文科省が、いまさらながらセシウム汚染土壌マップ(リンクは朝日新聞記事)というのを出してきた。フクイチ100キロ圏の6月時点のデータらしい。
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(図表は朝日記事添付)

この朝日の記事によると、チェルノブイリ原発事故では555Kベクレル/平米を超えた地域は「強制移住」の対象になったんだが今回の調査でこの値を超えた場所は約8%に上った、とか、ちなみにチェルノブイリの汚染地図が完成したのは事故3年後であった、みたいなことが書いてある。

この手の「チェルノブイリの強制移住地域なみの汚染」という表現はしばしばネットなどにも出てきて俺たちを動揺させているんだが、上の記事にもあるように、そのデータは事故後かなりたった時点のものらしい。それにチェルノブイリのほうは確かセシウム137オンリーのデータであったはずだが、今回の文科省のデータはセシウム134とセシウム137の合算値のようだ。よって「両者の数値を比較する」というのはあんまり意味ないような気がする。

もっとも、朝日の記事についている図表(上図参照)をみると、これはセシウム137のみの数値をプロットしたもののようだ。まぁチェルノブイリとの比較を無理にでもしたい、ということであれば、こっちを見たほうがいいような気もするが、原稿のほうは一貫して134、137合算値のことをいってるようなので一貫性がない。読者をミスリードするおそれがあるように思う。

このへんの問題については、ホットスポットといわれる柏市在住の若手理系研究者の方のサイト「柏夜話」というところで文系にもわかりやすい冷静な解説がなされていて、一時期よく拝読したものなのだが、詳細はすぐ忘れてしまうのだな(笑)。

ちなみにこのブログの主の水琴さんによると、The International Chernobyl Project -Assessment of Radiological Consequences and Evaluation of Protective Measures-という1991年の国際調査の報告書があるらしく、ちゃんと読まねば、とずっと思っているのだが、なかなかできん。というわけで、とりあえずこの報告書の記載について上のページから引用させていただくのだが

このなかで、ソビエトが1990年に導入した移住プログラムについても述べられています。

(1)137Csによる地表汚染が、37~555kBq/m2の地域では、補償として15ルーブル/月。ただし、移住はサポートしない。

(2)137Csによる地表汚染が、555~1480kBq/m2の地域では、補償として30ルーブル/月。また、妊婦と子供は移住させる。その他の人々は、移住を望めばサポートする。

(3)137Csによる地表汚染が、1480Bq/m2~の地域では、全住民を移住させる。

ということです。

「強制移住」っつーと、「全員逃げ出せ!!」みたいなイメージがあるんだが、これを読む限り有無を言わさず移住しなさい、っつーのは1480Kベクレル/平米以上なんでないか?

まぁ、チェルノブイリに倣ったらOKとかいう問題でもないんだが、放射線を「正しく恐れる」ためには、正しい比較をするのが大前提だよな、と思うきょうこのごろ。