「朝日新聞主催の夏の高校野球は欺瞞にみちているので何とかせねばなるまい」という話は、このブログでも毎年のように書いているところである。

具体的にいうと

★すでに夏の甲子園はセミプロ的高校球児がプロのスカウト向けに技量をアピールする場になっている。一方で、地方の私立高校は「全国に名前を売る」ためにそういうガキどもを集めて強いチームを作ろうとしているから、ここに強力なるタッグが成立する

★そういう連中にしてみれば「強けりゃそれでいい」。もはや「教育の一環としての高校野球」などというものは絵空事

★もうひとつ、外人部隊が田舎の高校に乗り込んで××県代表とか名乗ってるわけだから「郷土の代表」なんてものは嘘っぱち。いってみればカンボジア語もしゃべれない猫ひろしがカンボジア代表でござい、と大見得を切っているような猿芝居である

★つまるところ、「清く正しい高校野球」などというのはもはや大嘘である。夏の甲子園はいっそのこと「プロ野球候補選手セレクション大会」とでも改名して、超高校級のスーパー球児のプレイを堪能する大会に宗旨替えすべきである


みたいな主張である。

非常にイイ提言だと自分では思っているので(笑)、朝日新聞が「ぜひご意見を拝聴したい」と言ってくるかと思えば、そんなことは全然なく、残念だなあと常日頃思っているわけなのだが、けさの朝日新聞をみて、ちょっと驚いた。

「耕論」という欄に、ノンフィクション作家の軍司貞則さんが登場し、「やっぱり今の高校野球はおかしい」という意見を述べているではないか!

ちょっと引用してみよう。

 夏の大会に参加する約4千校のざっと9割は、人間形成など教育目的で野球をするアマチュアです。これらの学校や選手はさほど問題を起こさないが、甲子園出場の確率も低い。残り1割はというと、プロ的な世界にいると言えます。野球を職業にしたい、あるいは進学や就職の手段と考える選手、それを支持する大人たち。野球部の活躍を生徒獲得に利用したい学校経営者、勝利を請け負う監督。周辺には、有望な選手と高校をつなぐブローカー、プロ野球のスカウトらがいる。



 「プロ」の世界を動かすのは教育ではなく、勝利至上主義。勝たなければ学校の宣伝にならず、監督は職を失う。選手も能力がなければ切り捨てられる。生活がかかった真剣勝負です。監督は見込みある選手の指導に集中する一方で、才能を見限られた側の一部がうっぷんをぶつけたり、不祥事をメディアに通報したりする事態もあります。暴行や飲酒事件が発生するケースも後を絶ちません。



 世間は建前上、「プロ」の学校にも教育の原理を貫くよう求めます。だが本音では、教育目的の野球ではなく、「プロ」同士の死にものぐるいの戦いを見たいと望む人も少なくない。


というわけで、軍司さんは最終的には「いっそ甲子園大会を一度やめてはどうか」みたいなことを言っておられる。この結論はオレとはちょっと違うんだが、基本的な現状認識についてはほぼオレと一致しているぞ。つまり、「清く正しい高校野球」と「セミプロ化した高校の跋扈」というのは根本的に両立しえない、と言っているわけだな。

ただ、ひとつ言っておくと、この「耕論」という欄は、3人出てきてそれぞれに意見を述べるというページなのである。なんだかなぁ、いろいろ批判されてンで、まぁアリバイ的にキツイことをいう人間を一人いれておいて、で、何となくガス抜きをして、しかし実際は何にもしない、もちろん「甲子園大会を一度やめる」なんてことはハナから考えてもいない。なんかそういうアリバイ作り的な戦略がミエミエなんだよなー。

そういう姑息な手をつかいなさんなよ、とオレとしては言いたい。せっかくスルドイご指摘を頂いたんだから、本当に一回、夏の甲子園をやめてみたら如何か。そうでもせんと、日本の高校野球は立ち腐れるばかりであろう。