2022年05月

前回は、目撃者の少年2人が墜落したUFOの中から「ブラケット」をもぎとってきたという話をした。その大きさは長さ30センチ×高さ9センチ。この謎の物体は、とりあえず二日ばかりはホセの家で保管していたという。が、その間、おそらくは何かが現場から持ち去られてしまった可能性を案じたのだろう、軍人がホセの家に家探しに来た(いくら軍でもそんな勝手なことをしていいのかという気はする。この時点で軍当局には何らかの「危機感」があったのかもしれない)。

幸い軍人たちにブラケットが見つかることはなかったのだが、せっかくの宝物を取り上げられてはいかんということで、2人の少年はこれを改めてレミーの家の物置小屋の床下へと隠した。そこで「事件」が起きた。

ちょうどその頃、レミーの家にペドロ・アヤナという羊飼いの男がやってきた。彼は一家の知り合いで、羊の出荷作業をするためにサンアントニオを訪れた際には、件の物置小屋に寝泊まりしていたらしい。この時も彼は小屋で寝ていたのだが、ある朝、真っ青な顔をしてレミー家の母屋にやってきた。そこで彼はこんな話をした。



オレが寝ていたら、夜中になって窓の外の井戸の辺りに光が見えた。何だろうと思っていたら、小屋の中に突然身長3フィートほどの小さい生きものが3体現れた。そして地下を指差して「テソロ」と言ったんだ。ああ、確かにそう言った。そこで驚いたオレは跳び起きてライフルを手に取った。すると何てこった、ヤツらは消えてしまったんだよ!(このへんは中岡俊哉風の脚色アリw)



これを聞いたホセとレミーは仰天した。なんとなれば、テソロ Tesoroというのはスペイン語で「宝物」という意味なのだが、日頃スペイン語を話していた彼らは、もぎとってきた例のブラケットを2人だけの符牒で「テソロ」と呼んでいた。誰も知らないハズの「テソロ」のことを何でその化け物は知っていたのか・・・・・・

少年2人の心中、察するに余りある。ちなみにレミーの家族は念のためすぐさま小屋の床下をチェックしたが、この時もブラケットは見つからなかった。勝手な行動をしたことが大人たちにバレるのが怖かったのだろう、ホセとレミーは翌日ブラケットを取り出し、箱に入れてホセの家の下に埋め直したという。

しかし月日が経つうちに、少年2人はこの宝物のことをあまり気にかけなくなっていったようだ。ホセ・パディージャは1954年にカリフォルニアへ、レミー・バカは1955年にワシントン州へと、それぞれ家を出て移り住むことになった。生年から計算するとホセは18歳、レミーは17歳の頃である。

大切だった「宝物」はずっと地中に埋まっていたことになるが、1963年に帰省したホセは、かつて埋めたもののことを思いだし、掘り出してみた。とりあえずホセは、この「ブラケット」をカリフォルニアに持ち帰って自宅のガレージに放り込む。

当時のアメリカでは幾多のUFO事件が社会の注目を集めるようになっていたものの、かつての少年たちは変人扱いされることを恐れてか、自らその体験を公にしようとはしなかった。だが、やがてUFO研究家たちはかつてサンアントニオで起きた事件のことを知り、調査を始める。そのプロセスの仲でこの「宝物」は再び注目を集めることになるのだった。

その辺りの経緯について触れておくと、長じたホセとレミーはその後ずっと音信不通になっていたのだが、たまたまレミーが祖先の系図作りをしようとネットで情報を収集していたところ、2001年になって偶然ホセの息子と出会う。そこから旧交を温めることになった二人は、「そういえば・・・」と例のブラケットのことを思い出す。

これは前もちょっと触れたところであるが、やがて二人の子供時代の友人、ベン・モフェットが地元で新聞記者をしていることを知ったレミーは、例の事件のことを彼に話す。これが2003年に記事になったのが契機で、ライアン・S・ウッドやティモシー・グッドといったUFO研究家たちが調査を開始。以後、たぐいまれなUFOの「物証」として再発見されたブラケットはその一部をカットされてはたびたび成分分析に付されてきたという。

