さて、前回その発端をご紹介した「サンアントニオ事件」であるが、これが本当に起こった出来事であるならば、UFOの墜落&搭乗員の目撃という要素を含んだ相当にファンタスティックな事案であることは間違いない。

そうなると当然ここからは米軍当局による墜落物体の回収やら何やらという展開が予想されるわけであるが、そう、まさに事件はそんな方向へと転がっていった。加えて――これは前回もちょっと触れたけれども――目撃者の少年2人は事件の物証(かもしれないもの)をゲットしたのである!

というわけで、今回は「サンアントニオ事件のその後」を引き続き追っていきたい。

謎の墜落事件があった翌日、すなわち1945年8月17日(金)は何事もなく一日が過ぎた。だが、18日(土)には新たな動きがあった。この日、目撃者のホセ・パディージャ、レミー・バカを案内役に、ホセの父親ファウスティーノ、そしてかねて知り合いの警官エディー・アポダカが墜落現場に向かうことになったのである。

4人が現場にたどり着くと、例のアボカド型の物体は二日前と同じ場所にあった。ただし、前回目撃した不思議な生物の姿は全く見えなかった。それから大人2人は、子供たちを遠いところに待たせたまま墜落した物体の内部へと入っていった。その間、およそ5分から10分。しかし、戻ってきたファウスティーノたちは、そこで何を見たのか全く語らなかった。ただ「厄介ごとに巻き込まれてはいけない。このことは誰にも話すな」とだけ息子たちに告げた。唯一「あいつらはいたの?」という問いに対しては、「誰かが連れていったのだろう」という答えが返ってきたという。

*余談ながら、この現場再訪の際にはいささか不可解な出来事があった。4人が現場を見通せる丘に到達した時、当然ながら彼らは視界の中に墜落物体の姿が見えるものと思った。ところが、そこから見えるはずの物体がどこにもない。不審に思いながら近づいていくと、今度は彼らの面前にその物体が姿を見せたのだという。トリビアルではあるがどこか引っかかるという意味で、いかにもUFOめいたところのあるエピソードである

このあと4人はいったん帰宅するが、子供たち2人は現場が気になって仕方がない。その日の午後、子供たちは馬にまたがって、2人だけでこっそりと現場に戻ってみた。すると、そこには軍用ジープと、墜落した物体の一部とおぼしきものを拾っている軍人たちがいた。いよいよ「軍当局」の登場である。しかし時間ももう遅い。2人はそれを見届けると再び家へと帰っていった(ちなみにヴァレは、この作業にあたった兵士は原爆実験が行われたホワイトサンズ・ミサイル実験場から派遣されたものとみている。実験場内の兵舎がどこにあるのかは分からんが、グーグルマップでみると現場からはザッと60マイルとかいう感じのようである。それだったらアメリカの感覚だと比較的容易に往来できた距離だったのかもしれない)。

次いで翌8月19日(日)である。レミーがホセの家に立ち寄ったところ、そこにはアヴィーラという名の陸軍の軍曹が来ていた。この軍曹はホセの父親にこう告げた。「あんたの地所に実験用の気象観測気球が墜落してしまった。回収するためにはそこに車両などを持ち込まねばならない。ついては牧場のフェンスを一部切り取ってゲートを作り、現場に向かう道路も敷設したい。それから、その場所には誰も近づかないように注意してくれよ」。父親のファウスティーノにこの要請を拒否する選択はなかった。その翌日には実際にゲートや道路の敷設作業が始まったらしい。

さて、「この件にはかかわるな」と釘をさされたホセとレミーはそれからどうしたか。実のところ、好奇心旺盛な2人にはおとなしく引き下がる気は毛頭なかった。

49489
目撃者の証言に基づいて描かれたと思しき墜落物体のイラスト。本文中には長さ約25-30フィート×高さ14フィートといった数字もあるが、ここには違う数字が入っている


現場付近の地形を熟知している2人は、それ以降、灌木などに身を隠しながら軍の回収作業を連日見守った。現場には大きなクレーンやトレーラーが持ち込まれ、墜落した物体をトレーラーの荷台に載せる作業が続けられた。若い兵士たちは周辺に散乱していた部品を拾い上げる作業もしていたが、彼らはそうして拾ったものを時に地面の裂け目に投げ捨てたりもしていた。ちなみにホセは、この兵士たちの不審な行動について「面倒な仕事をさせられるのに飽いてそんなことをしたのではないか」と語っている(!)。加えていえばその兵士たちは、食事をとるためにしばしば持ち場を離れ、サンアントニオの街場にある「バー&カフェ オウル」に通っていたともいう。

正体不明の飛行物体が墜落したのだとすれば、そんな呑気な態度でいられるワケがないという気もするが、ヴァレは「軍当局は突然の出来事に事の重大さを十分に認識できていなかったのではないか」という意味のことを言っている。いずれにせよ、ここは目撃者の証言の信憑性を考える上での一つのポイントなのかもしれない。

*ついでにちょっと余計なことを書いておくけれども、ホセとレミーの学校は当時どうなっていたのだろう。この事件があったのはちょうど第2次世界大戦が終わった直後なのだが、毎日現場通いをしていたということはヤッパ小学校は休校だったのだろうか? それともサボっていたのか? どうでもいいことかもしらんがリアリティというのは大事だと思うのでここはちょっと気になった


やがて墜落した「UFO」がトレーラーに固定され、搬出される日がやってきた。これは8月23日(木)もしくは25日(土)ということでどうも日時がハッキリしていないようなのだが、現場の兵士たちは、何とこの時もまた仕事の途中で「バー&カフェ オウル」へと食事に行ってしまった。これを見届けたホセとレミーは思い切った行動に出る。西日が差していたというから午後も遅い時間帯だったと思われるが、トレーラーの荷台に飛び乗ったホセは、物体にかぶせられたターフをくぐってその内部へと侵入したのである。

物体に開いていた「穴」は、どうやらパネルが吹き飛んでできたもののようだった。内部は金属でできているようで、上部には透明な「ドーム」のようなものがピョコンと飛び出しているのも見えた。イスや機械類などはなくガランとしていたが、唯一、壁面には何か部品のようなものがぶら下がっていた。そこでホセは、兵士たちが置いていったとおぼしきチーターバー(バールのようなもの)を近くで見つけ、それを使ってこの部品をもぎ取ってしまった。大冒険の末に「お土産」を手にした2人は、かくて勇躍家へと帰っていったのだった。

さて、その「お土産」がそれからどんな運命をたどったかというと、そこはあとでまた縷々説明していきたいとは思うが、とりあえず言っておくと実はこの部品、いまも失われることなくヴァレたちの手元にある。写真もある。こういうヤツである。

1948

本書では、その部品は形状から「ブラケット」という風にしばしば呼ばれている(念のため言っておくと、ブラケットというのは棚を支えるために壁面に取り付けられる金具のようなものである)。それが本当に墜落物体の部品であったなら、すなわちこれはUFOの実在を示す貴重な物証ということになる。後で述べるけれども、彼らがこの事件の際に拾った別の部材、すなわち「金属ホイル」や「エンジェル・ヘア」はみんな行方不明になってしまった。そうすると、唯一の物証であるこのブラケットというのは途方もない宝物なのではないか――。

・・・と言いたいところなのだが、この写真を見るかぎりでは何の変哲もない金物みたいである。とても謎の飛行物体の部品には見えないのである。「なんだんだこれは」という感じである。ただ、話はそれで終わらない。この「ブラケット」をめぐる奇っ怪な出来事がほどなく起きる。(つづく