久しぶりに朝日新聞の「天声人語」を取り上げる。

けさの「天声人語」は、今年の本屋大賞を取った町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』に引っかけた話を書いている。この受賞作は「苦境にあっても誰からも顧みられない孤独な人たちをめぐる救済のものがたり」である(らしい。オレも実は読んでいないのだ)。

ちなみにこれは今回の受賞を取り上げたニュースにはもれなく書いてあるけれども、クジラの中には他の仲間たちの聞き取れない52ヘルツあたりの周波数でしか鳴くことができず、結果的に孤独に生きていかざるを得ない個体がごくまれにいるらしく、作品のタイトルはそんなエピソードを踏まえている。

まぁたいへん良さげな本である。なのでそういうのを紹介するのは大変結構なのだが、後段がいけない。天声人語子は今回の受賞作と最近のコロナ禍をひっかけた話をはじめてしまうのだった。例によってネットではカネを払わないと「天声人語」を見られないので、最後の部分をここに提示しておく。


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「コロナ下ではみんな声を出すのを控えるので人間の距離感が広まってしまう、孤独を深める人が出てきてしまう、これではいけません」というようなことを言っている。

だが、これはちょっと違うだろう。

本当の孤独というのは単に「物理的に周囲に誰もいない」「他者の声が聞こえない」といった状況とイコールではない。一番きつい孤独というのは群衆の中で感じるものだ何故なら他のみんなが仲良くやっているのにオレひとりがそこからはじき出されているのだという場面、それこそが人間にとって一番つらく悲しいものだから。

自分の声は誰にも届いていないと嘆いている人はコロナの前だろうが後だろうが常にいて、コロナだから余計に増えているとかそういうことはあるまい。

その時々の話題を二つ三つ、互いに関わりがあるかのようにくっつけて書けば時事コラムのできあがり。そういう安直な態度がこのコラムの底にすけてみえる。