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Bertrand Meheust

UFO好きとかいいながら、ここ数年、ヴァレの本を読むこと以外にはとりたてて何もしていない。それでも彼の本の中には日本ではなかなか知られていない人物が登場してくるので、余裕があれば調べてみたいような気はしているのだが、そこんトコがなかなか難しい。

たとえば、これはかなり前に当ブログでもチラッと書いたが、フランスの社会学者でベルトラン・メウー(Bertrand Meheust)という人がいる。搭乗者事例と「それ以前」のSF小説との連関などについて本を書いているのだそうだ。畏友magonia00氏によれば、SF作家のイアン・ワトスンはメウーの著作に触発されて『奇蹟の訪問者 Miracle Visitors』を書いたらしい。けっこう重要な人物のような気がしないでもない。

で、いろいろとググったら、UFO研究の親戚筋(笑)ともいえるUMA(未確認生物)を研究しているローレン・コールマンがメウーに関していろいろ書いているページに行き着いた。2人の生年月日は1947年7月12日でまったく同じ。その辺の親近感もあるようで、かつメウーの著作はどうやら英語に翻訳されていないフシがあって英語圏では知名度が低いのだろう、彼の事績をやや詳しく紹介している。以下大意。


では彼のことを紹介してみよう。

フランスの資料にあたってみると、ベルトラン・メウーは1947年7月12日生まれ。ママにいろいろ文句をつけたがる小さい頃には、「なんで3週間早く6月24日に産んでくれなかったんだ」としばしば文句を言っていたそうだ(ちなみにメウーと私には貧乏な労働者階級の家に生まれた、という共通点もある)。

フランスで活動する研究者・著述家であるメウーは、ユング派ユーフォロジー、超心理学、社会学、さらには政治学の専門家として知られている。かつてはトロワで哲学の教授をしていたが、現在では退職している(ちなみに私はといえば、かつてはフルタイムで働く研究者として、大学でドキュメンタリー映画や社会学、社会福祉を担当する准教授・助教授を務めていた。退職したのは2003年である)。

メウーが1981年に執筆した修士論文は、ウィリアム・ジェームズにかんするものだった。彼は社会学博士だが、それは1997年に動物磁気にかんする研究でソルボンヌ大から受けたものである(ちなみに私の修士論文は1978年、「職業上の性差別」をテーマにしたものである。博士課程にも進むことはできたのだが、PhD、すなわち博士号をとるために必要な二つの単位を取れずに終わってしまった――ひとつは社会人類学、もうひとつは社会学であった)。

彼は「インターナショナル・サイキック・インスティテュート」の運営委員会の一員である(ちなみに私は「未解明現象探究協会」ならびに「国際未確認動物学協会」の創設メンバーであり、名誉会員かつ永世会員である。もうひとつ、「国際未確認動物学ミュージアム」の創設メンバーにして館長でもある)。

1975年と1978年に、それまで本を出したことのなかった私は、共著として2冊の本を刊行した(相方はジェローム・クラークだ)。そこで扱ったのはユング派ユーフォロジー、未確認動物学、フォーティアン=怪奇現象をめぐる話だった。以来、読者諸兄の多くはご承知であろうが、私は未確認動物学・社会学・伝記・アノマリー現象・社会福祉・人類にまつわる様々なミステリー――といったことどもについて本を書き続けてきたのだった。

一方、1978年にベルトラン・メウーは最初の本を出した。それは「UFO現象が騒がれるようになる前に、それを先取りするようなSF小説が登場する」というナゾをめぐるものだった。その際に彼の相談役をつとめたのはエメ・ミシェルだった(私の場合はアイヴァン・サンダーソン、ベルナール・ユーベルマン、ジョン・キールであった)。メウーの本は、20世紀はじめのパルプマガジンに載った三文小説が、それから何年もあとになってようやく出現する現象のことを書き記している、とは如何なることか検証しようとするものだった。そう、考えてみても欲しいのだが、ケネス・アーノルドが現代における「空飛ぶ円盤」の歴史の幕を切っておとす1947年というのは、その時点ではまだずっと遠い先のことだったのだ。

メウーの本はしばしば懐疑論者によって引用されるわけだが、彼らとしては「UFO現象というのは単に心理学的な説明で事足りる」という主張を後押しする、有力な論拠をそこに見てとっているワケだ。だが、メウーのテーゼというのは実はもっともっと複雑だ。メウーの本を読むと――それはカール・グスタフ・ユングの大いなる影響を受けているワケだが――実は彼はそこで「地球外生命仮説」を弁護していたりする。

1999年、彼の大学における研究テーマ――つまりは霊媒についての研究が2巻本(計1200頁である)として刊行された。その本は超心理学の界隈で新たな論争を巻き起こした――いや、それは心理学の世界においても然り、であった。それは18世紀末からこの方、人間には秘められた潜在的な能力があるのか/ないのか、といった問題を争点化してきた研究史や学説史、あるいは様々な概念の歴史をたどり直すものだった。

(以下略)


別に聞かれてもないのに自分のコトまで書いちゃってコールマンさんお茶目なんだから、という感じである。ちなみにUFOファンの方には釈迦に説法であるが、「1947年6月24日に生まれたかった」というのはもちろんケネス・アーノルドの目撃があったまさにその日のことを言っているのである。

というわけで、どうやらメウーさんは「ユング派ユーフォロジスト」という括りに入るらしいが、アッチではそういう呼称がフツーにあるのだろうか? で、コールマンさんも「別にユング派だからといって全部心理的現象に還元してるわけじゃないヨ」的なことを言ってるのだが、ユング御大の『空飛ぶ円盤』を読んでもET仮説を全否定してるわけではないので、メウーもその辺は含みを残した議論をしてるのかもしれない。よくわからんけど。

もちろんフランス語は手も足もでないので、英語で何かメウーに触れたものはないかと調べてみると、 Jeffrey J. Kripal著『Authors of the Impossible』という本が、ヴァレとかメウーについて論じていることがわかった。とりあえずKindleで買ってみた。しかし、英語力が貧弱なのでいつ読めるかはわからんというのが現状(笑)。



Authors of the Impossible: The Paranormal and the Sacred

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  • 出版社/メーカー: University of Chicago Press
  • 発売日: 2011/09/16
  • メディア: Kindle版