「奇妙な論理」「奇妙な論理 Ⅱ」というのは、いずれもオカルトに興味をもつ人の間ではよく知られている本だ。

アメリカの科学ライター、マーチン・ガードナーが1952年に出した「In The Name of Science」(のちに「Fads and Fallacies in the Name of Science」と改題されたようだが)の翻訳本で、市場泰男の訳で現代教養文庫から出ていた。ひと言でいってしまうと、自然科学サイドからするオカルト・デバンキング本である。



*と、ここまで書いたところで検索してみたら、現代教養文庫の社会思想社が潰れたせいか、そのごハヤカワ文庫のほうからも出版されていたようである。早川版も絶版ないしは品切れのようであるが、まあ古本で容易に買える。




ま、この方面では古典的な著作であるし、とても面白いから未読の方は読んでおかれるとよろしかろう。

閑話休題。

この邦訳版の2冊の本は、実は最初に「日本の読者もきっと興味があるだろうな」という章だけをセレクトして出版し、その後、「いやいやよく考えると他の章も面白いんじゃねーか」ということで続編が出たという経過をたどったようである。これでオリジナル本の25章のうち、22章まではカバーできた。だが、最近、この「奇妙な論理 Ⅱ」を再読していて気づいたのであるが、最終的に割愛された3章のひとつは、いまだ邦訳こそ出ていないものの奇現象研究家として世界的にその名も高い、あの幻の著述家、チャールズ・フォートを取り上げたものであるらしい。

訳者の市場氏は、このほか同様に記述を割愛したアルフレッド・ウィリアム・ローソン、ロジャー・バブソン(ちなみにこの二人が何者であるかはとんと知らぬ)とともにフォートの名を挙げ、「特異な奇人科学者個人を扱ったもので、内容が普遍性に欠け、教えられるところも少ないと感じたものですから、紙数が限られていることも考えて省略した次第です」と書いている。

ううむ、まぁ科学畑の人からすりゃあ、「フォート? なんだそんなヤツ、単なる変人だろが」と一蹴したくなるのはわかるが、この「奇妙な論理 Ⅱ」は1992年に出ているから、その時点でチャールズ・フォートについて(否定的ではあっても)それなりの紹介が日本語でなされていたら、彼への注目度はだいぶん違っていたのではないか、そして、近くようやく日の目を見るのではないかとウワサされているフォートの主著「呪われしものの書」の翻訳出版ももっと早く実現することになったのではないか、などと死んだ子の年を数えるようなこともしたくなってくる。

「市場さんちょっとそれはまずいッスよ、ローソンだバブソンだなんて連中は省いて結構ですが、やはりフォートは入れないと」と四半世紀前に戻って忠告してあげたいところだが、ただまぁ上に書いたように「呪われしものの書」がいよいよ刊行されるのであれば、結果オーライで良しとするか。

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Charles Hoy Fort(1874 - 1932)


【追記】
ネットを徘徊していたら原著「Fads and Fallacies in the Name of Science」のテキストを発見した。そのうちフォートを取り上げた章を読んでおこうと思う。余裕があれば、概略を当ブログで紹介してみたいし。