オレが定期的に巡回している「UFO研究家」のブログがある。

何故というにこのブログ、実にオモシロイからである。ブログをみると、彼は某著名UFO研究団体の幹部らしく、かつ相当なUFO関連の資料コレクターである。で、ブログにその資料の写真を――たとえば人によっては垂涎のレアものであるCBAなどという昔の日本のUFO団体の資料などを載せては「どうだオレはこういうの持ってるンだぞー」といって威張っているのである。

いや、実際に相当なレアものを持っているのは確かで、そのブログには外国の高名なUFO研究家のサイン本だとか書簡とかもなどもしばしば出てくる。だがもちろんそれは、この研究家が自分で受け取った手紙ではなく、ほかの誰かさん宛の手紙だったりするので、いささかゲスな勘ぐりで申し訳ないのだが、おそらくはおカネをつんでどっかから買いとってこられたのではないだろうか? まぁ初手から「何なんだろうネこの方は」という感じはある。その自己顕示欲たっぷりの「ふんぞりかえりっぷり」が、何というか、或る意味「読ませる」。

これは余談であるが、このおじさんのブログには高級そうな料理屋に行って「アレ食ったコレ食った」的なエントリーもたびたび登場し、そんな店に行ったこともないオレからすると「先祖伝来の田んぼでも売ったンか知らんが金持ちはえーなー」という羨望の念が浮かんだりするのであったが、絵に描いたような俗物というのはかえって清々しいのだった(笑)。

いや、そのオモシロさというのはそういう奇特な人物の面白さにとどまらないのである。

このおじさんが自慢げにブログで紹介している資料には当然英文のものが多くある。なので、そこには抄訳的に日本語訳が載っていたりするのだが、その翻訳なるものが実に危なっかしい。というか、よくわからない。

失礼ながらハッキリ言わせていただくと、この方は英語がちゃんと読めないのではないかと思われる。でも資料だけはたんと集めて、その上で「紙ベースの資料じゃなきゃダメだ、ネットでの情報収集など邪道ナリ!」とかいっていつもブログで咆吼されておられるw。つまりオレサマこそがエライのだと言いたいらしい。

なんだかそういう古株の人がエバっている。それがオモシロイ。オモシロくってやがて哀しい。これが日本のユーフォロジーの実態なのだろうなぁと思う。

などということをずっと考えていて、Twitterにチラチラそのあたりのコトを書いたこともあったのだが、その辺の妙味を味わっていただきたく、今回、この方のブログに載っていた「英文和訳」を添削してさしあげることにした。以下、「原文」「おじさんの訳」「拙訳」を順に示す。オレは別に英語は堪能ではないが、かなりマシだとは思うので。たぶん。




(原文その1)The flight proceded without incident until over the Dale Holow Reservoir at which point Capt. Mantell signaled for intrail formation and proceded to drop down and make two 360° orbits over the reservoir (以下略)


(おじさん訳)飛行は、その時点でDale Hollow貯水池の上まで問題なく進行した。マンテル大尉は、内陸部の形成について合図し、そして降下して貯水池を越え2つの360°軌道を作ることを始めた。
  • 「内陸部の形成について合図する」というのは何なんでしょうネ。マンテルは造物主気取りで天地創造でもしていたのでせうかw

(拙訳)そのフライトは、デール・ホロウ湖の上空に至るまで何事もなく進んでいったのだが、そこでマンテル大尉は一列縦隊の態勢をとるよう合図してから降下を始め、湖上で360度のターンを二度繰り返した。




(原文その2)Since the Air Force is responsible for control of the air in the defense of the U.S., it is imperative that all other agencies cooporate in confirming or denying the possibility that these objects have a domestic origin.


(おじさん訳)空軍が米国の防衛における航空管制に責任を負うのであれば、他のすべての機関がこれらの物が国内起源である可能性を確認または否定するために協力することが不可欠である。
  • うーん、UFOは「宇宙から来てる」と言えばいいのか「国内から発進してマス」といえばいいのか。どっち方向に「忖度」すればいいのかこれではよくわからないので困りますネ

(拙訳)空軍が合衆国の防空に責任を負っている以上、こうした物体が国内に起源をもっている可能性があるのか・無いのかを明らかにするよう、他のあらゆる機関と協力態勢を取らねばならない。



【追記】

ちなみに、それではこの方はご自慢の豊富なコレクション(笑)を活用してUFO本の一冊も書いているのかと思って検索してみたことがあるのだが、どうもそういう実績は皆無らしい。唯一、日本屈指のUFO事件として知られる介良事件にかんして「アレはエイリアンが地球製灰皿を改造して飛ばしたものである」などとすこぶるユニークな珍説を唱えているとの由。

日本のUFO研究家はしばしば世間サマから「頭のネジが一本抜けたヒト」扱いされてしまうのだが、残念ながらそれにはそれ相応の理由があるのではないか。



【追記2】

そうだ、もうひとつ書いておきたいことがあった。

この方のブログには「宇宙人にジョグに入れた水を渡したら、そのあとお返しみたいにして連中からパンケーキをもらったおじさん」の話、いわゆる「イーグル・リバー事件」のことも書いてある。で、そのページをみると確かにいろいろな関連資料を集めていらっしゃることはわかる。が、残念、書いていることがまったく薄っぺらい。

