UFO関係の書籍で『宇宙人大図鑑』(グリーンアロー出版社、1997年)というのがある。著者は中村省三という人で、オレの知る限りではむかし「UFOと宇宙」という雑誌の編集とかをやってた人で、つまりこの世界ではけっこうな顔役の一人である。

で、この人の『宇宙人大図鑑』というのは、UFOの乗員と思われるエイリアンの出現事例を世界各地から集め、それぞれについてエイリアンのイラスト付きでその概要を紹介するという、なかなかユニークな体裁の本である。もちろんそういう本があることは知っていたが、ま、オレもそれほど熱心なUFOマニアでもないので(笑)これまで何となく買わずにきたのだった。

宇宙人大図鑑 (グリーンアロー・グラフィティ)
中村 省三
グリーンアロー出版社
1997-02



ところが、こないだAmazonでたまたまこの本のレビューを読んでたら、この本は英語の『The Field Guide to Extraterrestrials』という本をパクったものだと書いてある! 調べたら刊行年は『宇宙人大図鑑』より1年はやい1996年。著者はPatrick Huyghe。イラストはHarry Trumbore。

もちろん『宇宙人大図鑑』の最後のところにも参考文献としてこの本の名前は書いてあるんだが、自称「UFO問題評論家」(笑)としては、この手の「ネタの無批判的移入」という問題は「日本のUFO研究とポスト・コロニアリズム」というオレの年来のテーマにもつながってくる重要なポイントである(なのかYO?)。

これはちゃんと確認せねばならんと思って、Abebooksで英国版の『The Field Guide to Extraterrestrials』(New English Library)を買ってみた。以下、この「パクリ疑惑」についてリポートしてみたい。

さて、とりあえず両者を比較してみよう。

読者の参考のため、ここでは同じ事件を取り上げている両者のページを並べてみる。
(フラットベッドスキャナーで無理やり撮ったので見苦しいがそこは我慢せられよ)

p1

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ザッとみると、両者の構成はとてもよく似ていることがわかる。基本的に見開きの左ページに事件の概略、右ページにイラストが入る。

で、読者諸兄もすぐお感じになったと思うのだが、このイラスト、実に瓜二つである。『大図鑑』のイラストを描いたのは長谷川元太郎という、そこそこ名のある人だったらしく「それにしてはこの本のイラストは下手すぎ」などと言われてきたのだが、これはつまり「オリジナルのイラストを引き写して描いてください」みたいな注文を受けてしまったがゆえの悲劇だったのではないか。

ちなみに、いちいちお見せできないけれども両者で同じ事件を取り上げているバアイ、そのイラストはほとんど全部がソックリである。少なくともイラストについていえば『大図鑑』は『Guide』を完全にパクっている。

では文章はどうか、ということになるわけだが、例えばここに挙げた「ラーンゲナルゲン事件」では、内容はほとんどダブっている。必ずしも直訳しているわけではなく、構成し直しているあたりはそれなりの工夫もあるとは言える。控えめな言い方をすれば「全面的に依拠」って感じかナ。ちなみに両者でかぶった事例をザッと照らし合わせてみると、書いてある内容は相当に似ている(同じ事件だから似るだろうよ、という主張には一理あるにしても)。

そうそう、それからもう一つ、どっちの本もエイリアンの姿かたちを「ヒューマノイド」「アニマリアン(動物型)」「ロボット」「エキゾティック(異形型)」「アパレショナル(幽霊型)」などと分類しているのだが、こういう特殊な用語をなぜか両方とも採用している。オリジナルのアイデアだったら、少しはズレてくるんじゃねーかと思うんで、少なくともこの分類の枠組み自体は後発の『大図鑑』が丸パクリしているのだろう。

ちなみに、両者で取り上げている事件はどれだけダブっているのかを数字的に確かめてみると、以下のようになる。

『大図鑑』で扱ってる事件は68件。『Guide』は49件。
両方に載ってるのは37件で、『大図鑑』のみの事例が31件、『Guide』のみの事例は12件。


WS000319


これだけみると、「パクったにしても全体の半分ぐらいじゃん。ま、そんなに責めることもないんじゃネ?」的な言い方も不可能ではない。ただイラストについては全面依拠に近いワケだし、なかなか、それはどうなんだろうね。

