カテゴリ:UFO > ジャック・ヴァレの世界

たまには何か書かないとそのまま消え失せてしまいそうなブログなので、今回はジャック・ヴァレにかんしてのお話を一つ。

たびたび書いているけれどもオレは世界的ユーフォロジストであるジャック・ヴァレの勝手連的エヴァンジェリスト(「宣教師」といったイメージである)を気取っており、彼が本に書いてきた議論を世に広めたいと考えているのであるが、しかしその著書を訳したものを勝手にネットにアップしたりすると著作権法違反になってしまうのだった。

ただし、いわゆる「批評」という営みの中で「批評が主:引用が従」という構成を守れば批評に必要な部分の引用は正当なものとして認められる(と言われている)。その厳密な要件というのは今ひとつよくわからないのであるが、今回のエントリーはかくの如き批評文であるという前提のもと、以下、彼の文章を引く。




聖母マリアの第9回目の出現にあたって、ベルナデッテは「泉のところまで行って体を洗い、その水を飲みなさい」という指示を与えられた――しかし、実際にはそんな泉はなかった! ベルナデッテは泉を探したけれど全くみつからず、絶望した彼女は砂地を掘り返しはじめるという有り様だった。

そこににじんできた水はやがて穴を満たし、土とまざってドロドロになった。ベルナデッテは顔を洗おうとしたが、かろうじてできたのは、その泥を自分の顔に塗りたくることだけだった。彼女はその水を飲もうとし、さらには草を食べようとしたのだが、そんな時、集まった群衆の笑い声はひときわ高くなった。

ベルナデッテはその穴を「ほとんど意識が朦朧とした状態で」掘ったのだけれど、しかし、なんと彼女は「泉」を掘り当てるためにはまさにドンピシャの時、ドンピシャの場所で穴を掘っていたのだった。

じっさい翌日になるとその場所には、か細いけれど奇麗な流れが姿を現し、その流れは野を下ってガブ川に流れ込むようになった。ルイ・ブリエッテという盲人がその泉の水を目にひたしたところ、彼は視力を取り戻した。死に瀕していた赤ん坊が完全に健康を取り戻した。かくて、群衆の態度は一変した。 

(ジャック・ヴァレ『見えない大学』第7章より)


言うまでも無いが、これはフランスの「ルルドの泉」についての話である。1958年2月11日、薪拾いをしていた14歳の少女ベルナデッタ・スビルーは突如顕現した聖母マリアと出会い、やがてそこからは病人を癒やす力があるとされる「泉」が湧き出し、最終的には「聖地ルルド」が誕生することになる。引用した部分は、そのありがたい「泉」が出現した時のストーリーである。

いや、もちろんジャック・ヴァレはこれを「ありがたいお話」として語っているわけではない。

UFOの搭乗員は目撃者に向けてしばしばナンセンスとしか思えない言葉を発するという。そして、年来の持病やケガに悩んでいた人間がUFOと出会ったのちに快癒してしまったという逸話も多くある。よくよく考えれば、「ルルド」のような奇跡もまたUFO現象に類似したストーリーとして理解できるのではないか。それがここでのヴァレの含意である。

誤解されるとイカンので念のため言っておくが、これは別に「ルルドに出現したマリアは宇宙人だった!」というような、いかにも雑誌「ムー」が好きそうな浅薄なことを主張しているわけではない。UFO現象というのは、ある種の宗教現象にも似て、人間存在の根源に関わるような何かとてつもない重要な意味をもっているのではないか。彼はここでそういう問題を提起している。

これは大事なことであるからこそ敢えて耳目を引くような挑発的な議論をする――ヴァレの狙いはおそらくはそのようなものであり、だからこそ彼はカトリックの聖地ルルドを引き合いに、カトリックの信者にとっては瀆神的ともいえるような挑発的な主張を敢えて展開しているのである。

同様にして、彼はメキシコの「グアダルペの聖母マリア」なんかも同書で取り上げている。ここで彼が射程に入れているのは、いわば現代における「生きた神話」としてのUFOだ。

なかなか痛快ではないか。面白いではないか。

UFOの目撃も最近ではめっきり減ってしまって、じゃあなんでそんなに重要なUFOがいなくなってしまったのよ――などといったツッコミも想定される。が、少なくとも20世紀の半ばから終わりにかけて、UFOは確かに「神無き時代」の最先端を走っていた。それにしてもアレは何だったのかというのは、なお考えるに足る問いである。だからいまいちどヴァレに光を。オレはそんなことを思っている。


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もうだいぶん前のことになってしまうが、このブログではかつて、世界的に知られたユーフォロジスト、ジャック・ヴァレがその主著『マゴニアへのパスポート』(1969)で触れた日本の或るUFO事例を紹介したことがある(→ココ)。

オレがザッと調べたところ、結局それは真性のUFOじゃなかったということがわかったのだけれど、今回は彼のこの本に紹介されている他の日本の事例も紹介しておきたいと思う。

念のため説明しておくと、この本の後半部は世界のUFO事例集になっていて、1868年から1968年にいたる100年間の923事例がそれぞれ簡単に紹介されている。そこに日本の事例としてくるのは以下の4件。何はともあれその記述を見ていただこう(ちなみに冒頭の数字はヴァレが割り振った事例ナンバー。もひとつ付言しておけば、以前ブログで触れた事件というのはNo.458である)。


390. 1957年4月19日 11:52
日本近海の太平洋で、「キツカワラ丸」に乗っていた漁師たちが、二つの金属的な円盤が空を飛んで近づいてくるのを目撃した。そのあと、激しい暴風が巻き起こった=「フライング・ソーサー・レビュー UFO目撃の世界総集成」(シタデル・1958年)より

458. 1958年1月26日 16:00 島田市(日本)
非常に明るく輝く物体が、化学工場の多数の従業員の前で着陸した。彼らによれば、さらに複数の生命体がパラシュートもなしに空から降下してきた。彼らは奇妙な服を着ており、未知の言語でしゃべっていた=「フライング・ソーサー・レビュー」1958年3号より

459. 1958年2月2日 15:30 北海道(日本)
農業を営むナカグチ・ヤスキチと彼の息子、そしてタクマ・カメタロウが、卵形をした物体が静かに着陸するのを目撃した=「フライング・ソーサー・レビュー」1958年3号より

589. 1963年12月 日本(正確な地点は不明)
ある日本人男性から、物体の着陸と、そこから出てきた存在についての報告があった。その存在は目撃者には理解のできない言葉で彼に話しかけたのち、再び乗り物に乗り込んで飛び去った=フランスのUFO誌「夜の光」67号)より




というわけでいずれも一次資料がハッキリしない。有り体にいえば全てが要領を得ず、かつインチキくさく、とりわけNo.589なんてのは場所も時間も報告内容も全部詳細不明で、いわゆる「唐人の寝言」である。オレはジャック・ヴァレのファンを自任しているのだけれども、流石にこういうところは彼もちゃんと調査しているワケではなく「けっこう杜撰だったんじゃねーか?」と思うのである。

もっとも、以前のエントリーでも触れたようにそこにはおそらく日本のUFOファンが――おそらくは若干の功名心も手伝っての事だったのだろう――世界的研究者に対して「こんな事件ありましたゼ」的に怪しげなネタを吹き込んだ、とおぼしきフシもある(証拠は無いけれどもそこにはおそらく悪名高きUFO研究団体、CBAこと宇宙友好協会が一枚噛んでいたのではないかとオレは推測している)。

そういう風に考えるとこうした粗くてガセっぽい記述も、或る意味では1960年代の日本のUFOシーンを考えさせる貴重な記録なのではないか。『マゴニアへのパスポート』をお読みでない方にもその辺りのことをお伝えしたく、今回のエントリーを書いてみたという次第。






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当ブログでも何度か触れてきたスペイン語圏の超常現象研究家、サルバドール・フレイクセド(フレイチャド。Salvador Freixedo)が10月25日にお亡くなりになったようだ(スペイン語は読めないのでその死去を伝える英語のサイトをひとつ挙げておく)。


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改めて簡単に触れておくと、彼は1923年生まれ。日本でいえば大正時代の生まれということになる。故郷はスペイン・ガリシアで、もともとイエズス会の司祭であったが、超常現象についての興味も已むことなく、最終的にカトリックのドグマと彼の考えが相容れなくなったということなのだろう、教会を離れて超常現象やUFOなどの研究者として活動してきたという人物である。

オレは高名なユーフォロジスト、ジャック・ヴァレの本でこの人の存在を知ったのだが、それによれば、フレイクセドは「UFO=エイリアンの宇宙船」と考えるような単純極まりない俗説を退け、それはもうちょっと曖昧模糊とした超常現象の一つとして理解すべきではないのかという、いわばジャック・ヴァレ - ジョン・キール系列に属する主張を重ねてきた人物であったらしい。

ただ、残念ながらわが国ではこの人の存在・事績はほとんど知られてこなかった(雑誌か何かに出たことはあったのかもしれないが、少なくともネット上では検索しても日本語で書かれたテキストに遭遇したことがない)。基本的にスペイン語の本しか出してこなかった人なので、なんでもかんでもアメリカさまの後追いの日本のユーフォロジスト界隈では無視されてきた、ということだったのだろう。