ただし、今のところこの物体は通常のアルミニウム・シリコン合金であるという結論になっているらしい。そんなこともあってか、本書を読む限り、ヴァレはこの金属部品は明らかに「地球製」であると考えているようだ。・・・読者諸兄もちょっぴりガッカリされたのではないでしょうか(笑。

ちなみにこの部品について、ヴァレは以下のような推理を披瀝している。

これはUFOの回収作業にきていた軍人たちが持ち込んだ何らかの部品――さもなくばUFOが墜落前に激突した無線タワーから飛び出した部品で、兵士たちはたまたま手近にあったこの部品を電源コードを巻き取るような仕事に転用し、そのままUFOの中に放置していたのではないか。ただ、困ったことにその部品はいつの間にかなくなっていた。それは民間人がこっそり現場に来ていた可能性を示唆しているし、軍がUFO回収作戦を極秘裏に行っていたことの物証ともなりかねない。軍当局がホセ家を「家捜し」した背景にはそんな事情もあったのだろう――そんな意味のことをヴァレは言っている。

ということで、とりあえずこの「ブラケット」は、「エイリアンの遺物」のような大それたものではないと言えそうだ。だが、それなら物置小屋に現れた不気味な生き物がこの「ブラケット」を探していたというのは一体何だったのだろう? 部分的に解明されてはいくんだが、なんだか釈然としない部分が澱のように溜まっていく。それがUFO現象というものなのである。(つづく


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ちなみに上の写真はネットで拾った「ブラケット」の別カットである。ヴァレはこの部品について、エアモーター社 Aermotor Company が製造している鋳物部品(型番A585)に似ていると言っている。リンク切れに備えて下にそのパーツの写真を貼っておくが、確かに両者はなんとなく似ている。
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さて、前回その発端をご紹介した「サンアントニオ事件」であるが、これが本当に起こった出来事であるならば、UFOの墜落&搭乗員の目撃という要素を含んだ相当にファンタスティックな事案であることは間違いない。

そうなると当然ここからは米軍当局による墜落物体の回収やら何やらという展開が予想されるわけであるが、そう、まさに事件はそんな方向へと転がっていった。加えて――これは前回もちょっと触れたけれども――目撃者の少年2人は事件の物証(かもしれないもの)をゲットしたのである!

というわけで、今回は「サンアントニオ事件のその後」を引き続き追っていきたい。

謎の墜落事件があった翌日、すなわち1945年8月17日(金)は何事もなく一日が過ぎた。だが、18日(土)には新たな動きがあった。この日、目撃者のホセ・パディージャ、レミー・バカを案内役に、ホセの父親ファウスティーノ、そしてかねて知り合いの警官エディー・アポダカが墜落現場に向かうことになったのである。

4人が現場にたどり着くと、例のアボカド型の物体は二日前と同じ場所にあった。ただし、前回目撃した不思議な生物の姿は全く見えなかった。それから大人2人は、子供たちを遠いところに待たせたまま墜落した物体の内部へと入っていった。その間、およそ5分から10分。しかし、戻ってきたファウスティーノたちは、そこで何を見たのか全く語らなかった。ただ「厄介ごとに巻き込まれてはいけない。このことは誰にも話すな」とだけ息子たちに告げた。唯一「あいつらはいたの?」という問いに対しては、「誰かが連れていったのだろう」という答えが返ってきたという。

*余談ながら、この現場再訪の際にはいささか不可解な出来事があった。4人が現場を見通せる丘に到達した時、当然ながら彼らは視界の中に墜落物体の姿が見えるものと思った。ところが、そこから見えるはずの物体がどこにもない。不審に思いながら近づいていくと、今度は彼らの面前にその物体が姿を見せたのだという。トリビアルではあるがどこか引っかかるという意味で、いかにもUFOめいたところのあるエピソードである

このあと4人はいったん帰宅するが、子供たち2人は現場が気になって仕方がない。その日の午後、子供たちは馬にまたがって、2人だけでこっそりと現場に戻ってみた。すると、そこには軍用ジープと、墜落した物体の一部とおぼしきものを拾っている軍人たちがいた。いよいよ「軍当局」の登場である。しかし時間ももう遅い。2人はそれを見届けると再び家へと帰っていった(ちなみにヴァレは、この作業にあたった兵士は原爆実験が行われたホワイトサンズ・ミサイル実験場から派遣されたものとみている。実験場内の兵舎がどこにあるのかは分からんが、グーグルマップでみると現場からはザッと60マイルとかいう感じのようである。それだったらアメリカの感覚だと比較的容易に往来できた距離だったのかもしれない)。

