在野の奇譚収集家がコツコツと集めた怪奇現象の「おはなし」を事典形式の本にした『日本現代怪異事典』をようやく読み終えた。


もともとコミケか何かに出して評判になり、それがきっかけで刊行された本らしいが、500ページもあって読み応え十分。というか、もう年も取って記憶力が減衰しているので、読んでるうちに最初の方の話を忘れていってしまうという体たらくである。

まあそれはそれとして、大変な労作であり、著者の健闘をたたえたい。

以下は読んでいて思ったことのメモ。

■校閲の甘さが惜しまれる
 これはツイッターのほうにも書いたが、校閲の確かさは事典の生命線である。かなりのミスが散見されたのは惜しまれる。

■松谷みよ子は偉い
 こういう本なので、先人の業績からの引用がキモになる。そういう目で見ると松谷みよ子の『現代民話考』が再三引用されており、長年こういう奇譚を集めてきた松谷さん偉かったなあと改めて思う。あと、渡辺節子/岩倉千春『夢で田中にふりむくな―ひとりでは読めない怖い話』という本もたびたび文中に出てきて、何だか非常に面白そうなのだが、こちらは絶版で入手困難であるようだ。残念である。

■「怪異」ということば
 これまたツイッターで書いた話であるけれども、タイトルにもなっている「怪異」というのは、フツー「奇怪な現象」ぐらいの意味で使われると思うのだが、この本の中では幽霊狐狸妖怪のたぐい、つまり何らかの人格的な存在をもあわせたあれやこれやをも総称して「怪異」と言っている。
 日本語としては、やっぱ何か奇異な感じがする。じゃあ、それにかわるワーディングがありうるかというとなかなか難しいのではあるが。

■地元の怪異
 オレはいま東京の郊外に住んでいるのだが、通勤に利用している某東京メトロの路線にかかわる「怪異」が一つ紹介されていた。いわゆる「異界駅」の話である。まったく歴史的な陰影のないところを突っ切って走る鉄道でもあり、この手の奇怪な話にはまったくそぐわない土地柄なのだが、人間の想像力というのはそういう空虚な土地にも何かを読み込むことができるだとすれば、それはそれで大したものじゃないか、と思ったりした。

IMG_3458