彼らが入手したという「折りたたんでもすぐ元の形に戻ってしまう形状記憶合金みたいなホイル」というのは、やはりUFOが墜落したという触れ込みで有名なロズウェル事件のストーリーにも出てくる。あと、関係者のところにやってきた軍部の連中が「何か墜落してたと思うけど、それって気象観測気球だからネ」みたいな「言い訳」をするのもロズウェル事件のそれを踏襲している。ついでにもう一つ言っとくと、2人が拾った「エンジェル・ヘア」というのも、前回触れたようにUFOの世界では有名な小道具である。ホセたちが自らの体験を語り出したのは2000年代初頭。当然ながらその時点でこうした情報は広く知れ渡っていたのである。
ちなみにヴァレは、そういう疑念に反駁して「いや、2人は証言の中で自分の見たものをUFOとか円盤とか言わずにアボカド形だった言うとるやん。それが彼らの体験がオリジナルだった証拠や」みたいなことを主張しているが、さて、そのような主張にどこまで説得力があるだろう?
ここからは推測だが、「他に誰か証言してくれる人はいないですか?」とかいって聞いてみたら、「そういや姪のサブリナは何か覚えてるんじゃね?」という話になったのではないか。かくてパオラは、2020年になってサブリナに接触する。彼女はそこでおおむねこのようなことを語っている。
・お祖父さんから形状記憶効果をもつ細長い金属ホイル2枚、ファイバー状のエンジェル・ヘアを見せられたことがある
・ホセおじさんから「ピラミッド型をしたクッキーぐらいの大きさの金属」をもらった。でも子供たちに渡して遊ばせていたら無くしてしまった(なんだよ無くすなよw)
写真は左からハリス、ホセ、サブリナ(「トリニティ」より)
このレビューは今も消されてはいないので本日(すなわち2022年6月22日)時点でも読むことができるのだが、そこには「自分の父親は当時、ニューメキシコ州アラモゴードの第231陸軍航空隊でB29爆撃団のメンバーだったのだが、1945年8月15-17日にこの宇宙船の回収にあたったという話を語っていた」ということが書かれている(で、このオヤジはたぶんもう死んでるのだろう)。
それによると、彼の父親はビル・ブロフィ・シニアという人物であったのだが、彼の証言によれば、当時現場近くを訓練飛行していたB29の乗員が――ちなみに本の中では「B49」となっているが誤植と思われる――例の無線タワーのところから煙が上がっているのを目撃したのだという。飛行機の墜落事件があったものと考えた上官の命令で、ブロフィ・シニアは現場へと向かう。そこで彼は墜落した物体を確認し、さらに近くに馬に乗った「二人のインディアンの少年」を目撃したのだという(その回収作業はほどなく別の人物に引き継がれたことになっている)。