日本のUFO研究の草分け的存在として荒井欣一(1923-2002)という人がいたことはUFOファンなら誰でもご承知であろうが、この方の蔵書類は、福島市にある「UFOふれあい館」に寄贈されたという話になっている。ふるさと創生1億円で作られたという、なかなかにキッチュでオレの大好きな施設である。

もちろん荒井氏の蔵書の全部が全部ここに移管されたとも限らず、誰かが何十冊だか何百冊だか本棚から引っこ抜いていったようなこともありえないではない。それでも、彼がどんなUFO本を集めていたかということは、この「UFOふれあい館」のコレクションを瞥見すればだいたいの傾向がわかるのではないか。1940年代以降の日本のユーフォロジーの保守本流がどんな問題意識に支えられていたか。そのあたりを考えるヒントになると思うのである。

さて、そういうUFOファンのニーズを汲み取って頂いたのかどうかはよくわからんが、この「UFOふれあい館」では先に和書のUFO蔵書リストを作成し、ネット上に公開していたりするのだが、今回はその洋書バージョンを作ったということで、そちらのリストもネット上にアップして下さっている(→この辺から入っていけます)。

現時点で226点リスト化されていて、先に書いたように冊数的には「なんかもっとあって然るべきだよなあ」という気がしないでもないのだが、ともかくオレ視点でこのリストを眺めてみると、ツイッターでもちょっと触れた話ではあるけれども、若干思うことがあった。

■ジャック・ヴァレの本が意外に少ない

 「世界でも3本の指に入るUFO研究者」とも言われているのがジャック・ヴァレである(ちなみにそう言っているのはオレなんだけどサw)。彼のUFO関係の単著というのはUFO日記シリーズみたいなのも入れると10数冊あるンだけど、ザッと調べてみると、このリスト中にある彼の単著は4冊だけ。具体的にいうと以下の4冊である。

・Anatomy of a phenomenon
・Challenge to Science: The UFO Enigma
・The Invisible College
・Messengers of Deception


 これはどういうことかとオレも考えてみたんだが、たぶん荒井さんはヴァレがあんまりお好きでなかったのであろう。というのも、ヴァレは「UFOは宇宙から来てるわけじゃないから。妖精とかああいうのと同じで、人間は大昔からそういう光る不思議なものをずっと見てきたんだよね。それって別に宇宙とか関係ないんだよね」という事を主張している人である。然るに荒井さんなんかは「やっぱ連中は宇宙から来てるんじゃネ?」というのが問題意識の核にある。だからこそ、あんまりお気に召さなかったのであろう。

 実際、リストにあるヴァレの単著4冊のうち2冊はヴァレが若い頃に出した「Anatomy of a phenomenon」と「Challenge to Science: The UFO Enigma」なんだが、この2冊というのは、実はヴァレがまだ「UFO=宇宙船仮説」に未練をもっていた時代の本なのである。「妖精」とか何とか言い出す前のヴァレにはまだ関心があったけど――そういうことではなかったのだろうか。

■ジョン・キールの本がない?

 「UFOというのは宇宙船などではない。何かもっと超自然的な不思議な現象と考えねばならない」というような事を主張して、或る意味でヴァレに近い主張を繰り広げていたのがジョン・キールであるが、洋書のリストをザッとみた限りでは彼の本は1冊もない。これもやはりUFO=宇宙人説にこだわりたかった荒井さん的には「どうでもいいヤツ」という烙印を押されてしまったのではあるまいか、という気がしないでもない。しかし1冊もないというのはどうなのか。オレの中ではけっこうなナゾである。


とまれ、オレなんかにはよく正体のわからない人の本なんかも結構ある。また行く機会があったら、ちょっと閲覧させてもらおうかなぁなどと考えている。