2018年11月

UFO・超常現象にかんする同人誌として知る人ぞ知る存在である「UFO手帖」の最新刊――その名も「UFO手帖3.0」が完成し、この11月25日に開催された文学フリマ東京にて頒布された。近々通販も始まるようだしオレもちょこっと書いてるので、この機会に宣伝を兼ねて内容をザッと紹介してみたい。


おそらく多くの人がUFOと聞いてイメージするのは「宇宙人の乗ってきた宇宙船」といったものであろう。だがオレのみる限り、この同人誌を作っている「Spファイル友の会」というのは、そのようなステレオタイプからはちょっと距離を置いて、「何だかよくわからない現象」としてUFOをとらえ、ああでもないこうでもないといった議論をして楽しんでいる団体である。

そんなスタンスは今回の最新刊においても健在で、たとえば今回の特集「宇宙<そら>から来ないUFO」というのは「UFOは宇宙の果てから来てるとは限らないでしょうよ」というコンセプトから編まれたものである。

「地球の内部は空洞になっていてUFOはそこから来るんじゃねーか」「いやいやUFOは海とか湖とかに潜んでいるハズ」「つーか異次元とか未来から発進してきてんじゃネ?」等々、この業界には実はいろいろと変わった説というものがある。そのあたりの異説をザッと眺めてみましょうヤというのが今回の特集の狙いである(たぶん)。

さて、「地球内部」ということでいえば、その前提として「地球空洞説」というものを考えてみなければならん。表紙を飾るイラストは今号も本誌専属アーティストともいうべき窪田まみ画伯の手になるものであるが、その辺を暗示する意味深長かつ不気味なウサギが登場しており、まずもってワクワク感をそそられる。

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そこでページを繰ってみると冒頭、馬場秀和氏が地球空洞説の系譜をたどる「惑星とプラムプディング」という論考をものしている。19世紀初め頃に活動したアメリカの退役軍人ジョン・クリーブス・シムズあたりを嚆矢として今にいたる流れを紹介しているのだが、実はこの馬場氏、オレが勝手に「平成の戯作者」と命名しているぐらいで真面目な論考のフリをしてその中に大法螺を紛れ込ませる才人である。なので、その辺の虚実を見極めつつニヤニヤしながら読む。それが実に愉しい。

「地球空洞説」関連では、藤元直樹氏の「明治26年のシムズ地球空洞説――新聞紙『國會』に連載された「地心探検」をめぐって」も興味深いもので、シムズとその後継者たる息子の主張が明治時代には既に本邦に紹介されていたことを明らかにしている。ま、昔から奇譚好きの人というものはいたのだなぁと感慨を誘う。

次いで「海のUFOと、水の子供たち」なる項目がある。とりわけ水辺の怪異みたいな話を聞くと「ああ、そういうのは何かあるかもしれないネ」という気になってくるもので、そのあたりに触れた秋月朗芳編集長の論考などなかなかに考えさせる。

特集掉尾を飾るのは「別世界からきたUFO」のパートで、礒部剛喜氏の「マゴニア異聞の逆襲―UFO現象理論の現在」がオレ的には面白かった。「イヤでもさー、これまでアレコレ言われてきた説ってのは結局どれもこれもユダヤ・キリスト教の世界観に引っ張られたものなンじゃネ?」というもので、いわばフロイトにおける汎性欲論の如き統一場理論😲を打ち立てて個々のUFO仮説の相対化を図っちゃおう、みたいなスゲー壮大な議論であった。

以上が特集の内容紹介でした。で、えーと、こんな調子で順番に紹介していこうと思っていたのだが、はやくもこの辺で疲れてしまったので、あとは駆け足で。

常連寄稿者による常設コーナーは今回も充実しておる。

「UFOと音」(UFOが登場する音楽の話。ペンパル募集/ 雅 / 中根ユウサク / 金色髑髏)
「UFOと漫画」(渚のいん / ペンパル募集)
「この円盤がすごい!」(ものぐさ太郎α)
「アダムスキーみたいな人たち」(島村ゆに)
「UFOと文学」(馬場秀和)
「古書探訪」(中根ユウサク)
「シリーズ超常読本へのいざない」(馬場秀和)
「乗り物とUFO」(ものぐさ太郎α)
「ブルーブックもつらいよ」(雅)

――といったラインナップである。それぞれ皆さんお得意の切り口で書いているので勉強になります。で、有江富夫氏の「新編・日本初期UFO図書総目録稿(1975-1979)」というのは関連図書のデータベース。これもホント頭が下がる。

あ、そうだ、それからゼヒ触れなければならないのが、UFO本の名著『何かが空を飛んでいる』の著者、稲生平太郎氏(その正体が英文学者の横山茂雄氏であることは皆さんご承知だろう)による玉稿「新興宗教俳句の頃」である。

これは稲生氏がかつて濱口腎虚(笑)名義で伝説の雑誌「ピラミッドの友」に書いた原稿の転載であるが、かつて本邦には「新興宗教俳句」運動なるものが勃興した時期があった――というウソ設定のもと、そこから生まれたUFOや怪奇現象をテーマにした名句を紹介する、という体裁のエッセイである。あたかも高尚な文学運動を回顧するようなポーズをとりつつ、そこで紹介される迷句があまりにもキッチュなシロモノなので爆笑を誘ってしまうという仕掛けで、その落差が実に素晴らしい。