ただ、おそらくは唯一英訳されている『Visionaries, Mystics and Contactees』という薄い本がある。



「これならスペイン語が全然わからんオレにもなんとか読めるのではないか」というワケで、以前この本を買い求め、そのうちこのブログで内容を紹介しようなどと考えていたのであるが、生来の怠惰ゆえずっと放置しているうちに彼が亡くなってしまったのはいささか残念である。

それでもいつかは、という思いもある。さようならサルバドール、泉下でいましばし待たれよ(待ってねえかw)。





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ジャック・ヴァレは著書『欺瞞の使者』で、各地のアヤシイ円盤カルトを訪ねた時の話をたくさん書いている。そんな団体の中でもけっこう紙幅を費やして取り上げられているのが「メルキゼデク騎士団」と名乗る組織で、どうやら世界各地に「信者」がいたようだ。中では国際組織を率いる「グレース・フーパー・ペティファー博士」(女性)とかいう人物とかも出てくる。だが、この円盤カルトのことは他で読んだ記憶もない。なんだかナゾ多き団体である。

以下、『欺瞞の使者』からの引用になるが、フランスの組織で配っていたリーフレットにはこんなことが書かれていたらしい。



我が使命は、この地球上に神がいることを公に知らしめることである。その者は、すべての地球外生命体、すべてのUFO 、そしてあらゆる惑星の首領であらせられる。彼は地球を救うために来臨された。この世界のありとあらゆる貨幣はすべて時代遅れである。ただ「土地」だけに意味はある。あらゆる宗教は時代遅れである。兵役というのは神がひどく嫌っているものであり、それゆえにUFOが装備する反物質砲の威力を以て禁止される。


メルキゼデク騎士団は地球外生命体との間に連携関係を結んでいる。そこでは何の妨げもなく、あらゆる知識が教示され、与えられている。最初の信奉者は、最初に救われる者ともなるであろう。それだけではない。そうした信奉者たちは、聖トマスがそうだったように「証拠」を与えられるだろう。そして彼らは空飛ぶ円盤で旅をすることだろう。いや、こうしたことは既に多くの人の身に起こっていることなのだ。



 ・・・スイマセンなんだかよくわかりません(笑)。
以下はオマケで、関連する図版とそのキャプション。

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フランスのメルキゼデク騎士団から著者に与えられた五芒星 [注:六芒星の誤りか] 。これは貨幣や宗教、戦争を廃絶する願いを込めたものである。このパリを拠点とする団体は、地球外生命体と常時接触を保っていると主張している。




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レース・ペティファー博士が用いたメルキゼデクの印章


【追記】
その後、ネットでググってみると、こういうようなサイトがヒットしたりする。オレが知らないだけで、マイナー系カルト的な組織は細々と活動を続けているのかもしれない。


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というわけで、「何がなんでも毎日ブログ記事を書いてみようチャレンジ」は――もうそろそろ力尽きて止めるとは思うがとりあえずは――なお継続中である。

で、本日はAbebooksに注文したUFO本が英国のWeBuyBooksっつー店から2冊届いたので紹介したいと思う。これらはいずれもちょっと前のエントリーで触れた怪しげなフォーティアン、ポール・デヴルー(Devereux, Paul)が書いた本なのだが、先のエントリーを書いた後になってなんだか気になって発作的にポチってしまったのである。ともにハードカバー。


Earth Lights: Towards an Understanding of the Unidentified Flying Objects Enigma(1982)

Earth Lights Revelation: UFOs and Mystery Lightform Phenomena - The Earth's Secret Energy Force(1989)

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例によって本の代金より送料のほうが高くついており、本自体は両方とも4.1ドルという値付けである。とりわけ左の「Earth Lights Revelation」のほうはどっかの図書館の払い下げ品でシミだらけでアルが、まぁ安いからエエやろゆうて注文したので文句はいえない。

むろん「買ったはいいが積ん読放置」状態になるのは目に見えているのだが、この人の「アース・ライト仮説」いうのはET仮説の害毒にすっかり侵されてしまった愚鈍な我が国のユーフォロジストさんたちからはガン無視されてきたフシがある。「アースライト UFO」とかいってググっても、本件に関わるものとしてはオレのブログ以外では桜井慎太郎『図解 UFO』がかろうじてヒットするぐらいである(デヴルーについて直接論及しているわけではない)。なので機会があればちゃんと読んで紹介などしたい・・・という気持ちがナイではないw。

なお、念のためググってみると、この人の本で邦訳されたものはあるにはあるらしい。

大地の記憶―古代遺跡の暗号を読む

ポール デヴェルー
青土社
1998-04



宇宙との交感 (図説 聖なる言葉叢書)

ジェフリー コーネリウス
河出書房新社
1999-03



だが、この辺まで当たってみようという気は流石に皆無(笑)。


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えーと、Twitterの代わりに毎日ブログに何かしら書いてみようということで、ココんとこイロイロ無理して書いている。が、ネタもいよいよ尽きてきたので、本日はジャック・ヴァレが2014年に『マゴニアへのパスポート』を再刊した際に付した序文を紹介するという趣向でいきたい。

とはいえ全部訳出したりすると著作権上の問題も出てこようから、今回はところどころ引用しつつ批評を加えていくかたちでいこう。

まず簡単な説明を加えておくと、ヴァレがこの本をはじめて世に送り出したのは1969年のことである。ひと言でいうと、「UFOというのは地球外からやってきた宇宙人の乗り物だ」というET仮説を否定し、この手の「空に出現する光る物体」だとか「あやしい小人」だとかいったものは大昔から妖精譚みたいなかたちで人々の間に語り伝えられてきたものであって、いわば人間がいつの世も目にしてきた超時代的な奇現象みたいなものと考えたほうがよいでしょうネ、と彼は主張したのである。

もともとUFO研究というのはET仮説が王道とされてきたから、彼はその時点で「異端児」になってしまった。ではあるんだが、その後、いくら待ってもUFO=宇宙船説の証拠なんぞ出てきやしない。いやいやいや、ギョーカイ的には彼はアウトサイダーかもしらんが、ヴァレの見方というのは実はけっこう鋭いンじゃネという人々も一部にはいて(たとえばオレw)彼はUFO研究者の中では一目置かれた存在になっているワケなのだった。

というワケで、今回紹介する2014年版というのは初版刊行から45年を経て旧版が絶版状態になっていたところに刊行されたモノであった。なのでこの新版の序文には「そういや、あれからいろいろあったよなぁ」的にヴァレがこの半世紀を回想するような趣がある。

冒頭はこんな風に始まる。


ゼネストや若者の反乱があった1968年5月のパリで執筆され、その翌年シカゴで刊行された『マゴニアへのパスポート』は、空飛ぶ円盤を信じる人たちと、彼らに懐疑的な立場をとって対立していた「合理主義者」たちとを糾合するという意図せざる効果をもたらした。両者はすぐさま一致団結し、即座にこの本を疑わしいシロモノだとして断ずる勢力を形作ったのである。彼らは、そのソースは不確かであるし、著者である私の論証もいいかげんなものだ、と言い募った。そこで紹介した目撃事例自体あまりに突拍子のないものだったせいか、UFO研究者の中には、ここで引用した事例は私が捏造したものではないかといって非難してくる人さえいた。


ここで言っているのはどういうことかというと、彼はこの著書を出したことで「エンバンなんて嘘っぱちなんだよ!」といっている合理主義者ばかりか、多くのUFO研究者をも敵に回してしまった、という話である。

何故かというと、多くのUFO研究者は1947年の有名なケネス・アーノルド事件以降、「いよいよ物理的な宇宙船としてエンバンが地球に出現しはじめた。これをちゃんと研究すりゃあ宇宙人の正体わかるゼ!」という風に考えてワクワクしていたのである。ところがヴァレは、「でもUFOなんてのは妖精譚とおんなじだから。なんかUFOを物理的な機械みたいに考えても違わくネ?」といって彼らに冷水を浴びせたのだった。


科学的研究への指向性をもつUFO研究者(その中には、少数ながら空軍やその他の機関で、名前こそ出せないものの枢要な地位にいた者もいた)にとってみると、空飛ぶ円盤の最初の目撃と原爆の誕生とが同時期にあったことは、UFOが地球外に起源をもっている可能性を補強するものだと思われた。科学はすでに、生命はこの宇宙のどこかに確実に存在していることを知っている。であれば、惑星間の宇宙旅行を成し遂げている或る文明が、地球での核爆発を探知し、その結果として警戒態勢を取り、地球を監視下に置くことを決めたのではないか? 「地球外生命体によるコンタクト」というイデオロギーは、1947年の「目撃ウエーブ」に続いて、1950年と52年にも、詳細な記録の残された一連の目撃事例が多数発生した(しかもその範囲は全世界に拡大していた)ことで、さらに力を増したようであった。