次いで翌8月19日(日)である。レミーがホセの家に立ち寄ったところ、そこにはアヴィーラという名の陸軍の軍曹が来ていた。この軍曹はホセの父親にこう告げた。「あんたの地所に実験用の気象観測気球が墜落してしまった。回収するためにはそこに車両などを持ち込まねばならない。ついては牧場のフェンスを一部切り取ってゲートを作り、現場に向かう道路も敷設したい。それから、その場所には誰も近づかないように注意してくれよ」。父親のファウスティーノにこの要請を拒否する選択はなかった。その翌日には実際にゲートや道路の敷設作業が始まったらしい。

さて、「この件にはかかわるな」と釘をさされたホセとレミーはそれからどうしたか。実のところ、好奇心旺盛な2人にはおとなしく引き下がる気は毛頭なかった。

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目撃者の証言に基づいて描かれたと思しき墜落物体のイラスト。本文中には長さ約25-30フィート×高さ14フィートといった数字もあるが、ここには違う数字が入っている


現場付近の地形を熟知している2人は、それ以降、灌木などに身を隠しながら軍の回収作業を連日見守った。現場には大きなクレーンやトレーラーが持ち込まれ、墜落した物体をトレーラーの荷台に載せる作業が続けられた。若い兵士たちは周辺に散乱していた部品を拾い上げる作業もしていたが、彼らはそうして拾ったものを時に地面の裂け目に投げ捨てたりもしていた。ちなみにホセは、この兵士たちの不審な行動について「面倒な仕事をさせられるのに飽いてそんなことをしたのではないか」と語っている(!)。加えていえばその兵士たちは、食事をとるためにしばしば持ち場を離れ、サンアントニオの街場にある「バー&カフェ オウル」に通っていたともいう。

正体不明の飛行物体が墜落したのだとすれば、そんな呑気な態度でいられるワケがないという気もするが、ヴァレは「軍当局は突然の出来事に事の重大さを十分に認識できていなかったのではないか」という意味のことを言っている。いずれにせよ、ここは目撃者の証言の信憑性を考える上での一つのポイントなのかもしれない。

*ついでにちょっと余計なことを書いておくけれども、ホセとレミーの学校は当時どうなっていたのだろう。この事件があったのはちょうど第2次世界大戦が終わった直後なのだが、毎日現場通いをしていたということはヤッパ小学校は休校だったのだろうか? それともサボっていたのか? どうでもいいことかもしらんがリアリティというのは大事だと思うのでここはちょっと気になった


やがて墜落した「UFO」がトレーラーに固定され、搬出される日がやってきた。これは8月23日(木)もしくは25日(土)ということでどうも日時がハッキリしていないようなのだが、現場の兵士たちは、何とこの時もまた仕事の途中で「バー&カフェ オウル」へと食事に行ってしまった。これを見届けたホセとレミーは思い切った行動に出る。西日が差していたというから午後も遅い時間帯だったと思われるが、トレーラーの荷台に飛び乗ったホセは、物体にかぶせられたターフをくぐってその内部へと侵入したのである。

物体に開いていた「穴」は、どうやらパネルが吹き飛んでできたもののようだった。内部は金属でできているようで、上部には透明な「ドーム」のようなものがピョコンと飛び出しているのも見えた。イスや機械類などはなくガランとしていたが、唯一、壁面には何か部品のようなものがぶら下がっていた。そこでホセは、兵士たちが置いていったとおぼしきチーターバー(バールのようなもの)を近くで見つけ、それを使ってこの部品をもぎ取ってしまった。大冒険の末に「お土産」を手にした2人は、かくて勇躍家へと帰っていったのだった。

さて、その「お土産」がそれからどんな運命をたどったかというと、そこはあとでまた縷々説明していきたいとは思うが、とりあえず言っておくと実はこの部品、いまも失われることなくヴァレたちの手元にある。写真もある。こういうヤツである。

