
「UFO冬の時代」に苦吟しつつも、こないだの米当局のUAP報告書公開で若干息を吹き返したであろう全国3万5千人のUFOファンの皆様、如何お過ごしでしょうか。
さて、年に一回の刊行ペースを愚直に守り、今や国内UFO同人誌界の雄と目されるに至った「UFO手帖」が本年も無事刊行された(他にUFO同人誌なんてあるんかというツッコミはスルー)。実は小生も執筆陣の片隅に名を連ねているので、今回はPRも兼ねてその内容を簡単に紹介させていただく。
11月23日の「文学フリマ東京」にて世間サマにお披露目されたこの新刊であるが、今回はなんと全200ページ! 今号はとりわけ分厚い。と同時にアツイ。なんでそんなアツイのか。まぁ実のところそれは簡単な話で、ひと言でいえば今号の特集が「ジョン・A・キール」だからである。
熱心なUFOファンであればご承知かとは思うが、キール(1930-2009)というのはアメリカのUFO&超常現象研究家である。だがそのスタンスというのがちょっと変わっていて、もともとアメリカ辺りではネコも杓子も「UFOって宇宙人の乗り物だよねー」といっていた1960年代後半に「ちげーよ。UFOは宇宙船なんかじゃねーよ」と言いだして一躍注目を集めた変人である。
詳しくは今号を読んでいただければいいのだが、要するに彼は、UFO現象というのはこの地球に昔から住んでいる「超地球人 the Ultraterrestrial」が起こしているものであって、そいつらはUFOだけじゃなくていろんな超常現象を起こして人間をからかって遊んでるのだ、みたいな面白いことを主張したのである。
ヘンでしょ? ヘンなのだが、このUFO同人誌の名物編集長・秋月朗芳さんはこのヘンなユーフォロジストが大好きなのだった(そして執筆陣も総じてキールを好いている・・・と思う。たぶん)。で、まぁ好きなだけに、編集長はこの人物で特集を組むからにはちゃんとしたものを作りたいということで、なかなか踏ん切りがつかなかったのだとオレは推察するのだが、しかし今回思い切って「やってみよう」ということになった。だから自然、アツクて厚い本になってしまった。
さて、その特集である。上の写真は表紙であるが、窪田まみ画伯の筆になる有象無象に囲まれたジョン・キールがまずソソるではないか。で、ページを繰っていくと、キールの「理論」解説だとか精密なビブリオグラフィだとかがあって全200ページ中の80頁までが特集に費やされているのだった。これはとてもとても充実しているを言わざるを得ない。
中でもオレが一番気に入ったのは編集長自ら執筆した「いつかわかる話」という表題のキールの評伝である。なんで彼はUFOみたいなものに惹かれたのか。そのあたりをらせん状に辿っていく。そうやって彼の人生を辿っていくと何だか淋しくなってくる。UFOは寂しい。そういう話なのである(どういう話だ)。だから全国のキールファンは絶対読まないとダメなのである。
特集以外も充実している。UFOの出てくる漫画やアニメ、映画の紹介コーナー、それから漫画「フラモンさん」といった定番企画はむろんのこと、熊本・有明海にUFOの痕跡を追うルポ(!)なんてのまである。
それから今回非常にウケたのは「イーグルリバーのパンケーキ」を実際に作ってみましたという凄い企画である。これは「田舎の爺さんの家の前に宇宙人みたいな連中がやってきて、水ほしがったのであげたらお返しにパンケーキをくれた。食ったら段ボールみたいだった」というイーグルリバー事件に注目したもので、書き手の太田健さん(本誌初登場だ)は分析にかけられたことで判明したそのパンケーキの成分、つまりはソバ粉や小麦等をまぜて実際になんかそれっぽいのを焼いて食ってみようという暴挙に出たのだった。これはおそらく世界初の試みであり、いわば世界のユーフォロジーに対する大いなる貢献といえよう(笑)。ついでに事件の真相をめぐる推理みたいなのもあって、これも面白い。
あ、そだそだ、忘れてならんのは、UFO本の名著『何かが空を飛んでいる』の著者であるところの稲生平太郎さんが、1990年代初め、英国の有名な超常雑誌「フォーティアン・タイムズ」の記事をもとに雑誌「Az」に連載してた「アズ・フォーティアン・タイムズ」の記事で、これが3本再録されている。さすが稲生先生、手練れだよな~と感心するばかりである。
というわけで、まだまだいろいろと面白いのがいっぱい載っているのだが、いささか疲れたので、あとは通販で買って読んでください。近日中に版元の「Spファイル友の会」のサイトでアナウンスがあるでしょう(追記:そのご通信販売サイトが立ったようです→コチラ)。
とまれ、こういう同人誌はだんだん作り手もヨレてきて腰砕けになりがちなものであるが、どうです、第6号にしてページ大幅増量というのは! 編集長が新しい書き手を連れてきたりしてこの雑誌はスゲー元気である。 UFOシーンの未来に曙光が見えてきた(のならいいな)。
*なお、オレは今回キールの著作を紹介する「『UFO超地球人』読書メモ」というのを書いたが、実はこのブログに以前12回にわたって書いた記事をスゲー短くしたみたいなヤツである。ブログの記事は全部読むとダレるだろうから「UFO手帖」買って読んでいただくが吉(ステマ
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