江戸川区はいぜんとして独自の放射線調査をやる気がないようである。困った人たちだ。

役所が全然手を打たねーから、やむなくオレもヤフオクで放射線測定器のDoseRAE2落としちまったじゃねーか、ちょっと安めの即決価格で出てたんで飛びついちまったんだが、納期は7月とか書いてあったしちゃんと届くか一抹の不安があって却って気苦労が増えたじゃねーかコノヤロー、万一のことがあったら責任取りやがれ江戸川区長クソー状態である(笑)。

閑話休題。またまた江戸川区の保健予防課感染症第二係に電凸された方のレポートが上がっていた(311sanichiichiさんのブログ)。今回出てきたのは放射線技師だとかいう人。なかなか興味深いことを言っていたので、その言い分について考えてみた。


職員氏曰く

日本人は内部被曝を含めて自然放射線を年間2mSvちょっと被曝している。よって人工放射線の1ミリ分含めて年間3mSvぐらいまでなら大丈夫

「自然放射線による被曝量+人工放射線1mSv」ぐらいまでなら大丈夫、という議論には当方も異存はない。ただし、日本人の自然放射線被曝量は1.4mSvとしている資料が多いので、それをベースにすると「大丈夫なのは年間2.4mSvまで」ということになる。ちなみにこの人、後ろのほうでは「日本で暮らしている方の数値は年1、6ミリシーベルト」とか言っているので、だったら安全ラインは2.6mSvになるのではないか。「3mSv」とか数字を丸めて余裕を稼ごうというのは、落語の「時そば」みたいでズルイと思った。


つづいて、葛飾区の空中放射線0.6mSv/hの件(共産党調べの水元公園のデータかと思われる)についての問答。

職員氏 「0、6でも、3ミリちょっとですね。食べ物が入った形で」

311さん 「毎時0、6だと、食べ物を含めて年間3ミリで、安全ということですか?」

職員氏 「もちろん安全ですね」

ここが良くわからない。この職員氏は「0.6mSv/hの空中放射線量だと年間被曝量は3mSvちょっと」になるけれども、前にいったように年間被曝量3mSvは問題ないラインなので心配いらないからね、といいたいのだろう。0.6mSv/hに単純に24×365をかけると年間累計5.25mSvになってしまってつじつまが合わないので、ここでは例の「屋外8時間・屋内16時間(屋内分は屋外数値×0.4)」という計算をしていると思われる。これだと年間累計3.15mSvで、確かに「3ミリちょっと」。そこまではいいが、「食べ物が入った形で3ミリ」が意味不明なのである。

これは「食べ物による内部被曝もあわせて年間被曝3ミリにおさまるよ」という意味に読めるのだが、ちょっと待ってくれ。この3.15mSvには、もちろん人工放射能で汚染された「食べ物」とか「水」とか「ホコリ」とかを体内に取り込んで受ける内部被曝線量は入っていない。この3.15mSvに、そういう内部被曝量をプラスしていって、それでようやく職員氏のいう平時の「2.0mSv」(俺的には1.4mSvといいたいところだが)との比較ができる。

それを足してもいないのに「食べ物入れて3ミリ」とか何で言えるんだ? 人工放射線による内部被曝は実質ゼロだから足しても増えない、とか勝手に判断してるのか? 0.6mSv/hのとこに住んでたとすると、外部被曝の増量分だけですでに「プラス1ミリ」の余裕は使い切ってしまって、あとは人工放射線による内部被曝量の分だけ純増、ということではなるんではないのか。この人、本気で「内部被曝ほぼゼロ」と考えてるんだろうか。あるいは上司からこういう風に言えと命令されてるのか?

内部被曝量の算定は難しいらしく素人にはなかなか手を出せない。「外部被曝と同じぐらい見ておいたほうがいい」とか「いや、××倍だ」とか、いろいろ議論があるらしい。だが「ほぼゼロでいい」なんて楽観的な話は聞いたことがないぞ。ともかくその辺もハッキリしないから、せめて外部被曝の目安となるデータが欲しい、江戸川区で測ってくれ、と区民有志は言ってるのに、なぜそれがわからんのか? 


職員氏曰く

「私15年、16年と仕事してきて、撮影業務だけで20ミリシーベルト以上被爆しているんですね。これは恐いことですか?」

「数値がさっきの1ミリシーベルト以下ってなると、けっこうどこ行っても厳しい値になると思うんですよ。」

というようなことも職員氏、言っている。放射線技師としての体験をもとに説得にかかった部分で、言わんとすることはわからんでもないが、聞いている人は子供への影響を心配しているのであまり説得力がない。子供への影響は大人と同等とみなしていいのかどうか、ここは議論があるところだし、「ペトカウ効果」といって、内部被曝はその被曝量がわずかであっても長期にわたるのであれば決してバカにできない、といった議論もあるのだ。

で、後半は意訳すると「人工放射線の年間被曝量を1mSv以下におさえるなんて、今の東京あたりじゃ無い物ねだりですよ。ま、俺みたいに20mSv受けても平気で暮らしてる人間もいるんで、子供だって1ミリちょっと超えるぐらいなら我慢して下さいよ」。最初のほうでは1ミリ以内に何とか収められる、というような詭弁を弄していたわけだが、ご当人もその嘘っぽさは分っていて、ホンネがチラッと出てしまったのだろう。が、これは敗北主義である。タテマエを死守すべき役人(笑)としては、やはり年間1ミリラインを意識してほしい。仮に今後、区内でけっこうシビアな数字が出てきたとしても。


職員氏曰く

「だから、我々が計測するとかの判断はしてないんですね。部長とか?課長とか?そういう人達がやってる訳で」

これは「なぜ江戸川区は独自測定をしないか」に触れた部分。なるほど。部長、課長が計測するかしないか判断しているのか。っていうか、部長・課長って誰? そう思って区議会の議事録をネットで調べたところ、今年3月の福祉健康委員会の議事録があった。

所管は健康部保健予防課だというので、健康部長は何という人かとみると渡辺浩さん、保健予防課長は大地まさ代さんである。その後に異動がなかったとすれば、この人たちが計測にストップをかけていることになる(と少なくとも部下の人は考えているようだ)。俺たちはてっきり多田区長がスゲー頑固ジジイで計測するなと命令してるのだと思っていたが、考えてみれば、現場の責任者が「いや、必要ないんですよ」とか言ってたとしたら、「ま、現場無視するわけにいかんからなー」とかいってゴーサイン出せない、という可能性だってないワケではないのだった。

というわけで、渡辺浩さん、大地まさ代さんをご存じの区民の方、ぜひこのご両人を説得していただけまいか。明日の江戸川区をになう子供のために。


職員氏曰く

「でも、区長も人の子ですからね、支持者に突っつかれればいろいろ判断も変わるとこだと思いますけどね。」

ここも興味深かった。「ここまで拒否し続ける背景には何か裏がありそうだ」的邪推も可能なんだが、プレッシャーをかければ翻意もありうる、と担当職員の方も見ているんですなー。朗報。区長にもひきつづき民草の声を届けていく必要がありそうだ。(おわり)