左翼「稲田朋美が防衛相になりましたな。しかし、なんで自民党の女性議員にはこうも右翼が多いのか。稲田のほかにも、高市早苗総務相とか、神武天皇は実在したと信じているらしい<セクシー・ナイト>三原じゅん子なんてのもいる」

老人「いや待て待て、本当に<自民党の女性代議士には右翼が多い>のか? 確かに何となくタカ派、右翼が多いような印象は強いが、単にハト派の女性議員が目立たんだけ、ということもありうる。ちゃんとハト派、タカ派の定義をした上で、どっちが何人いるのか調べてみんと、ハッキリしたことはわからんじゃろう」

左翼「にしても、新内閣に入閣した女性議員3人のうち2人はゴリゴリの右翼だというのは、なんか象徴的ではないですか。あとの一人、丸川珠代に思想なんてものがあるのかどうかは寡聞にして知らんですがネ。思うに、右翼でないと自民党内で女性議員はのし上がっていけないのではないか」

老人「うむ。まあ、安倍首相がああいう国家主義的な思想の持ち主であるから、今の状況では抜擢されるチャンスが増えている、ぐらいのことは言えるかもしれんの」

左翼「自民党というのは、何やかやいって古臭いミソジニーに染まっている連中がまだまだ多い組織ですからな。女性議員はどうしたって<ナメられる>。そこでどうするか。右翼スピリットを身にまとって武闘派路線を打ち出せば、古臭い男たちも一目置かざるを得ないでしょう。ある意味、右翼志向は理にかなっておるわけです」

老人「はて、ワシの目には、彼女たちは心の底から国粋主義に心酔しているようにみえるが?」

左翼「そうであればなお怖い。出世するための手段のはずが、いつの間にか目的になってしまったのではありますまいか。これこそ軒を貸して母屋を取られるというヤツでしょう。国粋主義にまるごと自己同一化してしまえば、出世目当てで右翼に走った自己欺瞞も意識しないで済む。万々歳だ」

老人「その手の俗流フロイト主義みたいな考え方は如何なものか。<アンタは意識していないが、実のところは深層心理のプロセスに操られているに過ぎない、愚ナリ欺瞞ナリ>と断罪する手法は確かにひところ流行ったけれども、しょせんは批判のための批判。本家本元のフロイトが、いまでは疑似科学扱いされておるのだし」

左翼「いちいち小うるさいことですな。まあ良い、彼女たちの<正体>を的確にとらえることは、この国の将来のためにどうしても必要だ。油断しておると、われわれはとんでもないところに連れていかれますぞ」

老人(この男、右翼や国粋主義は男の専売特許だとでも思っておるのか。古い、古すぎる。こんなことだから日本の左翼はどんどん縮んでいくのだ…)  ――終わり――