きのうユング『空飛ぶ円盤』についてちょっと触れたところであるが、改めてパラパラめくってみるとなかなか面白い。

むろん、ご承知のようにユングというのは曼荼羅がどうだ錬金術がどうだというペダンティックな話が次々に出てくるので、そのへんは適当に読み飛ばしながら、ということになってしまうけれど。

ちなみに前回チラッと触れた「空飛ぶ円盤というものは物理現象と心的現象のはざまにある<共時的現象=シンクロニシティ>ではないのか」という主張であるが、実際にはこんな風に書いてある(松代洋一訳)。


UFOは実際に物質的な現象であり、未知の性状をもった存在なのである。おそらく宇宙からやってきて、かなり以前から人類に姿をさらしながら、それ以上これといった関係を地球や人類とはもっていない。しかし、最近に至って、人間が空を見上げるようなとき、一方では宇宙旅行の空想から、他方では、いわば、いたく脅かされている地上の生活のために、無意識内容がこの不可解な空中の現象に投影され、当の現象の一向にあずかり知らないような意味を帯びることになった。第二次世界大戦以後、とくに頻繁に現れているようだが、それは共時的現象、つまり、意味上の一致であると考えられる。


うーん、いいですねー。

あと、この本のなかでは「絵画におけるUFO」という章があって、画家のイマジネーションの中にもUFO的なものは忍び込んでいるのだ的なことが書いてある。これはこれでまたワケのわからん話がいろいろ出てくるのだが、それはともかく、ここではそんな作品の一つとして、E・ヤコビー「火の種播き」という作品に分析が加えられておる。これが何故かとても印象に残る作品なのである。

ちなみに『空飛ぶ円盤』にはモノクロ写真しか載っていないのであるが、検索をかけたところカラー・バージョンの画像を発見したので、ここではそれを貼っておく。カラーでみると、なおインパクトがあるなあ。

El sembrador de fuego
 THE FIRE SEEDER, ERHARD JACOBY, 1954


【注】ちなみに画像の載っていたサイトというのはスペイン語だったので例によってグーグル翻訳のお世話になったら、何だか人権団体の主張みたいなことが書いてあった。この絵は単なるカットとして使われただけのようであった