松閣オルタ先生から恵投いただいた『増補新装版 オカルト・クロニクル』(二見書房)を読みおえた。
この方面に興味がある方なら先刻ご承知であろうが、松閣オルタ先生というのは「オカルト・クロニクル」というサイトで長年健筆を振るってこられた在野のオカルト研究家で、心霊現象からUFO事件、さらには未解決の猟奇事件にいたるまで古今東西の奇譚について山のような資料を渉猟かつ取材してその真相を探究している快男児である。
UFOファンである小生も何年前だったかは忘れたがたまさかそのサイトを発見してから快刀乱麻を断つが如き推理とその軽妙で「くすぐり」に満ちた文章をずっと愛でてきたのであるが、果たしてその宝玉の如き作品群は有能なる編集者の目にとまるところとなったのであろう、2018年にはこのサイトから幾つかの論考をピックアップした書籍「オカルト・クロニクル」が洋泉社より刊行されて洛陽の紙価を高らしめたのだった。
実はそのご、同書は思わぬ出来事に巻き込まれる。版元の洋泉社はつぶれ、同書はあえなく絶版となってしまったのである。が、おそらくは全国20万人のオカルトファンのカムバックコールが澎湃と高まったが故であろうと思うのだが、このたび同書は加筆された新版としてめでたく復活を果たしたのだった。
というわけで今回、なんか知らんが松閣先生から送っていただいた二見書房版を早速拝読したのであるが、小生も年々ボケが進んでいるようで洋泉社版の細部は忘却しており、今回あたかも初読のようにしてこの本を読めたのは実に喜ぶべきことであった(泣。
ちなみに今回の新装版のコンテンツは前著とマルマル同じというワケではなく、そのご明らかになった新情報を踏まえての加筆がされていたり、新ネタやムック本に掲載された他の論考も収録されているので、前の本を持ってる人も買って損はない。
ちなみに今回の新装版のコンテンツは前著とマルマル同じというワケではなく、そのご明らかになった新情報を踏まえての加筆がされていたり、新ネタやムック本に掲載された他の論考も収録されているので、前の本を持ってる人も買って損はない。
それで、本の内容はここでオレがいちいち紹介せずとも読んで笑っていただくのが一番良いので改めて触れないが一つだけ言っておきたいことがあって、それは何かというとこの松閣先生は基本的に文体がふざけているので見過ごされがちだけれども実はけっこう深いことを論じていたりするということである。
たとえばこの本の中では国内でおきた謎の失踪事件が二つほど取り上げられているんだが、そうしたくだりで松閣先生は民俗学者の小松和彦氏なんかを引用しつつ昔の人間には「異界に連れ去られた、天狗に連れ去られた」みたいな説明でこういう悲しむべき事件を腹におさめ、諦め、あるいは不承不承ではあれ納得する知恵みたいなものがあったけれども現代人はそうはいかんのよなあみたいな話をして慨嘆しておる(なおこれはオレ流に意訳した表現で実際にこういうコトバ遣いをしているワケではない悪しからず)。
さて、その上で松閣先生が失踪事件について持ち出す仮説はたとえば「北朝鮮工作員による拉致」説だったりするのだが、残念ながらと言うべきか、読む側からすると他のオカルトっぽい解釈なんかではなくこういう身も蓋もないこの仮説が一番すんなりと腹落ちしちゃったりするのだった。世知辛い話ではあるが、要するにオカルトは現代においてはなかなか生きづらい。なんだか寂しい。そういう時代批評になっている。
そういうわけでコレは単に読み捨ててオシマイの本ではない。再読三読に耐える本なのである。ちなみにまえがきには続編刊行のプランもあるようなことが書いてあった。従ってこの新装版はゼヒ多くの人に買ってもらって、第二弾刊行を後押ししていただかねばならない。(おわり)
【追記】そうだ、あと一つ気になったことがあって、それは松閣先生はこの本の中で時々ブラックなジョークをとばして我々読者を笑かしてくれるンだがそのつど「冗談だが」みたいな言い訳を付している。こういう風に書かないと怒って抗議してくるバカがいるからだと思うが、そんなバカは放っといてエクスキューズなしにしたほうが洒落ててエエと思うた