が、そうした現象を歴史的視点から解明しようという緻密な探究が行われるようになってみると、物事はそれほど簡単な話では済まなくなった。確かに現代における「空飛ぶ円盤」という呼称はアメリカの報道機関によって発明されたものなのだろうが、歴史をさかのぼれば、米国でも過去に同様のものは目撃されてきた。他とまじわらず、世の主流とは離れたところで研究に取り組んだニューヨークのチャールズ・フォートが発掘したところによれば、天文学者たちが奇妙なものを目撃して記録した事例は19世紀にまでさかのぼる。さらに、天体が不思議を示した話というのは、中世の記録者、さらにはローマ時代の歴史家の記録の中にも見て取れる。懐疑論者たちの色眼鏡やビリーバーたちの熱狂といったものに毒されず、虚心坦懐に事実をみることに徹する――それこそがなされるべきことだった。


研究者たちは「なるほど人類は原爆も発明してしまったし、宇宙人もコイツは要警戒ダ!とかいって突然来襲するようになったに違いない! これは大変だ!」とかいって盛り上がっていた。「いやー、ずっと前からたいして変化ないっスよ」とか言い出す人間は袋だたきにあって当然だろう。だから、当初この本の評判はあんまり良くなかった。


1969年に最初に刊行された際、本書の評判はよくなかった。そのハードカバー版は5000部も売れなかったのではないか。「地球外からの訪問」という現下流行の仮説(その定式化にあたっては、私自身がそれ以前の2冊の本で手を貸していたのだ)があまりに確固たるものになっていたために、現代の目撃と私が発掘してきた歴史的な素材とを関係づけようという試みは、反逆行為として憤激を買ってしまったのである。「ヴァレは我を失っておかしくなってしまった!」。ある名高いUFO界の人物はこう言った。特に過去一世紀にわたる未解明の着陸事例を900例以上まとめた補遺のパートは、異端扱いされた。

  • ちなみにここでヴァレが「それ以前の2冊の本」云々といってるのは、彼は「マゴニア」以前に出した2冊の本でET仮説寄りの主張をしていたことをさしている。

だが、捨てる神あれば拾う神あり。


『マゴニアへのパスポート』は、米国で無視され排斥された一方、ヨーロッパでは温かく迎えられた――ヨーロッパの読者というのは、或る文化のかたちを定位しようという際には、その歴史であるとか、フォークロアの重要性に大いに敬意を払うの人たちなのである。本書はすぐに英国で注目を集め、フランス語、スペイン語に訳され、ソ連では「地下出版物」に批評が掲載されたりもした。チャールズ・フォートをはじめとする、秘められた歴史の研究に取り組んだパイオニアを信奉する人たちは、私が記した事どもについてチェックをし、自らの発見をも付け加えてさらに議論を進めた。やがてペーパーバック版が刊行されたのだが、その頃までには読者の反応は好意的なものとなり、かつて批判を加えてきた者たちですらその立場を改めるようになったのだ。


歴史家によって記録された古代のストーリーと、UFOレポートという「現代のフォークロア」には関連がある――という本書の考え方に触発された研究者の間からは、目撃体験の本質とそのインパクトに関わる知をさらに深めていこうという、新たなる世代が登場してきた。もし空中に起こる現象は人類史を通じてずっと続いてきたことであって、しかもそこには現代のUFO搭乗員さながらに光る存在、空中に浮かぶ幽体めいたものと人間とのやりとりが伴っていたというなら、そこにはさらに大きな疑問が浮かんでくる。我々の文化・我々の信仰・我々の宗教に対して、こうしたイメージはどんな衝撃を及ぼすのか? それらは、我々がこの宇宙を理解する上で、どんな影響を及ぼし、刺激を与えてきたのか?


こう語るヴァレは、この半世紀で世界のユーフォロジーはようやく自らの思想に追いついてきたのだ、とでも言いたげである。

今日もなお、この問題の研究者で、UFO現象が1947年以前に報告されていたという考えを否定する人はいる。ある著名な作家は、古い事例が約200年前までさかのぼることは認めつつ、「それ以前にはなかった」と言い張った。何故なら「長い期間エイリアンがやってきていた」ということになると、アブダクションされて空を飛ぶ乗り物にのった人たちが語るような、「宇宙からの侵略は差し迫っている」という近年流行りの信仰を台無しにしてしまうから、というのだった。あるアブダクション説の主導者は、「明らかに出所の怪しげな」フォークロアを真面目に取り上げている者(つまり私のような人間ということだ)に悪罵を投げつけさえした。本書にはレファレンスを付している。だから読者諸兄は、我々の示したソースが説得力をもっているかどうか判断を下し、こうした批判に対してはご自分で意見を固めていっていただけば、と思っている。

そして彼は序文の最後を次のように締めくくる。なかなか格好いいシメであると思う。


本書に掲載した諸事件についての補遺は、従って、よくよく再吟味をする必要があろう。この間に現れた新たなる問いというのは実に幅広い領域にわたっており、だから私としては、読者諸兄にはインターネットに当たり、最新の「歴史的発見」を日々フォローされることをお勧めしたい。だがしかし、我々は少なくとも最初にあった問いには答えを出すことができた――実にUFO現象というものは、我々が文書でさかのぼって確認できた限りでは、ずっと我々とともにあったし、その現れは現代におけるそれととてもよく似たものだった。我々と「それ」とのかかわりの中で、UFOが一体何を意味しているか。それが我々にどんな影響を及ぼしているのか。それは、いまなお発見される日を待っている。








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ずっと前に「ジャック・ヴァレの本に出てくる怪しい研究者たち」(笑)を紹介するエントリーをこのブログでも何本か書いたのであったが、久々にそちら関係の話を。

ヴァレの本の中にチラチラ出てくる人物として、脳科学者のマイケル・パーシンガーと作家のポール・デヴルーという人たちがいる。この二人はだいたいセットで論じられているのだが、どうしてそういうことになるかというと、このお二人、そもそもUFO体験というのは地球の地殻関係から生じる電磁気が原因であって、それが発光現象を生じさせれば「UFO出現」ということになるし、それが脳に幻覚をもたらせば「アブダクションだ」ということになるわけヨ――みたいな議論を展開していた。お互い特段の関係はなかったようだが、この二人、期せずして似たような主張をしていたということであるらしい。

うーん、じゃあウチにある強力ネオジウム磁石をこめかみ辺りに押しつけると何か見えてくるんかい、などとついついツッコミを入れたくなるのであったが、そもそも「UFOは宇宙から来ているわけではない」説のジャック・ヴァレとしては、こういう議論も有力なオルタナティブとせざるを得ない。その意味では避けて通ることのできない人物ということになる。

だがしかし、「UFOイコール宇宙船」という思慮を欠く主張ばかりが大手を振ってまかり通ってきた日本であるからして、こういうマイナー系の人(?)はわが国のUFOシーンではほとんどガン無視状態だったようで、著作なんかも訳されていない――いや、もすこし正確に言うと、パーシンガーについていえば超心理学系ではそこそこ知られた論客だったハズなので本ぐらい出てて然るべき人ではあるのだが。

というわけでオレもお二人の言説は全く精査できていないのであるが、たまたま最近本棚の奥から引っ張り出したジェローム・クラークの『Unexplained!』(1999年の版であった)にこの二人をまとめて紹介している頁があった。2頁にも満たない記述ではあったが、ま、少しは勉強になった。このへんにかんして興味のあるかたも国内には5、6人はいるだろうから、以下、その骨子を訳出してみることにした。

いつも冷静なクラークだけに、相当にテキビシイことを書いております。特にデヴルー。「ちょっと何いってるかわかんない」状態でクラクラするが、それだけについつい彼の本をAmazonとかAbebooksで探したくなるオレがいる。

 
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Michael Persinger(1945-2018)=左=とPaul Devereux(1945-)


 アースライト仮説とテクトニクス・ストレス仮説

マイケル・パーシンガーとポール・デヴルーという二人の理論家は、地球物理学に基づいてアノマリー現象を説明しようという仮説をそれぞれ別個に編み出した。テクトニクス・ストレス仮説(略称TST)と呼ばれるパーシンガーの理論は、地殻内の歪み場が電磁電荷を生み出し、それがさらに光体を発生させたり幻覚を見せたりするというもので、その幻覚というのはエイリアンやその宇宙船、あるいは何らかの生物などといったポップカルチャーのイメージに源泉があるのだとする。この仮説の変種ともいうべきものが、デヴルーの「アースライト」概念である。

デブルーのアプローチがパーシンガーのそれと違っているのは、UFOの出現をもたらすモノとして、「圧電効果」ではなく「トリボルミネセンス」(注:鉱物の結晶などが摩擦することで光を生じる現象)をより有力な候補として挙げているところである。パーシンガーが、UFOのように見える光というのは地殻の運動があった場所から何百マイルも離れたところで観察されることがありうるとしているのに対し、デヴルーは一般論としてそのような効果が生じるのは断層線のすぐ近くに限られるとしている。