とまれ、今回もUFO好きであればいろいろと楽しめる同人誌になったと思う。通販が開始になったあかつきにはゼヒ多くの人たちに注文していただきたいものである。


(追記)言い忘れたが、今回オレは「読書感想文『ノー・リターン』を読んで」というのを書いた。ほとんどの人が知らんと思うが、1959年に米国であった「ジェリー・アーウィン事件」について再調査を試みたデヴィッド・ブーハーの『No Return』という本の紹介である。おヒマがあれば読んでネ、という感じである。ちなみにこの本についてはこのブログでもたびたび触れてきた。このヘンとかこのヘンなので興味があれば覗いてやって下さい

(追記2)やはり過去のエントリーで既刊の「UFO手帖2.0」についても短い感想文を書いていた。そっちにもリンクを貼っておこう


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何だか最近フレディー・マーキュリーの伝記映画みたいなのが公開されたらしく、ずいぶん評判も良いので観に行かねばならないのだが、そんなこともあってクイーンのベスト盤を再生などしながらネットサーフィンをしていたところ、たぶん自分の中の「昭和回顧脳」みたいなものが刺激されたらしく、そういえば子供の頃にヘンなLPレコードをもってたことを思い出した。

「燃える男のバラード 長嶋茂雄その栄光のドキュメント」
  というのである。

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ちょっとググってみたところ、1971年の制作のようで、しかし別に長嶋茂雄が歌をうたっているわけではなく、名試合の実況だとか長嶋のモノローグとか仲代達矢のナレーションとかで彼の野球人生を振り返るという、ま、一種のラジオドキュメンタリー的なシロモノなのであった。

長嶋の引退が1974年であるから制作はそのちょっと前で、おそらく野球選手人生も終盤に入った長嶋をたたえようという狙いで作られたものと推察されるわけだが、しかしよくよく考えるとオレは当時から阪神ファンであって、なぜ宿敵巨人の長嶋を讃えるLPを買ったのか不思議でならないのだった。

ただまあ、オレも子供心に敵として迎えたときの長嶋の怖さというものは知っていて、なんとなくそのヘンにリスペクトがあったから魔が差してこんなものを買ってしまったのかもしれない。

彼の怖さということでいえば、その頃、オレはよくラジオで阪神戦を聴いていたのだが、当時阪神にはアンダースローのエース格で上田二郎という人がいて(なんか定期的に名前の漢字を変えることで有名な人で、いまはたぶん「次朗」だと思う)その日の彼は、なんと宿敵巨人相手を9回までノーヒットで抑えていたのだった。

で、ついに9回2死。そこで打席に迎えたのが長嶋。敵の大将格でもあり、こりゃ何がなんでも抑えて屈辱を味あわせてやるゼとオレは願ったのだったが、なんとここで長嶋がセコく内野の間を抜くヒットを放つ……ま、実際に敵ながらアッパレ、ではあったのだ。

ちなみにその試合があったのは1973年7月1日。もう45年も前のことである。レコードのほうはまだ実家のどこかに眠ってるのか、あるいは捨てられてしまったか。その辺は定かではない。








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kikuya

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さて、こういう辺境ブログはだいたい一日に10人ぐらい訪ねてきてくれれば御の字である。

それが昨日あたり15人ぐらいに急増(笑)していた。どうしたんだろうなーと思って調べてみると、以前書いた「アロハで田植えしてみました」関連のエントリーに若干名訪問者があった。

ここで簡単に説明しておくと「アロハで田植えしてみました」というのは、朝日新聞のアウトロー(を気取る)名物記者が田舎の支局長に転出したのを契機に「仮にクビになっても食っていけるように田んぼでコメを作ってみるか!」という、およそ冗談としか思えない設定に従って米作りに挑戦するとゆー企画であった。

*念の為言っておくと、朝日新聞の企業年金というのはスゲーいっぱいもらえるので、こういうベテラン記者が辞めたって相当なカネは毎月入ってくるだろう。だから汗水流して田んぼを作る必要は実際にはない。もっとも懲戒免職とかになったらそーゆー年金がもらえるかどうかは知らん

というわけで、そもそもの設定自体が異常に嘘くさいけれども、これまで「大衆はバカだ」と下々のものどもを見下してきた朝日新聞がその辺の農民にアタマを下げて教えを乞うというストーリーがなかなか痛快であり、オレもこのブログで「いいじゃないか!」と時にその辺の論評をしてきたのだった(この辺とか)。

で、実はこのたびこの企画の新シリーズ「アロハで猟師してみました」というのがまた紙面で始まったので、おそらく検索をかけたヒトがこのブログに(約5人ほどw)迷い込んできたのであろう。確かにオレも新聞のほうでこの企画を目にして「お!また始まったか!」と喜んでいたのである。

ちなみに今回の設定は「コメばっかり作っててもオカズがないので今度は狩猟でもやってみっか」というものである。

いいじゃないか。

人間は他の生物のいのちを奪うことで生きている。それはもっといえば「人間の性、本来悪なり」みたいなところにもつながっており、これまで人間賛歌のヒューマニズムを高らかに謳ってきた朝日新聞が、こういう企画でそーゆー人間の一面を掘り下げていくのだとすれば、これはこれで面白い。

今後に注目だな。





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