ずっと前に「ジャック・ヴァレの本に出てくる怪しい研究者たち」(笑)を紹介するエントリーをこのブログでも何本か書いたのであったが、久々にそちら関係の話を。

ヴァレの本の中にチラチラ出てくる人物として、脳科学者のマイケル・パーシンガーと作家のポール・デヴルーという人たちがいる。この二人はだいたいセットで論じられているのだが、どうしてそういうことになるかというと、このお二人、そもそもUFO体験というのは地球の地殻関係から生じる電磁気が原因であって、それが発光現象を生じさせれば「UFO出現」ということになるし、それが脳に幻覚をもたらせば「アブダクションだ」ということになるわけヨ――みたいな議論を展開していた。お互い特段の関係はなかったようだが、この二人、期せずして似たような主張をしていたということであるらしい。

うーん、じゃあウチにある強力ネオジウム磁石をこめかみ辺りに押しつけると何か見えてくるんかい、などとついついツッコミを入れたくなるのであったが、そもそも「UFOは宇宙から来ているわけではない」説のジャック・ヴァレとしては、こういう議論も有力なオルタナティブとせざるを得ない。その意味では避けて通ることのできない人物ということになる。

だがしかし、「UFOイコール宇宙船」という思慮を欠く主張ばかりが大手を振ってまかり通ってきた日本であるからして、こういうマイナー系の人(?)はわが国のUFOシーンではほとんどガン無視状態だったようで、著作なんかも訳されていない――いや、もすこし正確に言うと、パーシンガーについていえば超心理学系ではそこそこ知られた論客だったハズなので本ぐらい出てて然るべき人ではあるのだが。

というわけでオレもお二人の言説は全く精査できていないのであるが、たまたま最近本棚の奥から引っ張り出したジェローム・クラークの『Unexplained!』(1999年の版であった)にこの二人をまとめて紹介している頁があった。2頁にも満たない記述ではあったが、ま、少しは勉強になった。このへんにかんして興味のあるかたも国内には5、6人はいるだろうから、以下、その骨子を訳出してみることにした。

いつも冷静なクラークだけに、相当にテキビシイことを書いております。特にデヴルー。「ちょっと何いってるかわかんない」状態でクラクラするが、それだけについつい彼の本をAmazonとかAbebooksで探したくなるオレがいる。

 
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Michael Persinger(1945-2018)=左=とPaul Devereux(1945-)


 アースライト仮説とテクトニクス・ストレス仮説

マイケル・パーシンガーとポール・デヴルーという二人の理論家は、地球物理学に基づいてアノマリー現象を説明しようという仮説をそれぞれ別個に編み出した。テクトニクス・ストレス仮説(略称TST)と呼ばれるパーシンガーの理論は、地殻内の歪み場が電磁電荷を生み出し、それがさらに光体を発生させたり幻覚を見せたりするというもので、その幻覚というのはエイリアンやその宇宙船、あるいは何らかの生物などといったポップカルチャーのイメージに源泉があるのだとする。この仮説の変種ともいうべきものが、デヴルーの「アースライト」概念である。

デブルーのアプローチがパーシンガーのそれと違っているのは、UFOの出現をもたらすモノとして、「圧電効果」ではなく「トリボルミネセンス」(注:鉱物の結晶などが摩擦することで光を生じる現象)をより有力な候補として挙げているところである。パーシンガーが、UFOのように見える光というのは地殻の運動があった場所から何百マイルも離れたところで観察されることがありうるとしているのに対し、デヴルーは一般論としてそのような効果が生じるのは断層線のすぐ近くに限られるとしている。

だが、総じてデヴルーの説というのは(パーシンガーに比較して)より過激な仮説となっている。彼の考えでは、アースライトというのは知性を有しており、目撃者の思考を「読み取る」ことができる可能性すらある。彼はこの仮想上のエネルギーについて「電磁気がよく知られていない形態で現れたもの・・・完全に未知の秩序に依ってたつもの・・・秘匿された力」などと語っており、そのエネルギーを社会に変革をもたらす「ニュー・エイジ」的なビジョンと関連づけている。デヴルーによれば、アースライトの研究には「人類社会の新たな時代をまるごと作り出すようなポテンシャルがある」「それは人類進化の上で重大な意義をもつもの、数多くの問題を前にした我々現代人を悩ませている(社会の)断片化を癒やす助けになってくれるかもしれないもの」だという。

パーシンガーの仮説は科学論文として刊行されたが、批判を浴びた。実証性という面ではその論拠は脆弱だったし、批判者たちは、パーシンガーは或る未解明のもの――すなわちUFOを別の未知のもので説明しようとしている、と言い立てた。彼らは、UFOや「モンスター」の目撃は地層の活動が活発でない場所で起きているとも主張した。クリス・ルトコフスキやグレッグ・ロングといった懐疑論者たちにしてみれば、TST効果やアースライトなどというものは、パーシンガーとデヴルーが示唆している途方もないモノを持ち出さずとも、球電、地震光、ウィルオウィスプ(注:鬼火の意)といった既知の自然現象として考えれば十分ということになる。

デヴルーのUFOを説明しようとする試みについて、ロングはこう記している。「<アースライト>についての様々な報告を注意深く研究してみれば、その光体のかたちは様々なものとして記録されている。そのことをデヴルーは理解していないのではないか。それだけではない。目撃報告によれば、そうした物体の形状は明らかに人工物だし、その動きは知性によってコントロールされたものであり、何らかの目的をもっているのは明らかだ。であれば、こうした物体をテクノロジーの産物である機械以外のものと考えることはできない。こうした事例で、エネルギーの塊だとかボールだとかの出現を示唆するものは全くない」。ルトコフスキはこう言っている。「光が一種の電磁気現象だという仮説を支持する状況証拠や観察結果もあることはあるが、そのようなエネルギーが本当に存在するのかどうかを実証的に判断するためには、さらなる研究が必要である」

パーシンガーは近年、UFOアブダクションの体験を「大脳側頭葉に電磁場が与えた影響が引き金となって生まれた幻覚」として説明しようと試みている。そこでパーシンガーが編み出した実験方法というのは、かぶった人間の大脳側頭葉に電磁波を浴びせることのできる「神のヘルメット」を用いたものである。たしかに多種多様な幻覚が生じた。しかしそれはパーシンガーの主張とは相反するもので、アブダクティーたちが報告したイメージと似たものはほとんど無かった。批判者たちはこう指摘している――被験者たちはアイソレーション・チェンバー(注:外部から隔絶された空間)に入れられたのだが、彼らの体験した幻覚というのは、これまで長いこと行われてきた感覚遮断実験で記録されてきた幻覚と良く似たものであった、と。言い換えれば、その幻覚というのはパーシンガーが考えた「ビジョンを生成する電磁気場」とは全く関係がなかった可能性がある。