だが、総じてデヴルーの説というのは(パーシンガーに比較して)より過激な仮説となっている。彼の考えでは、アースライトというのは知性を有しており、目撃者の思考を「読み取る」ことができる可能性すらある。彼はこの仮想上のエネルギーについて「電磁気がよく知られていない形態で現れたもの・・・完全に未知の秩序に依ってたつもの・・・秘匿された力」などと語っており、そのエネルギーを社会に変革をもたらす「ニュー・エイジ」的なビジョンと関連づけている。デヴルーによれば、アースライトの研究には「人類社会の新たな時代をまるごと作り出すようなポテンシャルがある」「それは人類進化の上で重大な意義をもつもの、数多くの問題を前にした我々現代人を悩ませている(社会の)断片化を癒やす助けになってくれるかもしれないもの」だという。

パーシンガーの仮説は科学論文として刊行されたが、批判を浴びた。実証性という面ではその論拠は脆弱だったし、批判者たちは、パーシンガーは或る未解明のもの――すなわちUFOを別の未知のもので説明しようとしている、と言い立てた。彼らは、UFOや「モンスター」の目撃は地層の活動が活発でない場所で起きているとも主張した。クリス・ルトコフスキやグレッグ・ロングといった懐疑論者たちにしてみれば、TST効果やアースライトなどというものは、パーシンガーとデヴルーが示唆している途方もないモノを持ち出さずとも、球電、地震光、ウィルオウィスプ(注:鬼火の意)といった既知の自然現象として考えれば十分ということになる。

デヴルーのUFOを説明しようとする試みについて、ロングはこう記している。「<アースライト>についての様々な報告を注意深く研究してみれば、その光体のかたちは様々なものとして記録されている。そのことをデヴルーは理解していないのではないか。それだけではない。目撃報告によれば、そうした物体の形状は明らかに人工物だし、その動きは知性によってコントロールされたものであり、何らかの目的をもっているのは明らかだ。であれば、こうした物体をテクノロジーの産物である機械以外のものと考えることはできない。こうした事例で、エネルギーの塊だとかボールだとかの出現を示唆するものは全くない」。ルトコフスキはこう言っている。「光が一種の電磁気現象だという仮説を支持する状況証拠や観察結果もあることはあるが、そのようなエネルギーが本当に存在するのかどうかを実証的に判断するためには、さらなる研究が必要である」

パーシンガーは近年、UFOアブダクションの体験を「大脳側頭葉に電磁場が与えた影響が引き金となって生まれた幻覚」として説明しようと試みている。そこでパーシンガーが編み出した実験方法というのは、かぶった人間の大脳側頭葉に電磁波を浴びせることのできる「神のヘルメット」を用いたものである。たしかに多種多様な幻覚が生じた。しかしそれはパーシンガーの主張とは相反するもので、アブダクティーたちが報告したイメージと似たものはほとんど無かった。批判者たちはこう指摘している――被験者たちはアイソレーション・チェンバー(注:外部から隔絶された空間)に入れられたのだが、彼らの体験した幻覚というのは、これまで長いこと行われてきた感覚遮断実験で記録されてきた幻覚と良く似たものであった、と。言い換えれば、その幻覚というのはパーシンガーが考えた「ビジョンを生成する電磁気場」とは全く関係がなかった可能性がある。

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3月末から私家版『マゴニアへのパスポート』新装版を販売していたのであるが、いちおう通販予定数は全部売れてしまつた。ご購入いただいた方々におかれましては改めて感謝を申し上げます。

なお、以下は参考情報であるが、オレも寄稿などしている「UFO手帖」というUFO同人誌があるのだが、その版元「Spファイル友の会」が来る8月11日の夏コミに参加することになっておりまして、その場で最後に残った『マゴパス』10冊を限定販売(笑)いたします。

もう当面増刷する予定もないので、興味のある方は是非お買い求めください。場所は「西1 こ-20b」とのこと。 (追記)なお、夏コミで予定数完売いたしました。ありがとうございました。
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世界的ユーフォロジストであるジャック・ヴァレの著作『マゴニアへのパスポート』の私家版翻訳本はこれまでも断続的に販売をしてきましたが、カバーナシにして質感を落とした分、若干値段を下げた「新装版」を印刷しました。

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1冊1700円(送料込み・前払い)。A5判・392ページ。こちらに申し込みページを置いておきますので通販ご希望のかたはメールフォームにご記入のうえ、お申し込みください。

【2019/07/26記】
その後、予定数が全部売れてしまいました。現在は通販しておりませんので悪しからす。ただし来月11日の夏コミには若干出しますので、ご興味のある方はそちらで是非。

【2019/08/12記】
で、夏コミで予定数完売になりました。ありがとうございました。




参考までに「訳者解題」の部分だけ読めるページをネット上に作ってあるので、リンクを貼っておきますねー。だいたいの内容がわかります

*あと、以前印刷したものについて書評家の馬場秀和さんが書いた書評があるので、そこにも飛べるようにしておきますね

【補記】
なお或る方からご指摘頂いたのだが、リオン大司教アゴバルドが記録した「マゴニア」伝説のくだりで(私家版18頁)「corn」を「トウモロコシなどの産物」と訳しているのは明らかな誤訳です。ここは「穀物類」が正しいです。ごめんなさい(トウモロコシは9世紀には旧大陸にまだ到来しておりませんでした・・・)




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断続的に同人誌とか扱ってる印刷会社サンに頼んで刷ってもらい、通販などしてきた私家版「マゴニアへのパスポート」であるが、今度また若干作ってみることにした。

これまではいっちょ前にカバーつけたり帯つけたりしてきたのであるが、そういうのはナシにしてこれまでよりちょっと安くし、一冊1500円+送料ぐらいで頒布したい、的な構えである(それでも400頁近くあるので一冊売れてもたぶん200円ぐらいしか利益は出ない。決してそれほど強欲なわけではないw)

これまでたぶん100冊ちょっと刷って基本的に全部売れてしまったのであるが既に読みたい人にはあらかた行き渡ってしまったのではないか感が強い。

この辺からはやや冒険になっていくのであるが、例の「Spファイル友の会」の編集長さんに頼んで文フリとかに置いてもらうコトもできそうなので、とりあえず50部いってみたい。

3月末ぐらいまでには具体的なことをお知らせしたいと思っております。


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これは前々から再三書いているところであるが、世界的UFO研究家、ジャック・ヴァレの邦訳書は我が国では何故かほとんど刊行されていない。

その数少ない邦訳本のひとつが『人はなぜエイリアン神話を求めるのか』(1996年、徳間書店)であるわけだが、これがまた原著『Revelations』から「結論 Conclusion」と「補遺 Appendix」を端折ったヒドイ抄訳本である。そのあたりの話は以前このエントリーに書いた。



そのときには「補遺 Appendix」の内容を紹介させていただいたワケだが、今回はこの本の「結論 Conclusion」ではヴァレがどんなことを言っていたのかを書いてみたい。

欠陥だらけのこの邦訳書であるが、それでもずっと読んでいけばヴァレの問題意識というのはおおむねワカル。つまり、「米政府はひそかにエイリアンの円盤を回収している」などといった話を吹いて回る研究者は実は「騙されている」。そして、そんな連中を裏で操っているのはまさにその米政府ではないのか──。

さて、そうした議論を踏まえての「結論」となるわけであるが、ヴァレは冒頭、「米当局は既にエイリアンとコンタクトしている」といった主張を唱えてきたロバート・ラザーやビル・クーパーといった人物の信憑性が、今や見る影もなく失墜してしまっていることを指摘する。たとえばこんな風に。


ロバート・ラザーはさまざまな研究家にその身辺を徹底調査された。その結果、最初にジョン・リアが「最も信頼すべきソースだ」と彼を評していたことがウソかと思われるほどに、その信用は地に墜ちてしまった。それは単に彼が売春容疑で起訴された、というだけの話では済まなかった――彼は「スイカズラ農園」という売春宿の共同経営者でもあったのだ! 物理学者であり、ロス・アラモスの施設の技術顧問だという彼の立派な経歴は、これで雲散霧消してしまったのだ。


さて、そこで発せられるのは次のような問いだ。


もし解剖とか墜落した円盤だとかについてのウワサが全く事実無根だとしたら、そうした欺瞞を広めたのは誰なのか? そしてここで再び問いかけなければならないのだが、そのような欺瞞が最終的に目指しているゴールとはいったい何なのか?


このような問いに対し、ヴァレが「とりあえずの回答」として挙げているのは次のようなものである。

過去30年かそこら、CIAやNRO(アメリカ国家偵察局)、空軍といった米国政府の機関がUFO現象を研究しようという大がかりな試みを継続してきたものと仮定しよう。ただしそれは「この問題を解明しよう」という試みではなかった。何となれば、その解明というのはわれわれの科学をもってしてはなお不可能なものであるからだ。そうではなく、その試みというのはこの現象を他の何かを隠す隠れみのとして利用しようというものであった。

ではそこで「隠されているもの」とは何か。ヴァレの考えは明快である。彼は──個人的には如何なものかと思うのだが──米政府は「人間を眠り込ませてしまうような心的効果や敵国軍に身体の麻痺や幻覚をもたらす機器を搭載する」円盤を実際に作っており、そうした秘密兵器を隠蔽するためにUFOのウワサを利用しているのだ、という。

もしそのような乗り物がドリームランド(訳注:いわゆるエリア51の別称)で試験されているのだとしたら、その隠れみのとしてUFO現象以上に適当なものはあるだろうか? こうしたペテンを広めてやろうというのなら、その宣伝役として「地球外の生命体は今まさに地上に降り立とうとしている」と確信している筋金入りのビリーバーのグループ以上にふさわしい人たちはいるだろうか?



