平昌パラリンピックで成田緑夢が金メダルを取ったそうだ。たいへん結構なことであるが、今回はそのことではなく、彼の名前、つまり「緑夢と書いてグリムと呼ばせる」問題についてひと言いっておきたい。

言うまでもなく、「緑→英訳してグリーン→ちょっと端折ってグリ

そういう思考経路をたどって、こういう名前になったのだろう。キラキラネームに典型的なパターンである。

で、これはよく知られていることだが、戸籍法では名前に使える文字については規制をしているけれども、「読み方」については何の規定もない。当然、戸籍には「よみがな」が記載されない。つまり「これはこう読みます」と当人が強硬に主張すれば何人も否定できないのである。

ちなみにパスポートだと名前をローマ字書きする欄があるので、強引につけたよみがなを「Gurimu」とかいって書き込んじまえば、「これでお上もこの読み方を公認してくれたゼ!」と豪語することが可能である。

(あ、ここまで書いてきて恐ろしいことに気付いたが、ひょっとしたらパスポート申請の時にアルファベット表記「Grimm」として出したら、そのまま通ったりするのか? となると、たとえば「一石」みたいな名前つけて「私は Einstein です」なんてのもアリか?)

閑話休題。つまり原理的には、辞書とかでまったくオーソライズされない「オレ流の読み方」を勝手に作り出して、それで押し通すことが可能である。つまり、いわゆる「キラキラネーム」は法的には何の問題もなく、どんどんやっていいのである。「ちゃんと読んでもらえない」とか「ヤンキーの子供だと思われる」といったあたりが気にさえならなければ。

まあしかし、これはよく考えるとアナーキーな事態である。

「古き良き日本を守れ」などといっている右翼の皆さんは、こういうのをなんとかしようとは思わないのか。「他の誰も読めない名前をつける」とゆーのは、つまり周りの人々とのコミュニケーションをあらかじめ拒絶してかかる行為といえなくもない。右翼の皆さんのお好きな「日本国民の紐帯」「共同体のつながり」といった視点からすると、非国民の極みではないのか。戸籍法を改正して「読み方」を届けさせ、あんまりヘンなものは受け付けないとか何とかすればいいのではないか。

いやもちろん、名字については「小鳥遊」(たかなし)というキラキラ類似事例があったりする(小鳥が遊ぶ→天敵がいない→鷹がいない→たかなしパターン)。なので、「名前だってキラキラでいいじゃねーか」という有力な反論もあるとは思うけれども、まぁそこは「もう既得権益になっちまった部分はスルー。ただし今後はダメ」ということでどうでしょう。

もっとも、オレももともとアナーキーなものは嫌いじゃないので、いっそのこと、キラキラ方面を加速させ、「知らない同士で初めて会ったら名前の読み方を当てっこする風習」でも広めたら面白いかもしれない。いわば国民総大喜利状態。ずいぶんこの国も楽しくなるのではないか。

仮に「緑夢」だったら
「あ、わかった。グリムでしょ?」
「残念!緑はドイツ語読みでいきます。だからグリュムです」とか。
いや、それじゃ全然落ちてねえだろ、という(笑)