UFOドキュメンタリー映画とも称すべき「虚空門 GATE」(2019)のブレーレイ・ディスクを買ったので以下感想文。
なお、思いっきりネタバレなので嫌な人はここで帰るように。
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はい、ではここから。
この映画をひと言でいうと、或るUFOコンタクティーの佇まいを描いたドキュメンタリーである。冒頭、「NASAが月でみつけた女性宇宙人のミイラ」という触れ込みの映像が紹介されたり、UFO映像を自ら撮影して店先で売っている男鹿半島・入道崎の「みさき会館」のオヤジへのインタビューなどもあったりするが、それは話の本筋とは全く関係がない(ちなみにこの入道崎には以前一度行ったことがあるのだが、このときオヤジを訪ねてちゃんと話を聞いてくれば良かった。店先覗いただけで帰ってしまったのは大失敗だった)
これが行った時の写真。UFOラーメンがウリらしい
閑話休題。とりあえず大体のあらすじを紹介しておこう。
この映画の主人公は庄司哲郎なる人物だ。かつてはそこそこ活躍したこともある元役者だというのだが、どうやら小さい時から何度も宇宙人に会っているというコンタクティーで、UFOなんてものは呼べばすぐに飛んでくるというのが口癖だ。ならば、ちゃんとUFOを呼んでもらって、撮影させてもらおうじゃないの――おそらくはそういう狙いで監督は本格的に撮影を開始する。
監督は、この庄司氏を山の上とかに連れてってはUFO呼びをさせる。彼のスマホには何か怪しい影みたいなのが写ったこともある。だが、ちゃんとした映像は撮れない。何度かそんなことを繰り返していたのだが、「きょうロケ行くから」という日に庄司氏は突然姿を消す。当然「なんちゅー無責任なやつや」という話になるワケだが、実は彼、違法薬物で逮捕されていたのだった(ちなみに本人は冤罪を主張)。
そう言われてみると、確かに元俳優ということで目鼻立ちは整ったイイ男ではあるが、何で生計を立ててるのかもよく分からんチャラい中年男といった風情であるし、単なるホラ吹き男じゃねえのかという疑念が胸中に兆す。
「UFOのストーリーだというから買ったのに、なんだクズ人間のドキュメンタリーかよ」と一瞬殺意がわきあがるのだが、気を取り直してさらに観ていくと、庄司氏はやがて執行猶予付きの判決をうけて拘置所から出てくる。地道に警備員の仕事も始めたので、まぁとりあえず真っ当な生き方をする気なのか良かった良かったと思っていたら、やがて再開したUFO呼びロケで大変なことが起きる。つまり彼が、スマホの前にこよりみたいなのチラチラさせたり、或いは針金みたいなのを吊してニセUFO写真を撮っている(としか見えない)光景が撮影クルーのカメラに写ってしまったのだった!
当然監督は釈明を求めるのだが、彼は「こよりみたい見えるのは、たまたま手にもってた楊枝」「針金みたいなのは宇宙人が送ってくれたマイクロUFO。コッチ方向を撮れば母船撮れるよという合図をしてくれる道具で撮影後に消えた」とかよく分からない説明をするのだった。
その後も決定的な写真・映像などというものは全く写らない。ただ、ラストシーン、主人公たちも参加したUFO呼び会で、夜空を移動していく光体が何度も出現する。「あ、出てくれた」とかいってみんなが喜ぶ声が流れる。アレってひょっとしてUFOなんじゃないのか――そんな余韻を残して映画は終わる。
ということでこの映画、実際のところは「UFO周りの人間のケッタイさ」を通じてUFO現象を描いたものだといえるだろう。そもそもUFOに興味・関心を抱くような人間はどこかヘンなのであるが、とりわけコンタクティという人種はそれに輪をかけておかしい。「宇宙人からこう言われた」「宇宙人とはいつでも連絡できる」等々、常識的には理解不能なことを彼らは口走る。証拠はあるかといえば、ない。あるかと思えば、それは決まってフェイクだ。
にもかかわらず、彼らは「自分はマトモだ」という。当人は自らのストーリーを信じ切っているようにみえる。そして、確かにその主張にミクロレベルながら正当性があるように感じられる瞬間も(人によって、ではあるが)ないではない。あからさまなウソのようでいて、どっか完全に妄想とは断じがたい部分がある。一体なんなんだUFOってヤツは――というのはワレワレUFOファンがしばしば痛感する思いであるわけで、おそらくこの映画もその辺りに突っ込んでいこうとしたのであろう(むろん企画段階からそこまで考えていたわけではなく、出たトコ任せでやってたらそうなったのだろう)。