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本書では、その部品は形状から「ブラケット」という風にしばしば呼ばれている(念のため言っておくと、ブラケットというのは棚を支えるために壁面に取り付けられる金具のようなものである)。それが本当に墜落物体の部品であったなら、すなわちこれはUFOの実在を示す貴重な物証ということになる。後で述べるけれども、彼らがこの事件の際に拾った別の部材、すなわち「金属ホイル」や「エンジェル・ヘア」はみんな行方不明になってしまった。そうすると、唯一の物証であるこのブラケットというのは途方もない宝物なのではないか――。

・・・と言いたいところなのだが、この写真を見るかぎりでは何の変哲もない金物みたいである。とても謎の飛行物体の部品には見えないのである。「なんだんだこれは」という感じである。ただ、話はそれで終わらない。この「ブラケット」をめぐる奇っ怪な出来事がほどなく起きる。(つづく
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それでは「サンアントニオ事件」というのは何だったのか。今回はヴァレ&ハリスの「Trinity」に拠って、その概要を紹介してみたい。
………………


1945年8月16日の木曜日。米ニューメキシコ州サンアントニオに住んでいたホセ・パディージャ(当時9歳)と、年少の友人であるレミー・バカ(同7歳)は、馬に乗って放牧地へと出かけていった。

サンアントニオというのは、「いかにもニューメキシコ」という、荒涼とした土地の只中にある小さな集落だった。住人たちは賃仕事にも出ていたが、放牧の仕事はそれぞれの家にとっては貴重な収入源である。第二世界大戦の影響ということもあったのだろう、年端のいかないホセたちも、当時は日々の牧場仕事を手伝ってくれる貴重な労働力であったのだ(余談ながらこの本には、そんな時代背景もあって当時のホセなどはまだ9歳の分際でフツーにクルマを運転していたという話も出てくる。ホンマかいな?)

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 少年時代のホセ・パディージャ


さて、二人がこの日に出かけたのは、ホセの父親に仕事を頼まれたからだった。「放牧していた牛の中に出産間近の雌牛がいる。その様子を見てきてほしい」というのである。岩場に来たところでそれ以上馬が進めなくなると、二人は徒歩で先に向かうことにした。やがて彼らは、その雌牛と無事生まれた仔牛とを無事確認することができた。ひと安心してとりあえず持参した弁当を食べようとした頃、一帯はひとしきり激しい嵐と豪雨に見舞われたという。

さて、嵐もおさまって「もう一回雌牛と仔牛の様子を見ていこう」などと彼らが話していたところ、突然大きな爆発音がした。

時間はおそらく午後4時か5時。ちょうどその1か月前、つまり7月16日には人類初の核爆発実験「トリニティ」が数十キロ離れた「グラウンド・ゼロ」で行われており、その物凄い爆発については二人とも鮮明な記憶があった。だからまず彼らは「また核爆発があったのか?」と考えたという。ちなみに「トリニティ」の爆発現場からみると、ホセの家は北西18マイル(約29km)、事件現場は北西25マイル(約40km)の地点にあった。いずれも相当な至近距離である。なお、「この核実験と事件には何らかの関わりがあったのだ」ということを後にヴァレは言い出す。が、その点については今は措く。いずれ論及することにしたい。

閑話休題。爆発音が聞こえた後、渓谷を幾つか越えた辺りに煙が上がった。二人が近くまで歩いていったところ、地面がグレーダーで削られたかのような溝が向こうまでずっと続いていた。その深さは1フィート(約30cm)、幅は100フィート(約30m)。溝の先には何があるのか。彼らは道のようになった溝を前に進んでいったが、足の裏には熱が感じられた。辺りの灌木は燃えていて煙が上がっていた。

やがて2、300フィート(約60-90m)先に何かが見えた。彼らが双眼鏡越しにみると(牧場の仕事上必要なので双眼鏡は常時携帯していたらしい)、そこにはアボカド型の物体があった。大きさは長さ約30フィート、高さ15フィート。側面には穴が開いていた。さらに物体の脇には身長4フィートほどの小さな生き物がいた(3体という証言がある)。淡い灰色のつなぎの服を着ており、体に比して頭は幾分か大きかったというが、その頭部はカマキリに似ていた。その生き物は、何やら空中をスライドするようにスーッスーッと動き回っていた。

