アイ・ジョージという、とても歌唱力のある歌手がいた。いや、まだ亡くなったという話はきかないから存命であるのかもしれない。

で、ふと思い出したのだが、この人が「民族の根っこには伝統的なリズムがある」というようなことを言っていて、「おぉなるほど」と思った記憶がある。「徹子の部屋」か何かで聞いたような気がするが、よく憶えてはいない。

オレが記憶している限りでいうと(いまとなっては本当かどうかアヤシイものだが)、たとえば日本人というのは二本足の鳥のようなもので、つまり二拍子のリズムが骨の髄までしみついている、と彼はいうのだった。言ってみれば「イチニ、イチニ」「よいしょ、よいしょ」という、いわば鍬か何かをふるって農作業をしている時のリズムがどこか基本的なものとして身体にビルトインされている、という話である。

これに対して西洋人は四拍子だったか、三拍子だったか、ともかく二拍子ではないリズムを基本に生きているという話だったような気がするのだが、もともと音楽の素養のないオレなので、その辺はよく憶えていない。ともかく民族のベースになる拍子が日本人の場合は二拍子である、というのがキモなのである。

武智鉄二のナンバ歩きにまつわる議論ともどっかで重なるような気がするのだが、ナチュラル・バイブレーションっつーか、我々の身体を根源的なところで縛っているリズムがある、っつー感覚は、けっこうするどいのではないか。と同時に、なんかちょっとアヤシイ雰囲気を漂わせていたアイ・ジョージはどこにいってしまったのだろう、という思いが心中にきざしたりもする。