が、オレなどからするとその意図は必ずしも成功していない。どうしてかというと、この映画のキモは「フェイク野郎!?」と観客から見放された主人公が、いやそれは濡れ衣だよといって反転攻勢をかけることに成功するかどうか、押し戻せるかというところにあるわけだが、そこが弱い。
確かに主人公の庄司氏は、上記のような「マイクロUFO」理論を持ち出して作中で反論をしているが、如何せんこれが説得力を欠く。いや、ここで苦しい釈明をするトコロはコンタクティーの宿命なので或る意味「見せ場」としてあってもいいのだが、だったらその後でバンカイしないといけない。
具体的にいうと、ラストシーンの「UFOらしきもの」が夜空を行き交うシーンで、監督は「UFOってフツーにいるんだ!」方向に観客をグイグイ引っ張っていかねばならないが、オレがみるところ、ここで出てくる光体はいずれも等速直線運動をしており、まぁ天体現象には素人なのでよくわからんが人工衛星か隕石でしょうよという感じが強い。つまり衝撃度弱すぎである。ダメじゃん、全然押し返してないじゃん、という話である。
とまぁ、いろいろケチをつけたのだが、上に記したように「UFO問題に特有の虚実ない交ぜのグレーンゾーン」を描き出そうという意図だけは買える。そんなスゲー面白れーって映画でもないのでこのBlu-rayディスクの値段は高いような気もするが、まぁUFOファンなら知っておいても悪くはない映画だった。
あと、UFO研究家の竹本良氏が「庄司哲郎氏を高く評価する専門家」という立ち位置で再三登場するのだが、上記の「フェイクUFO写真」を真正と断定し、「間違ってたら研究者失格ですよ」的なことをいってたのが面白かった。で、今もUFO研究家の看板は下ろしてないのかな(笑)
なお、思いっきりネタバレなので嫌な人はここで帰るように。
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この映画をひと言でいうと、或るUFOコンタクティーの佇まいを描いたドキュメンタリーである。冒頭、「NASAが月でみつけた女性宇宙人のミイラ」という触れ込みの映像が紹介されたり、UFO映像を自ら撮影して店先で売っている男鹿半島・入道崎の「みさき会館」のオヤジへのインタビューなどもあったりするが、それは話の本筋とは全く関係がない(ちなみにこの入道崎には以前一度行ったことがあるのだが、このときオヤジを訪ねてちゃんと話を聞いてくれば良かった。店先覗いただけで帰ってしまったのは大失敗だった)
これが行った時の写真。UFOラーメンがウリらしい
閑話休題。とりあえず大体のあらすじを紹介しておこう。
この映画の主人公は庄司哲郎なる人物だ。かつてはそこそこ活躍したこともある元役者だというのだが、どうやら小さい時から何度も宇宙人に会っているというコンタクティーで、UFOなんてものは呼べばすぐに飛んでくるというのが口癖だ。ならば、ちゃんとUFOを呼んでもらって、撮影させてもらおうじゃないの――おそらくはそういう狙いで監督は本格的に撮影を開始する。
監督は、この庄司氏を山の上とかに連れてってはUFO呼びをさせる。彼のスマホには何か怪しい影みたいなのが写ったこともある。だが、ちゃんとした映像は撮れない。何度かそんなことを繰り返していたのだが、「きょうロケ行くから」という日に庄司氏は突然姿を消す。当然「なんちゅー無責任なやつや」という話になるワケだが、実は彼、違法薬物で逮捕されていたのだった(ちなみに本人は冤罪を主張)。
そう言われてみると、確かに元俳優ということで目鼻立ちは整ったイイ男ではあるが、何で生計を立ててるのかもよく分からんチャラい中年男といった風情であるし、単なるホラ吹き男じゃねえのかという疑念が胸中に兆す。
「UFOのストーリーだというから買ったのに、なんだクズ人間のドキュメンタリーかよ」と一瞬殺意がわきあがるのだが、気を取り直してさらに観ていくと、庄司氏はやがて執行猶予付きの判決をうけて拘置所から出てくる。地道に警備員の仕事も始めたので、まぁとりあえず真っ当な生き方をする気なのか良かった良かったと思っていたら、やがて再開したUFO呼びロケで大変なことが起きる。つまり彼が、スマホの前にこよりみたいなのチラチラさせたり、或いは針金みたいなのを吊してニセUFO写真を撮っている(としか見えない)光景が撮影クルーのカメラに写ってしまったのだった!