もちろん、本の中では明記してなくても、この本の出版にあたっては『Guide』の著作権者に「かなりネタを使わせてもらいましたんでおカネのほうは支払わせてもらいますゼ」とかいってウラで話をつけた可能性もある。それだったら、外野でいろいろ言うのは野暮ということになるのかもしらんが、いやだがしかし、日本の読者の中には「おお、日本の研究者もなかなかイイ仕事してんじゃん!」とかいって喜んでた人もいたんではないか。としたら、ハッキリことわりもせずにかなりの程度パクってこういう本を作るのは読者への裏切りじゃねーか、という気もする。


もちろん昔は著作権という概念もハッキリ認知されてなかったろうから、テキトーに外国の本をパクってきたりしてたとしてもあんまり責めるベキではないのかもしれんが、ただオレがいつも言ってるように「横のモノを縦に直す」ばっかりでは進歩というものはなく、日本のユーフォロジーが「泣く」というものである。著名な研究家の方だろうが何だろうが、こっそりこういう仕事をするのは止めていただいて、今後は「出典」等をハッキリさせた仕事を心がけていただきたいものである。

なお、最後に『大図鑑』に掲載された事例の一覧表をつけておこう。

表中の「Guide頁」というのは、これに対応する記述がオレの持ってるNew English Library版『The Feild Guide to Extraterrestrials』だと何ページに載ってるかを示したものである。ちなみに『大図鑑』のほうは、原著には出てこないけれども有名な「アダムスキー」事案だとか「パプアニューギニア事件」「ソッコロ事件」とか、あるいはオレの好きな「イーグルリバー事件」とかを独自に採り入れてたりするし、そういう啓蒙的な姿勢は良かったんだけどね、と評価してあげたい気がないでもない。