ここでヴァレはちょっと寄り道するかたちで有名な「ロズウェル事件」に触れ、ロズウェルは原子爆弾が置かれた最初期の空軍基地であり、そこでトップシークレットに属する極秘プロジェクトがバルーンなどを用いて行われていた可能性は非常に高い、という。

本物の破片から目をそらすために卵型をした機材を砂漠に置いてきたり、死んだエイリアンに擬した小さな人形を数体ばらまいてくるというのは、決して難しい仕事ではない。

彼はこんなことまで言っており、それは流石にどうかと思わんでもないが、つまりここでも「空飛ぶ円盤」を持ち出すことで米軍は極秘実験をカモフラージュしたのだろう、というのがヴァレの見立てだ。

しかしながらユーフォロジーの世界では、「米政府とエイリアンの結託」といったストーリーが強く信じられてきた。これを批判し続けてきた結果、ヴァレがどんな目に遭ったかというと、「奇妙な教条を掲げたUFO界の偉そうなリーダーたちは、私をET信奉者たちのこざっぱりしたガーデン・パーティーに闖入した悪名高きスカンクのように扱いはじめた」のだそうだ!

こうした経緯もあるのだろう、ここでヴァレは、政府当局もなかなか悪辣だが、そんな怪しげな話にすぐさま飛びついちまうUFO研究家たちのほうにも問題大アリだろうよ、とばかりに批判を加えている。彼らはいちいち情報の裏を取るようなことはしない。


近年のUFOコミュニティでは、ひとかどの人物と認められるかどうかは、ひとえにいわゆる「機密情報」にアクセスできるかどうかにかかっている。いかなるユーフォロジストも、ネタを出してくれる魅惑的で秘密に包まれたニュースソースから関係を打ち切られることを恐れるあまり、そのような素材にあえて疑問を呈するようなことはしなくなってしまったのだ。


次いでヴァレは異星人の来訪を唱える人々とアメリカの極右勢力との間の連関を指摘しており、そこにも当局の何らかの関わりがあることを示唆しているが、ま、これはあまり深掘りされてはいない。


さて、この「結論」の最終部に至って、ヴァレはこう主張する。


この分野に正気を取り戻すためにまずわれわれが始めるべきことは、検証可能な「事実」に立脚すること、である。


「われわれは今まさに外宇宙で新たなる敵と遭遇せんとしている」という考えは、底知れない力を秘めている。そして、一見したところ不可思議にみえる数多くのものごとは、そうした力を求める人類の欲望が生み出したものだということで説明がつく。「9機の空飛ぶ円盤がラスベガスの近くにある格納庫に収められている」「ニューメキシコ州には人肉をむさぼる、灰色をした醜くて小さいヒューマノイドでいっぱいの町がある」――声高に語られるそのような主張には、確かにわれわれの文化の中にあって、いかにも人々を惹きつけそうな新しいタイプの暴露話といったおもむきがある。

だから、もしあなたが人々にそんな話を十二分に信じさせることができたのなら、彼らはあなたが語るほかのこともすべて信じ込むだろうし、あなたが行くところにはどこでもついてくるようになるだろう。そしておそらくは、そういったものを丸ごと信じ込んでしまえるかどうかが、いわゆる「意外な新事実」(それは一部の善意に満ちた「欺瞞の使者」たちが、騙されやすい大衆に向けて気前よく披露してくれているものであるわけだが)に到達できるかどうかのカギを握ることになるのだろう。

かくてそのような欺瞞に満ちたストーリーの真実は、カッシルダの歌のように「涙が流されぬまま涸れるように/歌われることなく消えていく」ことになるのだろう(訳注:ロバート・W・チェイムバーズ著/大瀧啓裕訳『黄衣の王』参照のこと)。そして、新たに出現したエイリアンのリーダーたちと会うことを待望しているようなお気楽で騒々しい群衆たちの耳に、そうした真実が届くことは決してないのだ。



如何だろうか。「米軍が円盤状の飛行体だとか電磁波等を利用した秘密兵器を開発済みである」といった主張はちょっと違うンでないかと思うのだが、少なくとも米軍はいわゆるUFO現象の実態など全くつかんでおらず、ただそうしたウワサは「使える」から、荒唐無稽なネタをアタマの軽い研究者にリークしているんではないか、という基本的な読みは今もなお有効なんじゃないか。

まぁこういう議論は日本のユーフォロジーではなかなかウケなかったのだろうが重要な指摘であったことは間違いなく、何度も言うけれどもこういう「結論」部をカットして出版したのは、徳間書店、やはり大失態であったと思う──すでに世間がUFOなどというものに背を向けている今となってはそんなことをいっても死んだ子の歳を数えるようなものであるのだが。

とまれ、『人はなぜエイリアン神話を求めるのか』を読んでいて最後が唐突にブツっと終わっていることに疑念を抱かれた方には少しはお役に立てたのではないかと思う。そんな人がこの日本にどれだけいるのかは知らんが(笑)








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先ごろ、某UFO現象学者の方がネットに書いておられる連載コラムを興味深く読んだ。

オレが理解する限りその論旨というのは、「米当局はブルーブックとは別に早くから秘密の組織を作ってUFOの調査・研究を進めてきた。その辺のことは、米空軍の活動にUFO問題の顧問として関わってきたアレン・ハイネックもソコソコ感づいていたフシがある」というものである。

で、コラムでは、その辺の傍証としてジャック・ヴァレの著書『禁じられた科学 Forbidden Science』の記述が引かれている(ちなみにこの本はヴァレの日記を刊行したもので、いってみればUFOにかかわるヴァレの活動日記である)。

もちろんジャック・ヴァレ自身がこういう陰謀論を主張しているのでそれはそれで筋が通っているのであるが、念の為、この研究者の方がコラムの中で引用している同書の「1967年7月12日(水)」の項を読んでみた。で、その結果、オレとしては「ハイネックが米当局の二枚舌を十分知っていながらスルーしてきた」という読み方は、流石にちょっと言い過ぎではないかなーと思った。

で、せっかくなのでそのあたりの概略を以下に訳出してみたい。ちなみにこれはヴァレの日記なので、一人称で語っているのは当然ヴァレということになる。例によって適当訳であり、誤訳があるかもわかりませんので、その辺はあらかじめお詫びしておきますネ  m(_ _)m

*念の為に言っておくと、このくだりは「ヴァレが自らの陰謀論の証拠だと考えている「ペンタクル・メモ」を「発見」した直後、その辺の背景についてハイネックからなんとか言質を取ろうーーという狙いでサシでかわしたやりとり」という体になっておる(ペンタクル・メモに関しては過去のエントリーを参照いただきたい)


ハイネックは、どんどん前に進んでいきたいという君の熱意は理解できる、と言った。

「空軍と一緒にやってきた年月について、私はもっと疑問をもつべきだったのかもしれないね」。彼はそう語った。

「プロジェクトの全体像をみていくと、ロバートソン査問会のあった頃にターニングポイントがあったんじゃないか。僕はそんな風に思っているんですよ」。私はペンタクルの書簡には触れずに、こう言ってみた。

「君は正しいのかもしれない、ジャック。君は力ずくで私の目をさまそう、さまそうとしてくるね」

「昔のことをもう一回振り返ってみようではありませんか」

「うむ。UFOが最初に姿を現した頃、空軍はまだ存在していなかったよね。フォレスタルは最初のプロジェクトを始動させた。今では単純明快に<プロジェクト・ソーサー>と呼ばれているヤツだ。そのあと、1947年9月に<プロジェクト・サイン>ができた。彼らが民間の科学者たちの助力が必要だということに気づくと、今度はバテルの責任の下で<プロジェクト・ストーク>が立ち上げられた。私はそこに顧問として参画したわけだ」

「あなたはコロンバスにある彼らの施設を訪ねたことがありますか?」

「時々はね」

「ロバートソン査問会が開かれた頃に連中がどんなことをしていたか、あなたはチェックしていましたか?」

「その時期には出入りしていなかったんだ。正直言うと、連中はスパイ小説もかくやという調子で仕事を進めていて、なんて下らないんだと思っていた。私は大間違いを犯していたのかもしれないが」

彼は続けた。「で、ロバートソン査問会は<プロジェクト・ストーク>を廃止に追いやった。バテル記念研究所は1953年の末、かの有名な<レポートNo.14>を仕上げたわけだが、それがプロジェクト・ブルーブックによって公開されたのも1955年になってからだった。軍のプロジェクトは、その時点では<ホワイト・ストーク>と呼ばれていた。フレンド中佐の下で、ブルーブックが対外技術局 Foreign Technology Division のケツもちをするようになったのは、ずっと後のことだ。その2年後になると、僕が顧問を務めているプロジェクトは<ゴールデン・イーグル>になって、契約相手はマグロウヒルに移ったというわけさ」

