「UFOの怪光線で殺された」とされるニュージーランド人、エイモス・ミラーというのは実在した人物なのか?

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何のことかわからんという人はこのページを見てもらうと話は早いのだが、エイモス・ミラー事件というのは1968年にあった事件として昔からたびたびUFO本に出てくる話である。しかも,、ここにも貼っておくけども何かおどろおどろしい死体の証拠写真?が記事についてくるのがお約束である。ただなぁ、「あからさまにUFOに殺された」なんて事件がありゃ、こりゃ末代まで語り継がれるというか、そもそも国家安全保障上の大問題であって、ニュージーランド全土が恐慌状態に陥っても不思議ではないぐらいの大事件だと思うんだが、外国の文献などには一切出てこない(俺の知る限り)という実に不思議な事件なのであった。

というわけで、もう40年近く前になるんだろうかやっぱりこの話が載っていた南山宏「UFO事典」を読んで以来、エイモス・ミラーはオレの頭を占拠し続けている謎なのであった。であるからして、ここ数年、気が向いたときなどオレはインターネットに「Amos Miller」「New Zealand」「UFO」などと検索ワードを入れては実行キーを押しているのだが何もヒットしやしない。実話であれば英語圏の話なのだから何かしら引っかかる筈なんだが。

というワケで、オレ的には「どうやらこりゃ誰かが捏造した日本オリジナルのデマだな。人騒がせだなー」という心証が形成されつつあったのだが、ナントここにきて何気なくまた「Amos Miller」検索をしてみたら英語のウェブページがヒットしたではないか! ユリイカ! 何か昔の少年雑誌風イラストの下に事件の簡単な解説とおぼしき文章もついてる。というわけでさっそく読んでみたぞ。

チョコベーダーズ・コンタクティー・ファイル04

怪光線を撃ってきた!メロン頭のエイリアン

場所: ニュージーランド・オークランド

UFO: キャノピーつきUFO



1968年2月2日、牧場を経営しているエイモス・ミラーは、円盤形をした奇妙な後者が家に隣接した森に着陸するのを目撃した。ミラー氏は、息子が引き留めるのもきかず近づいていこうとした。そのとき、メロンを思わせる頭をしたエイリアンが奇妙な叫び声をあげて横から出現し、それから光線銃を撃って彼を吹き飛ばした。このあとすぐ、エイリアンはUFOに乗り込んで飛び去った。



このあとしばらく、ミラー氏はとても神経質な性格になってしまった。検査をしたところ明らかになったのだが、彼の体内からは大量のリンとカルシウムが失われていた。


ふむ。ミラー氏は即死したんじゃなかった? それに「メロン頭」とは初耳ナリ。ま、細部に異同があるのはよくある話だ……と一瞬思ったんだが、ん? 文末にこうある。「Artwork created by: Taishiro Kiya」。キヤ・タイシロウ? このナイスなイラストを描いたのは日本人ってこと? なんで? そこでふと気づく。そういや「チョコベーダーズ」ってなんじゃ? それにこのページ、市井のUFOファンのサイトかと思えばさにあらず、写真共有サイトFlickrなんだよナ…………………どうもアヤシイ。

で、しばしネット上で探索作業。その結果、案の定というべきか、ガックリと肩を落とすことになった。可哀想なオレ(笑)。おおむね以下のような話であるらしい。

▼その昔、キヤ・タイシロウ氏は友人のオカベ氏が経営していた「ビルドアップ」という会社でデザイナーとして働いてた経緯があり、その後、キヤ氏はハリウッドで一旗揚げようとLAに渡ったりイロイロあったんだが、2000年頃になると、この2人の間で突如「チョコベーダー・プロジェクト」始動ッ!!という話が持ち上がったのだった

▼というのも、当時の日本では「チョコ・エッグ」といって中に動物のフィギュアを仕込んだ食玩が人気になっていた(そういえば何かそういうのありましたなー)。その延長線上のビジネスとして彼らが考え着いたのが「チョコベーダー・プロジェクト」。動物のかわりに、「実話」にもとづいてUFOやエイリアンのフィギュアを入れたらいいんじゃねーか、というのがキモのアイデアで、彼らはUFO話をイロイロリサーチをしたらしいが、最終的には「この際、自分たちで作った話も入れちまおうや」というワケで、結果的に「創作ネタ」は全体の40%にも及んだとのこと