あと、念の為いっとくと、原著はエイリアンの形態分類別に編集してるが、『大図鑑』のほうが時代順に事例を並べてるところは違います。




  日時 場所 事件名 形態 Guide頁
1 1947/7/4 米・ニューメキシコ州ロズウェル ロズウェル事件 ヒューマノイド小人型 22
2 1947/7/23 ブラジル・パラナ州ゴイオ・バング ヒギンズ事件 ヒューマノイド巨人型  
3 1947/8/14 イタリア・フリウリ県カルニ ヨハニス事件 ヒューマノイド小人型 38
4 1951/9/24 米・イリノイ州オーランド・パーク オーランド・パーク事件 アニマリアン両生類型 86
5 1952/9/12 米・ウェストバージニア州 フラットウッズ事件 エキゾティック モンスター 56
6 1952/11/20 米・カリフォルニア アダムスキー事件 ヒューマノイド人間型  
7 1954/9/10 仏・カルーブル デワイルド事件 タイプ3 ロボット 104
8 1954/11/1 伊・チェンニーナ チェンニーナ事件 ヒューマノイド小人型 24
9 1954/11/28 ベネズエラ・ペタレ ペタレ事件 アニマリアン 多毛哺乳類型 74
10 1955/5/25 米・オハイオ州ブランチヒル ブランチヒル事件 エキゾティック 異形型  
11 1955/8/21 米・ケンタッキー州ホプキンスビル ホプキンスビル事件 エキゾティック 84
12 1955/8/22 米・カリフォルニア州リバーサイド リバーサイド事件 アパリショナル 幽霊型 120
13 1957/11/6 米・ニュージャージー州エベリッツタウン エベリッツタウン事件 ヒューマノイド小人型  
14 1957/12/15  *注 ブラジル・ミナスジェライス州サンフランシスコ・デ・サレス ビリャス=ボアス事件 ヒューマノイド人間型 28
15 1957/12/16 米・コネチカット州オールド・セイブルック オールド・セイブルック事件 エキゾティック 106
16 1956/1 米・ニューヨーク州ナイアガラ・フォールズ ナイアガラ・フォールズ事件 アニマリアン 哺乳類型 76
17 1958/12/20 スウェーデン・クリスチャンスタッド ドメステン ドメステン事件 エキゾティック ゼリー状生物 116
18 1959/6/26-27 パプアニューギニア・ボイアナイ パプアニューギニア事件 ヒューマノイド人間型  
19 1961/4/18 米・ウィスコンシン州イーグル・リバー イーグル・リバー事件 ヒューマノイド人間型  
20 1961/9/19 米・ニューハンプシャー州ポーツマス ヒル夫妻事件 ヒューマノイド人間型 30
21 1963/8/28 ブラジル・ミナスジェライス州ベロ・オリゾンテ ベロ・オリゾンテ事件 ヒューマノイド巨人型 54
22 1963/11/16 イングランド・ケント州サンドリング・パーク サンドリング・パーク事件 アニマリアン 鳥類型 94
23 1964/4/24 米・ニューメキシコ州ソッコロ ソッコロ事件 ヒューマノイド人間型  
24 1964/9/4-5 米・カリフォルニア州シスコ・グローブ シスコ・グローブ事件 ヒューマノイド人間型&タイプ3 ロボット  
25 1965/3/3 米・フロリダ州ブルックスビル リーブズ事件 ヒューマノイド人間型  
26 1965/7/1 フランス・バレンソール バレンソール事件 ヒューマノイド小人型  
27 1965/10/23 米・ミネソタ州ロング・プレイリー ロング・プレイリー事件 タイプ3 ロボット 100
28 1966-67 米・ウェストバージニア州ポイントプレザント ポイント・プレザント事件 アニマリアン 鳥類型  
29 1967/1/25 米・マサチューセッツ州サウス・アシュバーンハム アンドレアソン事件 ヒューマノイド小人型 88
30 1967/2/14 米・ミズーリ州ミラー郡 ミラー郡事件 タイプ3 ロボット  
31 1967/12/3 米・ネブラスカ州アシュランド シャーマー事件 ヒューマノイド人間型 20
32 1968/7/31 レユニオン島カフレ平原 レユニオン島事件 ヒューマノイド小人型 40
33 1969/5/4 ブラジル・ミナスジェライス州ベベドゥロ ベベドゥロ事件 ヒューマノイド 小人型と人間型 44
34 1970/1/7 フィンランド・イムヤルビ イムヤルビ事件 ヒューマノイド小人型 48
35 1970/8/19 マレーシア・ペナン島ブキット・ムルタヤム地区 ブキット事件 ヒューマノイド小人型 50
36 1971/8/17 米・カリフォルニア州パロスベルデス・エステーツ ダップル・グレイ・レーン事件 エキゾティック 114
37 1972/11/26 米・カリフォルニア州カッチェ・クリーク ケンドール事件 エキゾティック&ヒューマノイド人間型  
38 1972/10/11 米・パスカグーラ事件 パスカグーラ事件 タイプ3 ロボット 60
39 1973/10/25 米・ペンシルバニア州グリーンズバーグ グリーンズバーグ事件 アニマリアン 多毛哺乳類型 70
40 1973/11/10 オランダ・ユードン ユードン事件 ヒューマノイド小人型  
41 1973/12 ベルギー・ビルボルド ビルボルド事件 ヒューマノイド小人型  
42 1974/1/7 ベルギー・ワルヌトン ワルヌトン事件 タイプ3 ロボット  
43 1974/10/25 米・ワイオミング州ローリンズ ヒグドン事件 エキゾティック&ヒューマノイド人間型 64
44 1974/12/2 米・ウィスコンシン州フレドリック フレドリック事件 アニマリアン 多毛哺乳類型 78
45 1975/1/4 アルゼンチン・バイアブランカ バイアブランカ事件 エキゾティック  
46 1975/10/27 米・メーン州オックスフォード オックスフォード事件 ヒューマノイド小人型  
47 1975/11/5 米・アリゾナ州アパッチ・シトグリーブス ウォルトン事件 ヒューマノイド人間型  
48 1976/11/12 スペイン・タラベラ・ラ・レアル タラベラ事件 アパリショナル 幽霊型 118
49 1977/2/24 ドイツ・バーゲン・ビュルテンベルグ州ラーンゲナルゲン ラーンゲナルゲン事件 ヒューマノイド小人型 42
50 1977/9/15 ブラジル・リオデジャネイロ・パシエンシア パシエンシア事件 タイプ3 ロボット 108
51 1977/7/12 プエルトリコ・ケブラディラス ケブラディラス事件 アニマリアン 哺乳類型  
52 1978/5/10 ポーランド・エミルシン エミルシン事件 ヒューマノイド人間型  
53 1978/12/6 伊・トッリーリャ トッリーリャ事件 エキゾティック 80
54 1979/1/4 イギリス・ブルーストンウォーク ブルーストーンウォーク事件 アパリショナル 妖精型 92
55 1979/7/25 スペイン・ツリス ツリス事件 ヒューマノイド小人型 46
56 1979/9/25 米・アリゾナ州マラナ チャーコン事件 アパリショナル  
57 1980/11/13 イギリス・バーンサイド バーンサイド事件 ヒューマノイド人間型  
58 1982/3/22 米・バージニア州オーガスタ オーガスタ事件 ヒューマノイド人間型  
59 1983/4/30 フランス・ソスペル ソスペル事件 ヒューマノイド人間型  
60 1983/7 米・ミズーリ州マウント・バーノン マウント・バーノン事件 アニマリアン爬虫類型 82
61 1987/12/12 フランス・マルベシ マルベシ事件 ヒューマノイド小人型&人間型  
62 1988/5/13 プエルトリコ・オルミゲロス オルミゲロス事件 ヒューマノイド小人型&人間型  
63 1989/9/27 ロシア・ボロネジ ボロネジ事件 ヒューマノイド巨人型&タイプ3 ロボット 52
64 1990/8/31 プエルトリコ・ラグーナ・カルタヘナ ラグーナ・カルタヘナ事件 ヒューマノイド小人型  
65 1991/8 プエルトリコ・マグアヨ マグアヨ事件 ヒューマノイド小人型  
66 1993/6 イスラエル・カディマ カディマ事件 ヒューマノイド巨人型  
67 1993/8/8 オーストラリア・ビクトリア州ベルグラープ ベルグラーブ事件 アパリショナル 62
68 1996/1/20 ブラジル・ミナス・ジェライス州バルジーニャ バルジーニャ事件 ヒューマノイド小人型  

