天声人語ネタじゃないんだが、夏の甲子園が終わったので、あらためて朝日新聞の記事をみて嗤おうというエントリーである。

結果的にきょうの決勝戦、大阪桐蔭高校が青森県代表(笑)の光星学院を下して優勝したわけだが、それを報じる本日の朝日新聞の夕刊(東京発行4版)はなかなか面白かったぞ。

社会面は青森県代表(笑)の光星学院の健闘をたたえる記事を書いている。しかし、やっぱりウソは書けないから、たとえばこんなくだりがある。

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そう、主力はどう考えたって外人部隊、という事実は朝日新聞でも認めざるを得ないのである。まあエースピッチャーが地元・八戸出身の金沢君だったので、かろうじて青森代表としての面目を保ったと言えば言えないことはないンだが、しかし基本的に「仕事は野球」という外人部隊であるからして、地域の人が何か差し入れにきて「がんばってケロ」とかいって交流するような心温まるエピソードは残念ながらなかったようで、そのあたり、朝日新聞青森支局員の苦労を思う(苦笑)。

そりゃこの子たちが「じゃあ俺はこれからもずっと青森で暮らしてくぞ」とかいうんだったらね、俺もこんな辛辣なことは言わないんだが、どうせ連中は卒業したら大阪とか自分の地元に帰っていくのである。そういう意味じゃ、「田舎に行って甲子園出場にショートカット→ざまーみさらせ」という連中の腹の中はミエミエである。いや、実のところ、この朝日の社会面にもそのあたりの機微を伺わせる一節が、さりげなく書いてあったりする。

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そう、つまりこの北條君にとっての甲子園というのは、地元の名門・大阪桐蔭にフラれちまって都落ちを余儀なくされたけれども、「クソー今に見返してやる」って心に誓って、んで何とか頑張ってここまでやってきた、というストーリーなのである。「清く正しい高校球児」という朝日新聞の基本フォーマットとはちょっと違うんだが、むしろこういう一節のほうがリアリティを感じさせて心を打つ。かつて巨人を追われた三原脩が、はるか九州の西鉄を率いて日本シリーズで遺恨を晴らした、みたいな。

というわけで、「清く正しい高校球児」という幻想を称揚しようとするんだが、なかなかそういう風にはいかずに、むしろその背後にある高校球児のギラギラした野望みたいなものがどうしようもなく浮かび上がってしまったあたりに、この夕刊の記事の面白さがあるので、購読者の方もぜひその辺を味わいながら読んでほしい。

ちなみにこの夕刊の一面にはこんなことも書いてある。

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この太田幸司氏の発言は、もちろん「もう東北の高校野球を遅れてるとはいわせない」という意味なのだが、これを逆にいえば、今の時代、東北代表だ、北海道代表だとかいって地域の栄誉を担って甲子園に出て行くというタテマエは実質崩壊しつつある、ということでもある。別に島根県に縁もゆかりもない指導者・選手が、たまたま島根県で野球をやっている、みたいな世界である。

ま、しかし、大きな流れでいえば、別に「これはまずいよなー」「朝日新聞もいよいよ苦しいな」みたいな声はあんまり盛り上がっていないみたいなのだよ。そういえばロンドン五輪の卓球女子団体戦の準決勝で日本が戦ったシンガポールの代表なんかも、中国から帰化した選手ばっかりだったし、猫ひろしがカンボジア人になっちまった件もあったし、世の中そういう方向に向かってんのかな。グローバリズムの時代だし、とかいってな(笑)。

というわけで、「朝日新聞を嗤ふ」とかいいながら、客観的にみれば嗤ってるのは俺一人(笑)ということにもなりかねない状況もコレあり、なんかこんなこと書きながらチト哀しくなってきたりもするのだった。