塚田穂高著『宗教と政治の転轍点  保守合同と政教一致の宗教社会学』(花伝社)を読んだ。

今とても売れている菅野完『日本会議の研究』で、一部宗教団体のサポートを受けて日本の保守政治家に影響を与えているとされる「日本会議」への注目が高まっている折も折、そのあたりも含めてリアルな政治に戦後日本の宗教教団がどう関わってきたのかを気鋭の宗教社会学者が網羅的に描き出した研究書だというので、先日「東京ブックフェア」で二割引きで売っていたこともあってついつい買ってしまい、遅まきながら手に取ったという次第である(高かったけどw)。

オレ流に乱暴にまとめてしまうと、天皇制に親和性をもつ、つまり伝統的な保守・右翼イデオロギーに近いナショナリズムや世界観を有する教団であれば別に自前の政党を立ち上げるまでもなく自民党の右派政治家などと連携する「政治関与」を試みることが多いのだが、それとは異なる独自の教義・世界観を有する教団であれば政治団体を作って独自に「政治進出」を図ろうとする傾向がある。本書は、おおむねそのようなパターンが戦後日本の宗教―政治関係に見てとれることを論証しているのだった。

当然、話題の「日本会議」を下支えしてきた諸教団は「政治関与」系になるわけで、そういう文脈で「解脱会」や手かざしで知られる「真光」系教団などの取り組みが論じられている。

一方の「政治進出」系としては言うまでもなく「創価学会」が取り上げられているワケだが、そのほか「オウム真理教」「幸福の科学」はもちろん、「浄霊医術普及会=世界浄霊会」「アイスター=和豊帯の会=女性党」などというマイナーな組織も登場してくる。著者も本書のいろんな箇所で自慢(笑)しておるが、こういう大きな見取り図みたいなものを作った学術的な仕事というのはなかったようで、たいへんためになった。

以下はどうでもいいけれど読書中に感じたもろもろ(と若干の注文)。

一、書名にも入っている「保守合同」という言葉であるが、コレってふつうは1955年の自由党と日本民主党の合同のことを言う。その辺にポイントがあるのかなと思って読んでおったのだが、ところがいつまでたっても1955年の「保守合同」の話が出てこない。「なんで?」と首を捻っていたのだが、つまり著者は最終的に「日本会議」に結集する伝統・保守系宗教勢力の合従連衡のことを「保守合同」と言ってるみたいなのだった。これはワーディング的にちょっとどうかという気がしました(笑)

一、「オウム真理教」や「幸福の科学」はともかく、「浄霊医術普及会=世界浄霊会」「アイスター=和豊帯の会=女性党」などというのはその存在すら全く認識していなかったのでとても勉強になった(アイスターという会社が売っている「アイレディース化粧品」というのは聞いたことがあったし、何か看板なんかもそこいらじゅうで見た記憶があるが、ここが半分宗教絡みだというのは全然知らなんだ)。ホントのことをいえば、宗教―政治にかかわる戦後日本の状況には全く影響力を及ぼすこともなく散っていったこうした団体の話はあんまり一般化しても仕方ねーんじゃないかという気もしないことはないンだが、虚心坦懐に「泡沫政治団体盛衰記」として読むとスゲー面白い

一、さらにいえば、供託金なんかゼッタイ返ってこないのにあえて選挙に出る泡沫のヒトビトというのは、別に宗教団体じゃなくても常人に理解不能な信念に殉ずるという意味で或る意味の宗教性に富んでいるともいえるので(笑)もうこうなったら宗教とは関係ないところから出てきた有象無象の泡沫候補・団体をガッチリ調べてその「宗教性」を総まとめするような仕事も面白いんではないかと無茶振りしたい気分である

一、著者も書いているけれども、最初は日蓮思想を掲げて「国立戒壇建てるぞ-」などと言っていた、つまりは一般人にはやや敷居の高い特殊な政治的主張を説いていた創価学会も今じゃそんな言い分は引っ込め、公明党自体が政権与党の「現実主義」にドップリ、である。むろん、先の安保法制とかに対してはかつての反体制時代よろしく「お先棒かつぐな!」と声を上げた創価学会員も一部にいたようであるが、とにかく創価学会=公明党は「変質」してしまったようだ。「昔の価値観・世界観はどこいっちまったの?」「どこでどう変わったの?」という大いなる疑問は、今後著者に是非解明していただきたいものである

一、あと、そもそもそういう「特殊な主張」に基づいて「政治進出」を試みた他の教団が揃って死屍累々という中でなぜ唯一創価学会のみが「成功」したのか。オレなんかであれば「ま、それが戦後復興期という時代だったんだよ。時代さ、時代!」的な床屋談議で納得してもいいんだが、研究者としてはそうもいくまいから、ここいらも何か説明をしてもらえればと思う

一、「日本会議」に関係している大和教団の保積秀胤教主が2014年に新日本宗教団体連合会(新宗連)の理事長になったという話が出てくる(79p)。あれっと思ったンだが、立正佼成会を中心とした所謂「新宗教」の諸教団が作るこの新宗連というのは平和運動なんかにも取り組んでいるし、おおむねウルトラ国家主義みたいなものには反対している穏健な団体であるという印象があった。そこで若干ググってみたところ、確かに新宗連は今年8月8日付けで「靖国神社公式参拝」に反対する意見書を出したりもしている。何で「日本会議」の人がそういう団体の親玉に収まってるのか? ここは小生も勉強不足でよくわかんなかった。どういうことなのか、ヒマがあったらおいおい調べてみたいものだ(おわり)