当然監督は釈明を求めるのだが、彼は「こよりみたい見えるのは、たまたま手にもってた楊枝」「針金みたいなのは宇宙人が送ってくれたマイクロUFO。コッチ方向を撮れば母船撮れるよという合図をしてくれる道具で撮影後に消えた」とかよく分からない説明をするのだった。
その後も決定的な写真・映像などというものは全く写らない。ただ、ラストシーン、主人公たちも参加したUFO呼び会で、夜空を移動していく光体が何度も出現する。「あ、出てくれた」とかいってみんなが喜ぶ声が流れる。アレってひょっとしてUFOなんじゃないのか――そんな余韻を残して映画は終わる。
ということでこの映画、実際のところは「UFO周りの人間のケッタイさ」を通じてUFO現象を描いたものだといえるだろう。そもそもUFOに興味・関心を抱くような人間はどこかヘンなのであるが、とりわけコンタクティという人種はそれに輪をかけておかしい。「宇宙人からこう言われた」「宇宙人とはいつでも連絡できる」等々、常識的には理解不能なことを彼らは口走る。証拠はあるかといえば、ない。あるかと思えば、それは決まってフェイクだ。
にもかかわらず、彼らは「自分はマトモだ」という。当人は自らのストーリーを信じ切っているようにみえる。そして、確かにその主張にミクロレベルながら正当性があるように感じられる瞬間も(人によって、ではあるが)ないではない。あからさまなウソのようでいて、どっか完全に妄想とは断じがたい部分がある。一体なんなんだUFOってヤツは――というのはワレワレUFOファンがしばしば痛感する思いであるわけで、おそらくこの映画もその辺りに突っ込んでいこうとしたのであろう(むろん企画段階からそこまで考えていたわけではなく、出たトコ任せでやってたらそうなったのだろう)。
が、オレなどからするとその意図は必ずしも成功していない。どうしてかというと、この映画のキモは「フェイク野郎!?」と観客から見放された主人公が、いやそれは濡れ衣だよといって反転攻勢をかけることに成功するかどうか、押し戻せるかというところにあるわけだが、そこが弱い。
確かに主人公の庄司氏は、上記のような「マイクロUFO」理論を持ち出して作中で反論をしているが、如何せんこれが説得力を欠く。いや、ここで苦しい釈明をするトコロはコンタクティーの宿命なので或る意味「見せ場」としてあってもいいのだが、だったらその後でバンカイしないといけない。
具体的にいうと、ラストシーンの「UFOらしきもの」が夜空を行き交うシーンで、監督は「UFOってフツーにいるんだ!」方向に観客をグイグイ引っ張っていかねばならないが、オレがみるところ、ここで出てくる光体はいずれも等速直線運動をしており、まぁ天体現象には素人なのでよくわからんが人工衛星か隕石でしょうよという感じが強い。つまり衝撃度弱すぎである。ダメじゃん、全然押し返してないじゃん、という話である。
とまぁ、いろいろケチをつけたのだが、上に記したように「UFO問題に特有の虚実ない交ぜのグレーンゾーン」を描き出そうという意図だけは買える。そんなスゲー面白れーって映画でもないのでこのBlu-rayディスクの値段は高いような気もするが、まぁUFOファンなら知っておいても悪くはない映画だった。
あと、UFO研究家の竹本良氏が「庄司哲郎氏を高く評価する専門家」という立ち位置で再三登場するのだが、上記の「フェイクUFO写真」を真正と断定し、「間違ってたら研究者失格ですよ」的なことをいってたのが面白かった。で、今もUFO研究家の看板は下ろしてないのかな(笑)