Jeffrey J. Kripal
University of Chicago Press
2011-09-16

以前にも触れたんだが、宗教学のほうのジェフリー・クリパルという先生が書いた『Authors of the Impossible』(「あり得ないことを書いた人々」ぐらいの意味だろうか)という本がある。
この中にジャック・ヴァレを論じている章があるというので、Kindleで買ってみたのである。
たまに該当箇所を開けて、読もうとはするんだが、如何せん英語力不如意。遅々として進まない。加えてすんなりアタマに入ってこない。しょうがないので学生みたいに訳読方式(笑)で少~しずつ日本語にしながら読み進めていこうかと思っている。これが現在の状況である。
今んとこ最初のほうを読んだだけだが、著者はヴァレを「グノーシス的である」と言う。ヴァレは正統的な科学とも伝統的な宗教とも違う、いわば第三の異教的スタンスからスピリチュアルな問題に取り組んでいる人物であって、そのような「はざま」に立つ人間であるからこそ、物理的存在でありながら極めて主観的な性格も有している、いわばUFOのヌエ的に強く反応している――というのだな。
ジャック・ヴァレが知るに至ったのは、厳密な意味で「これは主観的なものである」とか「客観的なものである」といった断定的な説明をするのは無効だ、ということなのだ。そうした説明は「ともに真である」ともいえるし、「ともに間違っている」ともいえる。ヴァレが超常現象のことを書く時――そしてこれこそが、私を彼の「あり得ないものを書く」営みに引きつけた理由なのだが――彼は純粋に心的なもの、ないしは主観的に存在するもの(それはそれで非常に興味深く、深遠なるものではあるが)についてのみ考えているわけではない。
彼が考えをめぐらせている対象は、次のようなものなのだ――繰り返しレーダースクリーン上に出現する根源的に不可解な現象。過去何十年にもわたって各国の政府やその軍隊との間に深い関わりあいをもってきた、もしかしたら「潜在的な敵」であるかもしれない勢力。我々の最強のジェット戦闘機からも容易に逃げおおせてしまう、進歩した未来のテクノロジー。そして、我々のフォークロアや宗教、文化を何千年にもわたって裏面から規定してきた、不可解というしかない「神話的なもの」の存在・・・。つまり彼は、神話的でありながら同時に物理的にも存在し、スピリチュアルなものでありながら同時に物体でもある、そのような「何ものか」について考えているのだ。
読者諸兄がいま戸惑っておられるとしたら、それはむしろ結構なことだ。合理主義に基づく「確からしさ」や宗教的な信仰は、ここでは「敵」である――混乱は幸福を運ぶ天使である。不条理と疑念は、我々をはばたかせる翼である。だからこそ、いまこの状況に在る根源的な不可思議さというものは、改めて論ずるに足るものなのだ。
ふむ、なるほどそういうことかもしれんなぁ。というわけで、本書ではこうした導入部に続いて、ヴァレの生い立ちや歩みが語られていく(ようだ)。全文翻訳とかして書き出すと法的に問題があるようなので、おいおい内容を自分なりにまとめて紹介していくことにしよう。
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