「<ゴールデン・イーグル>の枠組みの中で、プロジェクト・ブルーブックのために働いている科学者は他に何人いるのですか?」

ハイネックはその問いに驚いたようだった。

「知っている限り、僕ひとりしかいないよ。他にいるのはプラズマや推進機関、航空学といった分野に関する民間の専門家で、彼らは対外技術局が集めて来た資料――主にロシアの航空宇宙テクノロジーについてのデータなんだが――を分析しているんだ」

「では、こんな質問をさせてもらえますか。仮に秘密の研究がブルーブックとは別のところで為されていたことを我々が見つけたとしましょう。我々はそれを公にすべきなのでしょうか?」

「当たり前じゃないか。そんなことが行われていたとしたら、科学に対して、そして憲法が尊重してきた様々なものに対して、紛れもない犯罪が行われたも同然だろう」

「でも、科学者たちには真実を知る権利がある、などと言えるでしょうか? 例えば、ロバートソン査問会に対して [ UFOの存在についての ] 証拠がいかほどか伏せられていたという事実が判明し、私たちがそのことについて裏づけを得たとしましょう。その場合、こうした事実は科学者たちや大衆に告げられるべきなのでしょうか?」

「当然、我々は彼らに知らせるべきだろうね」

「僕は、彼らには知る権利がある、とは言い切れないと思うのです。コンドンのような人物の教条的な態度を見て下さいよ・・・」

   (以下略)


この辺の問題に詳しくない方だと「コンドンって誰よ?」「ロバートソン査問会?」「フォレスタルって?」などといろいろ疑問が兆すとは思うが、ここではその辺の説明は一切省略させていただく(笑)。

で、原著では以下、「科学者っていっても実際は偏見まみれで、ちゃんとUFO問題について考えてねーじゃん」というヴァレの主張が展開されていく。ちょっと論点がズレていくということなのだろう、このコラムでもここから後の議論については触れられていない。

さて、こういう記述を虚心坦懐に読むと、ハイネックが「国民に知らせず、いわば二重帳簿的に極秘のUFO研究をやってたらとしたら、そりゃマズイよなー」と考えていたであろうことがわかる。ただ、「実際やってたんでしょ?」といって詰め寄るヴァレに対して、ハイネックは「いやしかし、オレはそんな証拠もってねーからさー。ひょっとしたら何かコッソリやってたのかもしれねえけどさー」といって困惑している風がある。

しかし、コラムを読んでみると、「すべてを知っていたハイネックが痛い所を突かれて狼狽している」みたいな話になっている。つまりハイネックが逆ギレしてヴァレに食ってかかった、みたいな解釈がなされている。いやーそれはどうなんでしょうかとオレなんかは思う。ハイネックはあくまでも「ヴァレの言い分はわかるが、オレには確定的なことはいえない」って言ってんのじゃないのか。

ま、翻訳家としても知られる方の御説に楯突くようでナンだが、この辺のことに興味がある好事家方のためにいちおうオレの考えを提示しておくことにしました。



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ヴァレの『コンフロンテーションズ』といえば、この本にはUFO関連の奇っ怪な事件が幾つも出てくるのだが、今回はその中でも「鉄の三角形事件」というのを紹介してみたい。

これは朝鮮戦争当時、米陸軍の部隊がUFOの光線で攻撃されたとされる事件で、起きた日時はいまひとつよく分からんが、1951年の春であったと言われている。場所は鉄原郡(チョルウォン郡)で、南北朝鮮でちょうど分断された地域であるようだ。さぞや激戦地であったのだろう。

で、ひとつ言っておかねばならんのだが、「鉄の三角形事件」というのは、オレが勝手にそう命名しただけであり、よそでそんな呼び方をすると恥をかくので注意されたい(笑)。ちなみにこれは「鉄の三角型のUFOが飛んでいた」というのではなく、単に戦争中に『鉄の三角形地帯  the Iron Triangle』と呼ばれていた場所で起きたというだけの話で、なんかカッコイイから「鉄の三角形事件」と言ってみただけの話である。


閑話休題。この事件の一義的なソースとされるのは、朝鮮戦争当時、米陸軍の上等兵だったフランシス・P・ウォール氏が米国のUFO研究団体CUFOS(ハイネックUFO研究センター)所属のジョン・ティンマーマン氏に語った証言であるらしい。なので、以下にその内容をご紹介するとしよう。形としては、ウォール氏がティンマーマン氏に向けて話す、という体裁になっている(インタビュー自体は1987年1月に行われた)。

ちなみに、そのオリジナルの記事は「Korean War Battlefield UFO Encounter」というタイトルで、米国にかつて存在した研究団体NICAPの資料をまとめたとおぼしきサイトの中で公開されている。何でCUFOSの研究がそんなところに載っているのは知らん。あと、これがHOAXである可能性なんかも、全然調べていないのでわかりません。




これからあなたに話すことはすべて真実であると、神に誓います。それは1951年の早春に韓国で起きたのです。私たちは第25師団第27連隊第2大隊の「イージー」中隊所属でありました。われわれはチョルウォン近くの、軍事マップで『鉄の三角形地帯』と呼び習わされていたところにいたのでした。

夜のことでした。われわれは山の斜面にいて、眼下には韓国人の村がありました。われわれは事前にこの村に人を派遣し、ここを砲撃する予定であると村人に通告しておりました。そしてこの砲撃を予定していたのが、その晩であったのです。われわれはその時を待っておりました。

そこで突然、われわれの右手の方に、ジャック・オ・ランタン(注:ハロウィンに用いるカボチャちょうちん )のようにみえるものが、山を越えてフワフワとやってくるのが見えたのです。最初、われわれは呆気にとられておりました。それでわれわれは、ただ、この物体が村の方に降下していくのを見ていたわけですが、ちょうどそのとき、砲撃による爆発が始まったのでした。最初、その物体はオレンジ色をしていました。われわれはなおも物体を目で追っていたのですが、それは実に素早く、砲弾が空中で爆発するそのド真ん中のあたりまで移動しました。でもダメージを受けた様子は全然ないんです。

時間的にはどれぐらいだったかというと、そうですね、えーと、都合45分から1時間といったところだったでしょうか。

ところがやがて、この物体はわれわれのほうに近づいてきたのです。ライトの色も青緑色に変わりました。大きさがどれぐらいだったかは、ちょっとわかりません。周りにに比較できるものがなかったものですから。その光は脈を打っているように見えました。この物体は、そうやって近づいてきた。

私は、中隊の指揮官をしていたエヴァンス中佐に許可をもらって、この物体に向けて発砲したのです。M1ライフルで、撃ったのは徹甲銃弾です。当たりました。物体は金属製だったはずです。なぜかといえば、飛んでいった弾がぶち当たる音がしましたから。

さて、砲弾の爆発でも何ともなかったこの乗り物に、銃弾だと効果があったというのは何故なのか? それがよくわからないのです。連中は周囲の張り巡らしていた防弾バリアを下ろしていなかったとか、そういうことだったのかもしれませんが。しかし、これでその物体はいきり立った。ライトがついたり消えたりするようになりました。一瞬、ライトが完全に消えたのも見ています。予測しがたい動きをみせながらあちこちに飛び回って、地面に衝突するかと思いました。そして、音がした――それまでは何の音も立てていなかったのです。その音はディーゼル機関車がエンジンの回転を上げていく時の音のようでありました。この物体が立てる音は、そんな感じであったわけです。

そのとき、われわれは攻撃を受けたのです。パルス状に発射された光線みたいなものが、われわれの上をサーッと撫でていった。直接光が当たったときにだけ見える光なのですが、それが波状攻撃のようにしてやってきた。言ってみれば、サーチライトで辺りが照らされて行くみたいな感じで……自分のところにくると見えるわけです。それで、焼かれるようなチクチク痛むような感覚が体じゅうに広がるのです。何かが体を貫いてるみたいにして。

そこで中隊の司令官のエヴァンス中佐は、われわれを壕の中に引っ張り込んだ。何が起こるのか、見当もつきませんでした。われわれは恐怖にかられていました。地中の塹壕には、敵を撃つための覗き穴のようなものがついている。それで、私はもう一人の男と塹壕にいたわけですが、そこから例の物体をのぞきみていたのです。それはしばらくわれわれの頭上に滞空していて、ライトであたりを照らしていました。それからその物体が45度の急角度で飛び上がっていくのを見ました。素早くて、そこにいたと思ったら、もういない、みたいな感じで。あれは素早かった。で、これですべてが終わったのかと思ったのです。

ところが、3日後になって、中隊の全員が救急車で運ばれる羽目になりました。道路に沿って進むこともならず、体を引きずるようにして歩かねばならなかった。みな歩けないほど衰弱していました。赤痢を患っていたのです。それから引き続き医師は診察をしたわけですが、みんな白血球の数が以上に多くなっていて、医師もどういうことなのか説明ができませんでした。