▼キヤ氏がこのフィギュアのデザインなど仕上げる一方で、オカベ氏は企画の売り込みに奔走。で、結局トミーと森永と組んだ食玩プロジェクトがスタート。最終的には「チョコベーダー」はゲームボーイのゲームとかにもなって、大成功をおさめたのであった

▼一方、海の向こうに住むAstronitさんは、この手のアヤシイフィギュアが大好き。ふとしたきっかけ?でこの「チョコベーダー・プロジェクト」を知り、コレクションを開始。遂には写真共有サイトFlickrにフィギュアの写真をアップしたりして自慢を始めたのだった

▼そうこうするうち、Astronitさんはキヤ氏とコンタクトをとることに成功。キヤ氏のほうからは、それぞれのフィギュアにまつわるストーリーとかイラストが送られてきたので、Astronitさんは得意満面(と想像する)。それらをFlickr上に次々とアップする。で、その中に例のチョコベーダーズ・コンタクティー・ファイル04「エイモス・ミラー事件」があった、というワケなのだった

注:このあたりのキヤ氏の回顧談はこのページに出てくる

AstronitさんがFlickr上で書いていることを総合すると、どうやら以上のような経緯らしいのである。ということになりますと、これは単に「国内に流布してきたエイモス・ミラー伝説が<逆輸入>のかたちで英語圏のウェブに登場した」というハナシであって、キヤ氏じしん「創作もありだよねー」っつぅ姿勢であったわけだから、つまり信頼すべきデータでも何でもなかったのである。

で、そういう目で「チョコベーダー」シリーズの48体&SP版4体のラインナップを見てみると、うむ、いかにもうさんくさい。「ウンモ星人」「3メートルの宇宙人」「ポプキンスビルモンスター」あたりはいいんだが、Flickrに載ってるNo.12「美青年型エイリアン」の説明文はこんなだぞ

チョコベーダーズ・コンタクティー・ファイル12

Satanから来たハンサム野郎(注:From Satanって書いてあるんだがSaturnではないのか? 「悪魔から来た」でいいのか?)

場所:デンマーク・コペンハーゲン

エイリアン:ハンサム野郎エイリアン

UFO:五角形



大学生のカレン・ヤコブセンにはアダムという名のボーイフレンドがいた。彼は知能指数が200というのが自慢で、運動も万能だった。1991年4月のある日、2人は彼女の家でコーヒーを飲んでいたのだが、そのとき突然アダムの髪の毛が全部抜けてしまった! そこでアダムは「僕はほんとうは惑星サタンから来たエイリアンなんだ。でも地球人に正体がばれてしまったからには帰らないといけない」と言った。それから彼はUFOに乗って飛び去った。その後、カレンは、アダムのコーヒーに砂糖ではなくて塩を入れていたことに気がついた。


ナイスである(笑)。ちなみに、イラストで描かれるHandsome Guyが、なんかモナーみたいな格好をしているのが秀逸。このほか、No.16「インパネスのエイリアン」・No.18「掃除機をもった怪人」・No.32「宇宙デビルガール」の説明文なども読んでみたいが、残念ながらAstronitさんのところに資料が送られてきていないらしく、アップされていないのが残念である。
(参考ページ:Wikipedia「宇宙大作戦チョコベーダー」

閑話休題。エイモス・ミラーの件は振り出しに戻ってしまったんだが、さて。やはりこの謎を解くためには、その情報源の一人、いまやUFOシーンの長老格となった南山宏氏に直当たりするしかないとオレは睨んでいる。

【追記】

なお、その後になって、民間有志の働きにより、この謎はほぼ解明されつつある。関心をおもちの方は、こちらのtogetterをご覧いただきたい。


【追記2】
なお今日は2021年1月13日なのだが、久々に来てみたらリンクが切れておった。文中にもあるようにこれはリンク先の「Flickr」のページに書いてあった情報をもとに書いたエントリーなので、ちょっと意味が分かりにくくなっているかもしれない。ご容赦あれ。