そもそもなぜこの事件が世界のUFOシーンで注目されたのかというと、やはりそこではジャック・ヴァレの仕事に触れざるを得ない。

この事件、こういう荒唐無稽な話だっただけに、当初は目撃者のサイモントン(シモントンとする邦文資料もあるが、ここは彼の表記に従う)という田舎のオッサンの妄想だろうという扱いを受けていた。が、そこでヴァレが「ん? そういやぁアイルランドの妖精譚とかだと妖精はキレイな水を欲しがるっていうのは定番だよなー。で、連中の食い物には塩が入っていないという話もあるぜ」みたいなことを考えた。

実際、成分分析にかけた「パンケーキ」からは塩=塩化ナトリウムが検出されなかったみたいに見える資料もあったことから、ヴァレは「なるほどUFO事件っていうのは妖精の出現とほとんど同一と考えていいんじゃねーか」ということを言いだし、名著『マゴニアへのパスポート』を著した(その含意は「UFO現象というのは別に宇宙人なんかとは関係ねえだろう」というものである)。

実のところ、「パンケーキ」からは塩が検出されたというデータもある。なので、そこに限っては妖精譚との類似というのは認められず、そこはヴァレの勇み足だったようなのであるが、ともあれそういう文脈の中でイーグル・リバー事件は「よみがえった」。

いささか長い前振りになってしまったが、ともあれそういう前提の上でこの自称研究家のブログを読んでみると、こういうヴァレの議論がまったくスルーされていることに気づく。一カ所、ヴァレとアレン・ハイネックの共著『The Edge of Reality』がこの事件に触れているという記述はあるが、それっきりである。

一方、一連のブログでこのおじさんが力を込めて強調しているのは

■宇宙人のズボンの横には赤いラインが入っていたという記録があるが、正しくは白だった
■サイモントンは養鶏家ではなかった
といった、オレから言わせれば実にトリビアルなおはなしである。

まさに「木をみて森を見ず」。頑張って集めた資料を虫めがね片手に一生懸命よむのも結構だが、一歩進んで、そこから何か意味のあることを引き出すクリエイティビティがなければいくら威張っても虚しくはないか。UFO研究家だとかいうんなら。


【追記3】

どうせなので、もうひとつ言っておくか。

このおじさん、「その辺のネット情報を参考にしたようなUFO本は手抜きである、商業出版するンならちゃんと紙資料にも当たりなさい」的なことを再三再四ブログで言っておられる。ここからオレが思うことは二つある。

一つは、ここに見られる市販のUFO本への彼の「敵意」である。

おそらくそこで攻撃対象として想定されているのはASIOSあたりが出しているUFO本なのだが、オレなんかは「別にネットでチャチャっと情報集めて本作ったって別にイイじゃん」と思う。だが、彼は「ちゃんと文書資料に当たらんとダメ」とかワケワカンネー説教を始める。そこには当然「紙ベースの資料イッパイ持ってるオレはエライ」という含意があるわけだが、これはオレが推察するに、長年自称「UFO研究家」をやってきたにも関わらず、どこからも「じゃあNさんUFO本書いてネ」というオファーが無かったが故の彼のルサンチマンの表現ではないのだろうか?

でも、それはおそらく自業自得なのである。上にも書いたように、いくら資料集めたって英語力がアヤシイのでちゃんと読めない。資料を分析して独創的なアイデアを生み出す能力もない。ただ長い間ギョーカイにいただけ。そんなヒトに「UFO本書いて!」なんて注文が来るハズがないのである。そう、自業自得。

オレが思うこと「その二」。

「チャチャっとそこいらの情報を小器用にまとめただけのUFO本はダメ」という彼の「持論」に従うのであれば、当然そこで第一に批判されるべきは近年国内で最も多くのUFO関連本を量産している某N木S一Rさんであると思う。心あるUFOマニアであれば皆さん知っていることであるが、この人は明らかなHOAX(「でっち上げ」の意)と判明している事例を本のなかで平気で紹介したりしてる(この点について、ギョーカイには「彼は生活のためにわかっててそういうことしてるんだよ見逃してやんなよ」という人もいるが、オレはそういうのは認めない)。

だが、彼は決してN木さんを批判しない。何故か。

実はN木さんというのは、このおじさんが幹部を務めているUFO団体の主宰者なのである。ブログをみていると、たまに団体の会合だナンだといって一緒に仲良く酒飲んでる写真なんかもアップしている。親分なので「忖度」しているということなのだろうか。N木さんを批判してるンならそれはそれで主張に一貫性は出てくるので「まあそういう主張もありだろう」と思うのだが、残念ながらそういう真っ当な姿勢は見てとれない。とゆーか、そういう安直なHOAX案件を平気で載せてるN木さんの本を賞賛してたりする!

親分―子分関係で縛られてるようじゃ日本のユーフォロジー駄目だろうよ。それがオレの結論である。