軍隊というところでは、まぁとりわけ陸軍ではそうなのですが、兵士は毎日、中隊に報告書を提出することになっております。われわれはそこにお気楽な調子でいろいろ書いたものです。さて、ではこの話は報告書に書くべきかどうか? 誰しも「ノー」と答えるでしょうね。だってそんなことをしたら連中はわれわれを一人残さず捕まえて、全員気違い扱いするでしょうからね。当時はUFOとかそういうものについては聞いたこともなかったし、それが何かなんてこともわれわれは知らなかったのです。

あれが何だったか、今もわかりません。でも確かに言えることがあって、というのは、あれ以来、私は方向感覚がおかしくなったり、記憶がなくなってしまう時があるのです。それに、国に帰ってから、180パウンドあった体重が138パウンドに減ってしまいました。あれから体重が減らないように保つのにずいぶん苦労してきました。実際のところ私は仕事も辞めてしまって、今では身体障害者の身なのです。



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ということで、前回は前置きだけで終わってしまったので、今回はロバート・シェーファーのペンタクル・メモ批判をご紹介しよう。

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 Robert Sheaffer

「Bad UFOs」というのが彼のサイトだが、記事は2012年2月18日付けで、タイトルは「ジャック・ヴァレ、J・アレン・ハイネック、そして"ペンタクル・メモランダム"」とある。例によって翻訳が適当なので誤訳があったらごめんなさいだが、以下がシェーファーの主張である。(色付き文字の部分は「ペンタクル・メモ」本文からの引用)


『禁じられた科学 第1巻』として刊行されている、ジャック・ヴァレの1957年から69年にかけての日記を読み終えた。そこで語られているのは、幼少期を過ごしたフランス時代から始まる彼の人生であり、どんな教育を受け、どんな仕事をし、そして彼がUFO事件にいかにして興味を募らせてきたか、といった話である。本書は高い教養に裏打ちされたものであり、とても個人的なことを記してもいるが、時には詩的ですらある。とても良い本だ。

本書で新たに提起された問題のうちで最も重要なものは何かといえば、それはいわゆる「ペンタクル・メモ」の問題であろう。1967年6月、ハイネックが休暇でカナダに行っている間、ヴァレは空いたハイネックの家に行って(もちろん許可を得た上でのことだ)、ハイネックが手つかずのまま放置していたUFO関連文書を整理することになった。

そこでタイプで打たれた二頁のメモ文書を見つけた彼は、これを非常に重要なものだと信ずるに至った。1953年1月9日の日付があり、そこには赤いインクで「シークレット―セキュリティ文書」というスタンプが押されていた。執筆者の身元を秘匿するため、ヴァレはこれを「ペンタクル・メモ」と呼ぶことにしたのだが、その書き手である「ペンタクル」は、のちにH・C・クロスだと判明した――バテル記念研究所に所属し、空軍のブルー・ブックとの間で連絡係を務めていた人物である。そのメモが発見される経緯、メモについてのヴァレの主張、そしてメモの本文についてまとめた良記事を、ここで読むことができる


ふむ。まずは褒めてから入るというのは紳士である。当ブログで前回説明した話などもここで出てくる。ここから本題に入る。


1、ヴァレ、長期間秘密裏に行われていたUFO研究プログラムを見つける

そのメモはこう始まる。

この書簡は、ATICに対し、未確認の空中現象という問題を今後扱う際の方法論について事前に勧告するものである。この勧告は、我々がこの問題について数千件のレポートを分析してきた経験に基づくものである。

ATICとは、すなわち空軍の航空技術情報センターのことであった。ヴァレはこう記している。「この冒頭のパラグラフは、明らかに次のような事実を示している。つまり、1953年の [CIAによる] ロバートソン・パネルのハイレベル会合に先立ち、何者かが合衆国政府のために、実際に数千件のUFO事件を分析していた――ということである。」(ヴァレ。同書284頁)。この文書は、ブルー・ブックとは違う米政府のどこかの部局で、大がかりな秘密のUFO調査プログラムが存在していたことを示唆する、というわけだ。

ヴァレはそのあとすぐに「ペンタクルは実際にバテル [記念研究所] で働いていたことに間違いはない」(ヴァレ。同書294頁)ということを突き止め、この筋書きを裏打ちする。息が止まりそうだ――1953年1月、バッテルには「何千件」ものUFOレポートを米政府のため分析していた何者かがいた、ということなのか? しかもこれは秘密のプログラムであった、というのか?

いやいやヴァレさん、待ってくれ。バテル記念研究所は1952年3月、プロジェクト・ブルーブックのために「スペシャルレポートNo.14」作成にかかわる仕事を始めていた。これはブルーブックにファイルされていたUFOレポートの統計分析で、当時の最新式コンピュータとパンチカードとを用いた最初期のものだった。この報告書は1954年に完成し、刊行された。その「スペシャルレポートNo.14」はユーフォロジストにはよく知られたものだ。実際、スタントン・フリードマンなどは、これについてしゃべりだしたらとまらない。

当然ながら、1953年1月のバテルで、米政府のために「何千もの」UFOレポートを分析していた人物は存在した。彼らはブルーブックの「スペシャルレポートNo.14」のために仕事をし、翌年、その仕事を終えたのだ。

おめでとう、ジャック! あなたはブルーブックの「スペシャルレポートNo.14」を執筆するチームが存在したという紛れもない証拠を見つけたのだ! そのレポートの存在が疑われたことなど一度もない。そこのところはスタントン・フリードマンに聞けばよい。


これは論点の一つで、「ブルーブック以外に人知れずUFO研究をしていた組織があった」と聞けば「政府の陰謀!」という言葉が反射的に出てきてしまいがちだが、「データの統計分析を外注した」ということであれば、ま、そういうこともあるでしょうなあという感じである。

なお、念のために言っておくと、文中のATIC(Air Force's Air Technical Intelligence Center 空軍航空技術情報センター)というのは、UFO調査機関たるブルーブックが所属していた上部組織である。


2、ヴァレ、CIAのロバートソン・パネルを操る黒幕を明らかにする


ペンタクル・メモの中でも、以下のくだりは最も論議を呼ぶ部分のひとつであろう。

[CIAのロバートソン・] パネルの会合が既に日程に上がっている以上、ワシントンで1月14-16日に行われるその会合では、我々のATICに対する事前勧告に関連して「論じられても良いこと・良くないこと」につき、プロジェクト・ストークとATICの間での合意を得ておくべきだと考える。

ハイネックによれば、ホワイトストークというのは、ブルーブック・プロジェクトも包含するものとしてかつて使われていた空軍のプロジェクト名だった。然るにヴァレは、プロジェクト・ストークは、近々開かれるロバートソン・パネルをつんぼ桟敷に置き、パネルが知ってもよい範囲を決めてしまうものだったと示唆している。

ヴァレは、そのメモは「パネルが論じて良いことと、悪いこと(つまりパネルから遠ざけておくべきこと)についてのカギの部分」について指図をしているように見える、とも書いている。「証拠を事前にセレクトすることで、科学者たちが到達するであろう結論は想定の範囲内に収まってしまうのだ」と。

が、ヴァレはそのセンテンスをより注意深く読むべきだった。それはUFOの目撃であるとか証拠について言っているわけではない。彼はそのセンテンスを、あたかも「ワシントンで1月14-16日に行われるその会合では、『論じられても良いこと・良くないこと』につき、プロジェクト・ストークとATICの間での合意を得ておくべきだと考える」とのみ書かれているように解釈している。

だが、そのセンテンスには続きがある。「我々のATICに対する事前勧告に関連して」というくだりである。換言すれば、「ロバートソン・パネルの議論に於いてどういう問題が聖域であるかを決めよう」というのではなく、「バッテルとATICの関わっている計画についてパネルに何を告げるべきかを決めよう」と言っているわけだ。

平易な英語でいえば、「我々がATICに提案していることについて、ロバートソン・パネルにはどれぐらい話すべきなんだろう?」という話である。英語がヴァレの母語でないことは知っているけれども、彼は英語を完璧にマスターしているだけに、彼がこのセンテンスを誤読していることには驚きを禁じ得ない。


これが次なる論点である。バテルはUFO問題について「こういう話はオープンにできるが、これはダメだ」などと差し出がましいことを主張しているわけではなく、「私たちが空軍にいろいろアドバイスしてることを査問会に一から十まで明かす必要はないでしょう」と言っている――シェーファーはそう指摘する。

ここで勢い余って、ヴァレに対し「あんた誤読してるよねー」などと英語力を云々するのはいささか勇み足のような気もするが、ま、西洋のディベートというのはこういうことも平気で言うものなのだろう(知らんけどw)。


3、ヴァレ、UFOについて大掛かりな欺瞞プロジェクトがこっそり行われている証拠をつかむ

UFO問題にかんして大衆を騙す狙いから、大掛かりで憂うべきプロジェクトが軍部の支援の下に行われている――ヴァレは、その証拠を以下のくだりから読み取っている。

我々は、一つないしは二つの地域を次のような「実験エリア」として設定することを推奨する。このエリアには、視認により空中を漏れなく監視する体制のほか、レーダーや写真撮影の設備はもちろん、該当地域の上空におけるすべての出来事について信頼すべきデータを収集するために有効ないしは必要なあらゆる機材が完備されるべきである。その観察が行われている間は、気象についての完璧な記録も取られねばならない。