*注:『大図鑑』ではビリャス=ボアス事件は12月に起こったことになってるが、これは10月のハズである。『Guide』のほうもそうなっている。

そうそう、『The Feild Guide to Extraterrestrials』だけ取り上げてた12件ってナニよ?という疑問もあるかと思い、そちらも一覧表にしてみました。以下を参照されたし。


【参考】「Guide」のみ掲載の事例(洋数字は掲載頁)
1896/11/25 米・カリフォルニア州ロディ  66 ヒューマノイド
1951/5/15 オーストリア・ザルツブルグ  34 ヒューマノイド 小人型
1951/7   110 ロボット
1967/11/2 米・アイダホ州リリー 36 ヒューマノイド 小人型
1972/8/26 米・メイン州アラガシュ・ウォーターウェイ 32 ヒューマノイド 小人型
1972/8/28 アルゼンチン・ブエノスアイレス 26 ヒューマノイド人間型
1973or74 米・メリーランド州クックスビル 90 アニマリアン 昆虫型
1974/10/27 イングランド・エセックス州アヴェリー 72 アニマリアン 多毛哺乳類型
1975夏 米・コロラド州ラ・フンタ 18 ヒューマノイド人間型
1977/1/27 米・ケンタッキー州プロスペクト 102 ロボット
1979/11/9 スコットランド・ロージアン・リビングストン 98 ロボット
1986/5/29 アルゼンチン・ラパンパ・サンタローザ 58 ヒューマノイド巨人型