その生物が発していたのかどうかは分からないが、苦しんでいるウサギか新生児の泣くような声がした。レミーの証言では、そのとき頭の中に「イメージ」が浮かび上がり、彼らの「悲しい気持ち」が伝わってきたという。

ホセは「彼らを助けよう」と言った。だが、年少のレミーはすっかり怖じ気づいてしまった。辺りが暗くなり始めたこともあって二人はそのまま家に帰ることにした。ホセの家で話を聞いた父親は、州警察に連絡をすると言った。
………………



以上が「事件初日」の顛末である。が、ここで補足的に言っておくべきことがある。

まずは現場近くにあった「溝」の件である。要するにこれは、墜落した物体が地上を滑走していった時に出来たものだろうとヴァレたちは結論している。当時近くには高さ20mほどの軍用の無線タワーがあり、ホセは「その物体は飛行中にタワーにぶつかって墜落したのだろう」ということを言っている。もちろんその瞬間を二人が目撃していたわけではないのだが、ホセは事件後そのタワーのところにいって、南西角にかなりの損傷があったことを確認したという。

もう一つ、この最初の出来事があった日、彼らは現場近くに散乱していた墜落物体の「破片」らしきものを拾い、持ち帰っている。一つはクルクルと丸めても自然と広がってしまうという、つまりはUFO話の定番ともいえる形状記憶合金のような金属ホイルである(レミーの証言では幅約4インチ、長さ15インチだったという)。さらにこれとは別に、今日の光ファイバーを思わせる繊維状の物体――彼らは「エンジェル・ヘア」などと呼んでいる――も彼らは如何ほどか拾ったらしい。

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「グラウンド・ゼロ」からの距離を示す一帯の地図

ただ、この事件にはなお「続き」があった。目撃者の少年二人は、米陸軍が現場で行った墜落物体の回収作業をひそかに観察し続ける。彼らはその際、スペイン語でいうTesoro――つまり「宝物」と名づけた謎の物体を手に入れることにも成功した。以降は次回。(つづく


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本題に入っていく前に、先ずはこの『Trinity』という本の成り立ちから説明しておこう。

前回述べたように本書は1945年8月に米ニューメキシコ州で起きたとされる「サンアントニオ事件」をリサーチしたものだが、これはイタリア生まれの女性研究者、パオラ・ハリスとジャック・ヴァレの共著という形になっている。

一読すると実際の執筆者はヴァレであるようだが、ハリスは彼に先んじて調査に取り組んでおり、本の中ではそうした過去の蓄積を生かすかたちで、彼女による目撃者へのインタビュー記録が延々と引用されていたりもする。共著という体裁になっているのはそのような経緯を踏まえてのことなのだろう。

で、ついでと言ってはナンだが、この事件が世に出た経緯もここでザッと押さえておこう。まず2003年、目撃者たちの幼なじみだった地元紙のベン・モフェットなる記者が、たまたまこの話を耳にして記事を執筆したのが全ての始まりだったようだ。さらにこの事件はライアン・S・ウッドの『MAJIC Eyes Only』(2005年)、ティモシー・グッドの『Need to Know』(2007年)といった著作の中で紹介されたというンだが、信憑性が疑われたのか、当時は殆ど注目を集めなかったらしい。

そんな中で初めて本格的な調査に乗り出したのがパオラ・ハリス。2010年から目撃者へのインタビューや現地調査に着手していた彼女は、やや遅れて2017年から独自の調査を始めたヴァレと邂逅。両者は2018年から手を組むことになる。そんな2人が共同研究の成果をまとめて2021年5月に刊行したのがこの『Trinity』というわけなのだ。

ただし。

ここで言っておかねばならないことがある。正直にいうと、オレにとってこの本はとても読みづらかった。とりわけ本書の中には、さっきもちょっと言ったようにパオラ・ハリスによる目撃者へのインタビューが何度も何度もしつこく出てくるのだが、おそらくそれは録音をそのまま文字起こししたもののようで、やたらと冗長である。そしてオレが英語の口語表現というものを殆ど解さないこともあるのだろうが、意味の取れないところが多すぎる。そもそもハリスはピント外れの質問ばっかりしてるような気さえする。問題はそれだけではなくて、内容的にも全巻を通じて前後で話が矛盾するような記述はたくさん見受けられる。時系列も判然としないところがある。総じて作りが「雑」なのである。

