起きて中国でバタバタ人が死んで(しかし中国とどこが戦うのだ?)、そのあおりで北朝鮮が崩壊して2017年に統一韓国ができて朴槿恵が大統領になる、というのは、うーむ、今年はあと10か月しかないので、これはどう考えてもキビシイのではないか。

ところが日本に関しては「2011年頃に大地震で津波が起きて、それに伴って放射能漏れの被害が出る」と書いているらしい。ここで「なるほど、2011年3月以降に捏造されたネタだったのね」と言ってしまうのは冷血極まりない態度なので、しばし信じたフリをしておつきあいすると、一方では「2013年が終わる前、日本の政治体制は既存のシステムから完全に変更」とか言っているらしい。自民党が総選挙で大勝して第2次安倍政権が成立したのが2012年末であるから、その後の安倍の「暴走」ぶりをみれば強引に「当たった」と言い張ることもできないではない。「やるじゃん!」みたいな事を考えてしまったりして、この辺は何か妙なリアリズム(笑)。

何かこういうチグハグな未来予想みたいなものをどういう人間がどういう判断のもとに書いたのか、というのは想像してみると何だか面白い。今回のも、「ニコラ・テスラは実は未来人だった」みたいな小ネタを差し挟んでいていて工夫がしのばれた。というわけで虚構と現実のはざまに遊ぶ未来人文芸というのは、これからもイチオシの注目ジャンルである。