このたびの天皇陛下の「お気持ち」ビデオメッセージに関して、「陛下が仰りたいのは、たぶんこういうことなのではないか」と考えてみた。些か不敬であるかもしれないが、以下、陛下になりかわって一人称で書いてみる。
たぶん、「そうやって新しい仕事をはじめて自分のクビを締めてしまったのはあなたでしょう、いまさら大変だから譲位したいとか言っても筋違いです、そもそも憲法上の天皇はただ生きていて頂ければそれで良いという概念の上に成り立っておるので、そんな新しい象徴天皇のお仕事などなさらなくても結構だったんですよ」などと冷たく言い放つことも理屈の上では可能である。可能なのだが、人情としてはそうもいくまい(小生なども先の東日本大震災の時とか、「なんとこの天皇という方は私心の無い方なのだろう」と驚嘆したぐらいでアル)。
で、国民はどうするのか? いま、そういう状況である。
「天皇制」ってオレ、最初よくわかんなかったんだ。
日本国憲法には「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」って書いてある。けれども、そもそも象徴ってのがわからん。人間なのに「象徴」とか言われても、じゃあオレ、どういう立ち居振る舞いすりゃいいんだよ、って。
もちろん憲法には「天皇は国事行為をしておればよい」ってなことが書いてあって、つまり国会に出ていって開会を宣したり書類にハンコ捺したりする仕事をやんなさい、っていうんだけど、だからってそういう形式的なことを淡々とやってりゃいいんだろうか、って気がした。
で、思ったんだ。「日本国民統合の象徴」っていうくらいだから、国民全体のことを思って、とにかく国民を応援したり励まして回ったらどうなんだろう、そういうのが「象徴」なんじゃないか、って。
もちろん国民の前に出ていくってことはいろいろやってた。毎年恒例の国体の開会式とか植樹祭とかね。でも何かネ、そういう段取り通りのスケジュールに沿って仕事こなしてくだけじゃダメなんじゃないかと思った。
一番いいのはやっぱり「本当に困ってる人」とか「辛い思いをしてる人」のところに行って「頑張ってください」って声をかけて、とりあえず元気になってもらうことじゃないのか。で、決めた。大災害とかあったら、オレ、現地に駆けつけてみんなを励まして回るんだ、って。
そうそう、こないだの戦争で亡くなった戦没者の方たちもネ、いちおう「天皇陛下のために」っていって死んでいったわけだから(ま、その頃の天皇はオレのオヤジだったんだけどね)、亡くなった方たちにだって真心を示さないといけない。で、激戦の戦地にもできるだけ行って、戦没者の皆さんを慰霊してあげようって思ったんだ。
で、長年自分なりにそういう信念でやってきて、実際、手応えもでてきたんだよね。そりゃそうだと思うんだ。国民だって「象徴」なんて言われてもよくわかんないと思う。でも、オレが考えてやってることを見て、「あぁ天皇ってそういう存在なんだ」ってイメージが湧いてる部分、確かにあると思うからネ。
ただ、オレなりにそうやって作ってきた天皇のありようって、実際にはけっこう大変だったりするんだ。忙しいんですよ。
もともと憲法で「やれ」って書いてある国事行為の仕事もあるし、ま、あと皇室の私的行事ってことになってるけど宮中祭祀ってのがあって、これは代々やってきたことだっていうからおろそかにできない。
これに加えて、オレが考えてやってきたような行事までこなすとなるとね、流石に80歳過ぎてくるとキツイんです。
オレのやってきたことはいちおう国民的に認められているようだし、今更「ああいうの、やめます」ってことにもいかんでしょう? だったらオレもだんだん体が動かなくなってきたし、数年中に譲位をして、息子がまだ50代のうちに天皇を継いでもらったほうがよかないか。それが今回の発言の趣旨だったワケです。
もちろん、今の法律じゃそういう譲位はできないことになってる。一方で「天皇は政治的な発言をしてはならない」って憲法に書いてあるから、「仕組みを代えてほしいんです」とは言えない。言えないんで、今回はちょっと奥歯にものがはさまったような物言いをせざるを得なかった。
でもね、とにもかくにも何だかワケのわからん「象徴天皇」ってものに、とりあえず命を吹き込んできたという自負がオレにはある。なんとかその方向でやっていきたいんで、そこは以心伝心ってヤツで分かってほしいんだ・・・
たぶん、「そうやって新しい仕事をはじめて自分のクビを締めてしまったのはあなたでしょう、いまさら大変だから譲位したいとか言っても筋違いです、そもそも憲法上の天皇はただ生きていて頂ければそれで良いという概念の上に成り立っておるので、そんな新しい象徴天皇のお仕事などなさらなくても結構だったんですよ」などと冷たく言い放つことも理屈の上では可能である。可能なのだが、人情としてはそうもいくまい(小生なども先の東日本大震災の時とか、「なんとこの天皇という方は私心の無い方なのだろう」と驚嘆したぐらいでアル)。
で、国民はどうするのか? いま、そういう状況である。
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