おそらくその辺りと関連することだと思うのだが、実はこの本は自費出版で刊行されている。以下はオレの全くの想像であるが、おそらくこんなことが実際にあったのではないか。



――ヴァレとハリスは、とりあえず急ごしらえで書き上げた原稿を出版社に持ち込んだ。ヴァレといえばこの世界ではビッグネーム。原稿を受け取った編集者も前向きに検討してみた。だが、読んでみるとちゃんと推敲された形跡もないし、相当手を入れなければならない。

「ちょっとこのままでは出せませんなあ」。そんな話になって原稿を突き返されたヴァレは考えた。「ごちゃごちゃ五月蠅いこと言われるンだったら、いっそのこと自費出版で出しちまうか・・・・・・」



もちろん「この本にはよく分からないところがある」というのはオレの英語力不足にも原因があるのだろうが、アマゾンのレビューをみてたら、とりわけインタビューの丸写し部分について「酷い」とか言ってる人がけっこういた。となると、オレの臆測もまんざら見当外れではないような気がする。おそらくこの本は、原稿を読んで分からない箇所をチェックしなければならない、いわば「最初の読者」としての編集者が不在のまま世に出てしまったモノなのではあるまいか。

というわけで本書にはいささか残念なところもないではない。しかし、いちおうこちらもヴァレ・ファンの端くれである(笑)。そんな本であっても行間から2021年現在のヴァレの思索を読み取ることはできるハズだし、そこんところを簡単に諦めてはイカンだろう。だからこそオレは今回、めげることなく内容紹介をしてやろうと思ったのだった。

若干遠回りにはなってしまった。が、ともあれ予備知識を頭に入れていただいたところで頃合いは整った。次回からはいよいよ「サンアントニオ事件」のあらましをご紹介していきたい。(つづく・・・たぶんw)

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当ブログではしばしば世界的ユーフォロジストであるジャック・ヴァレの仕事を論じてきた。そんな流れもあって、現在82歳のヴァレが、やはり研究家のパオラ・ハリスとの共著として昨年刊行した新著『トリニティ Trinity』については先だって簡単に紹介をしたところであるが、このほどどうにかこうにか全巻を読了した。英語力不如意のためよく分からんところもあったけれども、せっかくなのでこれから何回かに分けてその概要を紹介していきたい。

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ヴァレが新しいUFO本を出す――そんなニュースを聞いたのは昨年の春だったろうか。大御所の久々の新著ということで、やがてアマゾンに出てきたその本をオレはさっそくポチッたのだが、実のところ、落手をする前にネットを通じて漏れ伝わってきたその内容には何だか危惧のようなものを感じていた。どういうことかというと、ひょっとしてこの著作でヴァレは年来の主張を引っ込め、変節・転向してしまったのではないかという疑念が兆したのである。あるいは高齢になったヴァレは耄碌してしまったのか、とも。

なぜそんな危惧を抱いたのかを理解していただくためには、先ずはユーフォロジーの世界におけるヴァレの立ち位置というものをおさらいしておいた方が良いだろう。

そもそも彼がこの世界で一目置かれてきたのは、「UFO=宇宙人の乗り物」という従来の「定説」に徹底的かつ怜悧な批判を浴びせてきたからである。ヴァレももともとはET仮説寄りのスタンスを取る研究者ではあった。しかし、研究を進めていくうち「どうもそれはオカシイ」ということに気づく。そのロジックについては以前紹介したこともあるのでここでは省くが、確かに凡百の研究家が当然視してきたUFO地球外起源仮説(いわゆるET仮説)というのは冷静に考えるとあまりにも無理がありすぎる。

かくして彼は、1970年頃になってすこぶるユニークなテーゼを打ち出した。つまり「UFOを飛ばしているものたちはどこか遠い宇宙から来たのではなくて、我々とともにこの地球にずっと存在し続けてきた超自然的存在ではないか」というのである。

