さて、わが国で発生したUFO事件として業界筋ではそこそこ有名なものの一つに「旅館紫雲事件」というのがある(実際はそんな呼称が広く用いられているワケではないが、ここでは便宜上そういう呼び方をさせていただく)。
この事件についてはむかし当ブログのエントリーに書いたことがあるので関心のある方はそちらをご覧いただきたいのだが、簡単にいうと1970年代半ば、京都・大原の旅館「紫雲」を舞台に、そこの女主人である河上むつさんが「エイリアン」や「MIB」とおぼしきアヤシイ連中と再三遭遇し、あるいは怪光線を浴びせられるなどたびたび奇っ怪な体験をしたとされる事件である。
ちなみにこの河上むつさんは仮にご存命であったとしても今はたぶん100歳ぐらいになってるハズで、そういう意味ではもはや新情報もクソもないとは分かっているのだが、今回何となくGoogle検索に「河上むつ」と打ち込んでみたところ、ちょっと奇妙なPDF文書がヒットしてきたのだった。
その文書はココに添付しておくのでご覧いただきたいのだが、要するにコレは、京都市長が旅館業法にもとづいて関係する法人・個人に「不利益処分」を下すことになったので、「何か文句があるなら聴聞に出てきて下さいネ」ということで公示した文書のようである。日付けは令和6年とあるから昨年2024年の1月4日で、比較的最近のモノなのだが、ここに「不利益処分」を受けることになる人物として「河上むつ」という名前が出てきているのである。むろん同名異人という可能性もあるが、不利益を受ける対象者として併記されている法人をみても「紫雲」近辺の地名「古知谷」を社名とした会社があったりするから、この河上さんはくだんの河上さんであると考えてよさそうだ。
ではこの文書は一体何を意味しているのか。オレも法律方面は素人なので憶測まじりで言うのだが、この聴聞を所管しているのは「京都市保健福祉局医療衛生推進室医療衛生センター宿泊施設適正化担当」という異常に長ったらしい名前の部署のようであるから、ここでいう「不利益処分」というのはおそらく旅館業の許可取り消しみたいなものなのだろう。
ここから想像されるのは、かつて存在していた旅館「紫雲」はどういう経緯かは知らんが河上さんを含む複数の法人・個人が営業権を分掌(?)するかたちとなっていたのだが、実際には旅館の営業どころか廃業して久しいことが判明したので、「じゃあ許可は取り消させていただきますネ」と行政サイドからこの時点で引導を渡された――というストーリーである。
「それがどうした」という話ではある。あるけれども、既に実体を失っていたとはいえ、この時点まで少なくとも書類上ではその存在が認められていた旅館「紫雲」は、おそらくこの処分によって名実ともに消滅してしまった。ちなみに旧「紫雲」があった場所のストリートビューをみると直近では2023年5月時点の画像があり、ここにはかろうじて形態を保っている家屋の姿を見ることができるものの、それも今では半ば廃屋化しつつあるようだ。かろうじて残っている物理的な痕跡すらも今後遠からず消滅してしまうのだろう(というか既に現時点で消えているかもしれない)。
歳月人を待たず。最近では米国発のUAP騒動がそれなりの注目を集めているとはいうものの、国内に目を転じれば1970年代に盛り上がったUFOブームも今は昔。こうやって「紫雲事件」も歴史の闇に呑み込まれていく。半世紀前のUFO熱を知る身としては寂寥の思いを禁じ得ないのである。
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