2021年04月

久しぶりに朝日新聞の「天声人語」を取り上げる。

けさの「天声人語」は、今年の本屋大賞を取った町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』に引っかけた話を書いている。この受賞作は「苦境にあっても誰からも顧みられない孤独な人たちをめぐる救済のものがたり」である(らしい。オレも実は読んでいないのだ)。

ちなみにこれは今回の受賞を取り上げたニュースにはもれなく書いてあるけれども、クジラの中には他の仲間たちの聞き取れない52ヘルツあたりの周波数でしか鳴くことができず、結果的に孤独に生きていかざるを得ない個体がごくまれにいるらしく、作品のタイトルはそんなエピソードを踏まえている。

まぁたいへん良さげな本である。なのでそういうのを紹介するのは大変結構なのだが、後段がいけない。天声人語子は今回の受賞作と最近のコロナ禍をひっかけた話をはじめてしまうのだった。例によってネットではカネを払わないと「天声人語」を見られないので、最後の部分をここに提示しておく。


IMG_6341


「コロナ下ではみんな声を出すのを控えるので人間の距離感が広まってしまう、孤独を深める人が出てきてしまう、これではいけません」というようなことを言っている。

だが、これはちょっと違うだろう。

本当の孤独というのは単に「物理的に周囲に誰もいない」「他者の声が聞こえない」といった状況とイコールではない。一番きつい孤独というのは群衆の中で感じるものだ何故なら他のみんなが仲良くやっているのにオレひとりがそこからはじき出されているのだという場面、それこそが人間にとって一番つらく悲しいものだから。

自分の声は誰にも届いていないと嘆いている人はコロナの前だろうが後だろうが常にいて、コロナだから余計に増えているとかそういうことはあるまい。

その時々の話題を二つ三つ、互いに関わりがあるかのようにくっつけて書けば時事コラムのできあがり。そういう安直な態度がこのコラムの底にすけてみえる。



mixiチェック

■古代スラブの伝説におけるUFO


ユーフォロジーにおいて近年一般的になっている傾向として、現代のUFO報告事例に似たものを神話や民俗の中に探そうというものがある。ジャック・ヴァレ博士によって収集・分析されたデータが示すところでは、古い民俗伝承に出てくる存在や現象と、現代における接近遭遇報告の間には奇妙な類似点が存在している。それは単に「奇跡の星」や「神々の馬車」といったものと空飛ぶ円盤の見た目の類似にとどまらず、そのような現象と出会ったのちの事後効果といったものにもついて言えることだ。多くの民話や神話には、神秘的な力(ドワーフやノーム、天使や神といったものだ)に触れた者はそれ以前には戻れない、というテーマが広く見られる。彼らがその遭遇によって惑い、混乱するというのは、現代のUFO体験者(コンタクティーやアブダクティー、接近遭遇をした者たちだ)と変わらない。


ちょっとした想像を付け加えれば、古代スラブの信仰や宗教の中にもUFOのそれに似た要素は見いだすことができる。


ポーランド人というのは広くいえばスラブ民族に属しており、ロシア、チェコ、スロバキア、ウクライナ、ベラルーシ、セルビア、クロアチア、ボスニアといった各国と同じグループに入る(それぞれの言語はある程度まで互いに理解できるほどだ)。中世初期、我々の祖先たちは東部・南部ヨーロッパに広がり、初期の国家の原型を作った。ポリャーネ族の国としてのポーランドは10世紀に出現したが、現代の歴史学によれば、ヴィスワ族が立てた初期の国家は、現在クラクフのあるポーランド南部地域に既に8世紀には存在したものとされている。


スラブ系の部族はいずれもが同一の信仰を有しており、高名な研究者であるAndrzej Szyjewskiによれば、それぞれのグループは独自の神々を崇拝する一方で、同時にすべての部族に共通する神々をも信仰していたという。そうした神々としてあったのが、例えば4つの顔をもつS'wiatowit(「世界を見通す者」の意)であり、あるいは 地上に在る神で、おそらくは「野人」として描かれた Weles ないし Wolosという神――である(その名は「毛」と結びついている)。

残念ながら、ポーランド部族の宗教について我々が知っているのはこれぐらいである。966年にキリスト教への改宗が行われた跡、ローマ・カトリックの神父たちは古き神々に捧げられた習俗や伝統をすべて破壊してしまったのである。彼らはあまりにも仕事熱心であったため、古代スラブの信仰に関わる考古学的な遺物は全く後に残らなかった。カトリック教会は、従ってポーランドのアイデンティティに関わる文化的・歴史的なホロコーストに責任を有しているわけだが、現代においてもなお彼らはそのことを認めようとしていない。


異教の伝統と信仰の一部は幸運にも民衆の中に生き残っており、UFOにまつわる隠された資料のいかほどかは知ることができる。伝統的な信仰とUFOとの間に同等物を探ろうという試みも、行きすぎれば曲解につながるおそれはあるけれども、ここに一つ、未確認飛行物体との直接的な類似性をみせる古いポーランドの民俗というものがある。それはポーランド各地で異なった名前で呼ばれているものであるが、最も一般的なのはOgnik(炎の意)あるいはS'wietlik (ホタルの意)である。


研究者たちが未確認飛行物体を目撃した高齢者に会うと、彼らはそれを表してOgnikということがしばしばある。例えば第二次大戦後、チェンストホバ地方の或る成人女性が、「パチパチいう」音をたてる巨大な光る球体との接近遭遇についての報告をしているのだが、彼女は民俗的な文脈から、それをむかし話に聞いた妖精のようなものと受け取ったという。従って、Ognikにまつわる報告というのも、現代のUFOとの遭遇と比すべき出来事から生じてきたものといえるのかもしれない。それ以外のものも、いわゆる「ゴーストの光」――ポーランド版の「狐火」であったのは疑いのないところだ。


今ひとつの重要な民俗学的なテーマというのは「惑星人」(Planetnicy)――つまり 風とともにやってきて、時に地球に降りてくるという空の民にかかわるものである。「彼らは通常、リネンの服を着た老人の姿で描かれる。また時として彼らはそれとは違う姿で描かれることもあって、その場合は老人の頭に子供の体をもつ、性別不詳の小さなモンスターである」。これについての詳細は、ポーランドの民俗における悪魔についての優れた辞典を編んだアダムとバルバラのPodgo'rscyの著作で読むことができる。


ユーフォロジーと民俗学の比較について通じた人には、上記のパラグラフについて注釈する必要もないだろう。


mixiチェック

↑このページのトップヘ