これは一般に「Interdimensional hypothesis 多次元間仮説」などと称されているようだが、似たようなことはジョン・キールなどもほぼ同時期に主張し始めていたから、このトレンドはユーフォロジーにおける「ニュー・ウェーブ」とも言われた(実際のところ、高名なUFO研究者であるアレン・ハイネックあたりもこの説には如何ほどか説得されかかったフシがある)。そのような「革命家」として、彼は世界のUFOファンの間にその名を轟かせてきたのである。

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ここで話を元に戻すのだが、そんなところに出てきたのが今回の『Trinity』である。ヴァレがこの本で論じているのは1945年夏に米ニューメキシコ州で起きたとされる「サンアントニオ事件」であるワケだが、ひと言でいえばこれはUFOの墜落事件で、当時子供だった目撃者2人はその「搭乗員」とおぼしき生命体を目にしたほか、その残骸を米軍が回収していくさまをも間近に観察した――という触れ込みの事件である。そしてヴァレは、本書で「そうした事実は確かにあった!」と主張しているのだという。だが、先に述べたヴァレの来歴からいうと、これはなかなかに厄介な話なのだった。

何となれば、そもそもこの手のUFOの墜落事件というのは――例の「ロズウェル事件」がそうであったように――イコール「エイリアンが操縦する宇宙船の墜落事件」という文脈で語られてきた(業界では一部に「それは地球人の手になる秘密兵器だった」という説もないではないが、流石に「どこにそんなテクノロジーがあるんじゃい!」という話になるのでそれが珍説の域を出ないのは言うまでもない)。

物理的な実体としての飛行物体がどっかから飛んできて墜落した。そしてヴァレがその事実を認めている。ということは、彼はひょっとして「ET仮説」に宗旨替えをしちまったのではないか。これまで彼が言ってきたのは何だったのか。裏切りではないか。どうしてもそういう疑惑が浮かび上がる。

ということで、いよいよ入手した本をビクビクしながら読み進めていくと、この点についての疑念は晴れた。つまり彼は今でも「UFOは宇宙から来たものではない」という意味のことを主張していた。つまり「ここにきてヴァレが転向した」というのは濡れ衣であった。ただ、それは同時に「えっ、じゃあ墜落したUFOってどこから来たのよ?」という疑問を召喚してしまう。そこで何とか読者を納得させるようなロジックを構築できているかどうか。疑惑は晴れてもまた別の難問が浮かび上がる仕掛けなのだった。

よくよく考えてみれば、それは半ば予期されたことでもあった。ヴァレだって「物理的なブツとしてのUFOは存在する」という事はずっと前から言っていた。ということは「宇宙じゃないならどこから来たのよ?」というエニグマは、宙ぶらりんの状態で放置されていたのである。「多次元間仮説」とかいってもその「次元」というのは何だか意味不明で、何を言っているのか分からない。「どこから?」問題には、彼もいつかは正面からぶち当たらざるを得なかった。つまり「ここに飛行物体が飛んできて落ちました、搭乗員もいました」という話を全肯定しちゃった以上、彼はそこから一歩先に進まざるを得ない。いよいよラスボスと対峙せざるを得なくなったのである。それでは彼はその辺を納得できるような形で論じ得たのかどうか――そこのところは今は言わない(笑)。できればこのエントリーの最終回にでもまた触れてみたいと思っているので、何だったらたまに覗きにきてください(爆)。

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さて、「ヴァレは変節した?」あるいは「耄碌した?」という当初の懸念に即していえば、この本にはもう一つ気になるポイントもあった。

ヴァレは「このサンアントニオ事件はインチキではなくて本当に起きた出来事だ」と断じているワケであるが、もともとヴァレは「ロズウェル事件」をはじめとするUFOの墜落ー回収事件については懐疑的なことを言っていた。ところが今回彼は何だかとても素直に目撃者の証言を受け入れているようだ。「容易に騙されない男」というイメージで売ってきた彼が、なんだか判断基準がずいぶんと甘くなってしまったのではないか。「やはり耄碌?」という疑念も浮かぶ。

となると「UFOとはどこから来ているのか」みたいな思弁を繰り広げる前に、我々にはやることがある。事実として何があったのか。サンアントニオ事件では何が起こったのか。未曽有の事態が生じたというヴァレの判断を信用していいのか――さしあたって確認しなければならないのはそこである。(つづく

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