「UFO体験は臨死体験と同根ではないか」というテーゼで名高いケネス・リング『オメガ・プロジェクト』はずっと家に置いてあって、耄碌が進んできたこともあり、読んだんだか放置してたんだかよくわからなくなってたンだが、このほどちゃんと読んでみた。

以下思いっきりネタバレであるが、結局のところ、人間というのは脳の側頭葉部分が何かクリティカルな状況に陥った時に臨死体験をするのであって、一方で側頭葉が強烈な電磁効果に見舞われた際にはUFO体験をしてしまうのダ、とゆー議論である。

勿論こうした議論のバックグラウンドにはカナダの脳科学者マイケル・パーシンガーの研究があるので、そこんとこ何となく尤もらしい話にはなってはいる。

*ちなみにこのパーシンガーという人はこ
の手の話にしばしば登場してくる人物であるんだが、著書は邦訳されていないようで、そのへんは隔靴掻痒の感がある。あと、「地球上には時にそうした強力な電磁効果が発現する地球光 eatrh light 現象とゆーものが発生するのだ」とゆー主張をしているポール・デブルーという人の議論もパーシンガー説の傍証として引用されていて、確かこの人はヴァレの本にも出てきているのでオレも読みたいのだが、当然ながら(笑)邦訳がない。出版社の中の人は何とかしてほしい。


閑話休題。それはそれとして、この本、最後の方になって、けっこうトバしてしまう。

臨死体験にしろUFO体験にしろ、人間のそういう体験は何か新たなる人類の「進化」を先取りしたものではないのか、みたいなことを言い出すのである。当人は本の中でヤンワリ否定してたが、やっぱこれは所謂ニューエイジの「見果てぬ夢」とゆーやつではないのだろうか。

だいたい彼は「進化」とかゆー言葉を不用意に使ってるンだが、オレの理解している限りでは今の進化論というのは突然変異+自然淘汰みたいなリクツになっている筈で、リングがここで言っている進化は「何か或る方向に向かって生物が自発的に変わっていく」みたいな、つまり現在は完全に否定されているラマルク流の「進化」説であるように思われる。そういうのをいきなり持ち出すから、ナルホド科学者の議論だよなーと思って好意的に読んでいたオレ(笑)もヒザカックン状態になってしまうのである。

ま、淘汰圧だか何だか知らんが、人間の変革を強いる力がソコで働いているというんであれば、ここは「進化」なんていう物言いはしないで、ヴァレ流の「コントロール・システム」だとか、あるいはユング流の元型(アーキタイプ)仮説でお茶を濁しておけばヨイのである(実際に本書ではその辺への言及もあるんだよネ)。

というワケで画竜点睛を欠いた感もあるけれども、パーシンガー理論を拡大援用したこういう議論はなかなか知的刺激に満ちている。その後、このフィールドがどうなってんのかは不勉強なのでよくわからんけど。とりあえずそういうことで。


p.s.
しかし、今アマゾンでみたら値段が4979円もついていたぞ。どーなっとんじゃ