そのカバー範囲においては空中のあらゆる物体が追跡され、その高度・速度・大きさ・形状・色・出現日時といった情報が記録されるよう完璧を期さねばならない。テストエリアにおいて気球を飛ばすことやその飛行経路、航空機の飛行、ロケットの発射といった情報は、その実験の所管者に通知されねばならない。エリア内の空中におけるありとあらゆる活動は、密かに統制下に置かれねばならない。[ここはちょっと意訳]

これについてヴァレはこう書いている。「ペンタクル・メモの要請は、ここまで論及してきたものにとどまらない。それは『エリア内の空中におけるありとあらゆる活動は、密かに統制下に置かれねばならない』とまで述べているのだ。これ以上、ハッキリした言葉はあるまい。これは、単に観察ステーションとカメラを整備しようといった話ではない。軍のコントロールの下、大掛かりに、かつ隠密裏にUFOの目撃ウエーブを起こす模擬実験を起こそうという話なのだ」

が、ペンタクル・メモが要請しているのは、次のようなことだと思われる。――人々がものすごい数のUFO報告を上げてきている地域を、まずは特定してみよう。その地域の上空に出入りしているすべてのものを認識できるよう、広範囲をカバーするモニターシステムを設置しよう。それから条件をコントロールした実験に取り掛かることにしよう。気球や、あるいは見慣れない飛行機だとかを見るよう人々に仕向けて、その地域から上がってくるUFO報告をモニターするとしよう。すると、「刺激」として与えた既知のものが、いかにして未知の物体として報告されてくるのかが分かり、それによって、受け取ったUFO報告というものについて我々はより深く理解できるようになるだろう。

これは、科学の視点からすれば素晴らしいアイデアという風にもみえるが、法的ないしは倫理的な観点からすれば規制されるべきものかもしれない。相当のお金がかかるようにも思われるし、秘密を保つのも用意ではなかろうから、結果として目的は達せられないかもしれない。

興味深いことだが、この種の実験がたまたま行われた(つまり意図せずして、ということである)事例がいくつかあり、その結果として、1970年代にハイネックの [活動に携わった] 主な調査員の一人だったアラン・ヘンドリーは、目撃報告というものにますます懐疑的になってしまった。著書『UFOハンドブック』に詳しいが、ヘンドリーは、正体のわかっている「刺激」(広告飛行機、気球など)に起因した目撃報告を調査したところ、その多くがあまりにひどい錯誤にまみれていたため、彼はそのような報告を額面通りに受け取ることを注意を促すにいたった。

ヘンドリーは、他のユーフォロジストに対しておそろしく失礼な態度をとった点で罪があるように見えたから(彼は説明不能なUFO報告もあると信じてはいるのだが)、彼らから避難を浴びるようになった。案の定、ひどい目にあったヘンドリーは、約30年前にユーフォロジーから足を洗ってしまい、以来、そのことを議論するのを拒否している。

これは『禁じられた科学』にしばしば出てくるテーマであるのだが、ヴァレは同書で、米国やフランスにおいて、政府や科学界にみられる硬直した官僚主義について再々論じている。彼は、変化を受け入れることに後ろ向きな官僚主義によって明らかに優れた提案が退けられ、無視すらされてしまった事例をこれでもかと上げている。

驚くべきは、よりによってそんなヴァレが、ここでは「申し入れ」と「プロジェクト」を混同してしまっているように見える点だ。彼がしかと認識しなければならないのは、ペンタクルが大がかりで新しいUFO探求プロジェクトを提案したからという理由だけで、空軍の硬直した官僚によってそうした申し入れが実際に実行に移された可能性は、誰がみてもごくわずかだった、ということだ。

このくだりは、いかなる意味においても、UFO [目撃] の刺激となるものを差し出すような「コントロールされた実験」が実行に移された、ということを意味してはいない。


もう一つの論点は、「当局は人為的にUFO騒動を起こす実験を試みたかどうか」である。
ここでシェーファーが持ち出す論法は、「あんただって米当局が官僚的でちゃんとした仕事しないことはぼやいてたでしょ、なんでこんな提案に限って実行に移したなんて言えるのよ」というもので、なかなかディベート術としては勉強になる(笑)。

ということで、ここからあとは「あんた科学者なのに薔薇十字団に関心もってどうすんのよ」的なことが延々書かれており、直接「ペンタクル・メモ」には関係ないことを言っているので、今回は触れない。興味のある方は直接あたっていただきたい。(おわり)




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たまにはUFOネタを書いてみよう。

ジャック・ヴァレには自らの歩みを記した日記を本にした『禁じられた科学 Forbidden Science』というシリーズがあって、これまでに3巻が出ているんだが、その第1巻が1992年に出たとき、ちょっとした議論を呼んだエピソードがある(と聞いている。リアルタイムでフォローしてたわけではないけどw)。

それは何かというと、いわゆる「ペンタクル・メモ」のエピソードである。

ヴァレは、「米政府はUFO問題への取り組みをすべて公開しているわけではなく、これまで陰でいろいろやってきた」という、いわゆる陰謀論を唱えていることでも有名だ。

もっとも「米政府は墜落した円盤を秘匿している」とか「宇宙人とコンタクトしている」といった話は否定しており、つまり彼は「米政府はUFOを隠れ蓑に秘密兵器を開発している」といったレベルの陰謀を考えているようである。

閑話休題。問題の「ペンタクル・メモ」であるが、これはヴァレが自らの陰謀論を支える証拠として持ち出してきた文書であって、先の『禁じられた科学』でこの話をはじめて明かした。それがけっこう話題になったらしく、いろいろと物議を醸してきたらしい。

以下、この文書について簡単に説明しよう。

話は1967年にさかのぼる。ヴァレはこの年、UFO研究の盟友ともいえるアレン・ハイネックに散らかったUFO資料の整理を頼まれたらしく、旅行中のハイネックの家に入り込む。ちなみにハイネックは米空軍のブロジェクト・ブルーブックなどという調査機関の顧問をやっていたから、その手の資料がもろもろあったということなのだろう。

そこで見つけたのが「ペンタクル・メモ」であって、要するに手紙である。日付は1953年1月9日。全2ページで、送り主はバテル記念研究所のH・C・クロス、宛先はライトパターソン空軍基地のマイルズ・E・コルという軍人である。ブルーブックの責任者であるエドワード・ルッペルト大尉にも回覧するよう書いてあって、要するに米空軍のUFO問題担当部局と、業務委託の関係にあった外部の研究機関との間の打ち合わせ文書ということになろう。

で、ちょうどこの月の中旬、CIAがスポンサーとなって、「UFOは国防上の脅威なのか」「UFO研究に科学的価値はあるか」といった問題を科学者たちから聴取する査問会がワシントンで行われることになっていた。いわゆるロバートソン・パネル(ロバートソン査問会)である。

結果的には「別に脅威だとは言えんし、科学研究してもイイことあるかわからん」といった話になって、「UFO研究に意味ナシ」という烙印を押した会合としてUFOファンの間では悪名が高いのだが、それはともかく、ペンタクル・メモには「ロバートソン・パネルに持ち出していい話・持ち出したら悪い話について打ち合わせしましょうや」みたいに読める部分があった。

そのほかにも「バテルでは秘密裏にUFO研究が行われていた」とか、あるいは「人為的にUFOの目撃ウエーブを起こしてみよう」みたいな記述があった。というか、ヴァレはそういう風にこの文書を読んだ。で、「ああ、やっぱ陰謀やってんじゃん」とヴァレは言いだしたのだった(ちなみに、ペンタクルというのは、この時点でヴァレが身元を明かすのはマズイんじゃねーか、ということで、差出人の仮名として付けた名前である。故に、一般にはこれが「ペンタクル・メモ」と称されるに至ったという次第)。

オレはヴァレのフォークロア的なUFO論には興味があるが、陰謀論には正直あんまり関心がない。ただ、ヴァレ研究家の礒部剛喜さんが、昨年だったか、このペンタクル・メモを高く評価するネットコラムを書いておられた。ま、そういう考え方もアリだとは思うが、ペンタクル・メモにはけっこう批判もあるということを知っておくのも、ヴァレを学ぶ上では意味があるんではないかと思う。

確かジェローム・クラークの『The UFO Encyclopedia』にもネガティブなことが書いてあったが、今回は、このメモについてやはり批判的なことをいっている懐疑論系のUFO研究者、ロバート・シェーファーの論考を紹介してみよう。これは彼のサイトに載っているのだが、そのことはNHKの「幻解!超常ファイル」にも出た(!)UFO研究家の小山田浩史さんに以前教えてもらった。

…と前置きのつもりで書いていたら、ずいぶんと長くなってしまい、本題に入れなかった。項を改めてその内容をご紹介しよう。(つづく








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