2023年04月

いまの天声人語の書き手の中には帰国子女がいるらしい。

この点については先に当ブログでも触れたところであるが、改めて繰り返すならば、文脈的には何の必然性もないのに「オレ(若しくはワタシ)、イタリアで高校生やってた時に現地でエゴン・シーレみたことあってさー」といって天声人語子が「自慢」する回があったのだ(もひとつ付け加えておくと、これは朝日新聞主催のエゴン・シーレ展宣伝のために書いたものであるようだ)。

その時は、なんだかこうやってお育ちの良さ・文化資本の潤沢さを誇示するような姿勢は何とも鼻持ちならないということを書いたワケだが、さて、今朝の天声人語でもまた「帰国子女ネタ」が使われていた。

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その一部をここに貼っておく。

これはそもそもどういう話かというと、村上春樹がこのあいだ『街とその不確かな壁』と題する新刊を刊行したのであるが、実はこの作品、彼が若い頃に書いた『街と、その不確かな壁』という中編を書き直したもので、今日の天声人語はそのあたりのことをネタにしている。

いや、別にそこから深い教訓とかは全く得られないので内容はどうでもイイのだが、気になったのは上にも貼った一節である。要するにここでは、「自分は英国で大学生活を送ったのだが当時現地の図書館で『街と、その不確かな壁』を読んだことがあったなぁ」ということを言っている。

「ふむ、別にアンタがイギリスでその作品を読もうが読むまいが関係ないだろ。それこそ何かの伏線なのか?」と思ってオレは先を読み進めていったのだが、なんとコレは別に何の伏線でもなく、このエピソードは全く回収されないまま終わってしまったのだった(強いていえば、春樹はのちに世界的に有名になるというくだりが関係しているという主張もありうるかもしらんが、別にこの人が英国の大学で春樹を読んだことと春樹の国際化は全く関係ないので無理筋である)。

さて、そうしてみると、この「英国で読んだ」というくだりは全く論旨に関係がない。つまるところ、「オレ(若しくはワタシ)って若い頃から世界に出て国際派だよなぁ。なんたって春樹の『街と、その不確かな壁』読んだのもイギリスだったしさぁ」ということを書き手は言いたいのだろう。ドヤ顔が見えるようである。

かくて今回の天声人語からも「帰国子女であるオレ(もしくはワタシ)ってスゲエ」という嫌味なエリート主義が行間からにじみ出てしまった。今日の書き手が前回の「イタリアでエゴン・シーレ展をみたオレ」と同一人物かどうかは定かでないが、仮にその手の書き手が二人いたとしたらそれはそれでスゲーと思う。

そしてとりあえず言えることは、前回オレが親切心から「こういう書き方は止めたほうがイイよ」と書いたことは彼らに全く伝わっていなかったということで、つまり彼らはこんな辺境ブログの天声人語批判など全く見ていないのである(当たり前だがw)。




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けさの朝日新聞に、昨年まで天声人語を担当していた記者が「あのコラムを書くにあたって心がけていたこと」というようなテーマで原稿を書いていた。

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これはその一部であるが、なかなか正直に書いてあって大変宜しいと思った。

要するに「なんか世間で話題になっておるテーマがあるのでソコに引っ掛けて書かないとイカンがなかなかうまいこといかず適当に小手先で原稿をデッチ上げてしまい、読者にお叱りを受けたことがありました」ということを言外に匂わせている。

この記者がわざわざこんな辺境サイトを覗きに来るわけはないのでここでいう「読者」がオレである可能性は3ミクロンもないのだが、オレが再々述べてきたようなことは連中も如何ほどか反省しているようであると知って「少し見直したゾ」といったところである。

今後もこういう反省の上に立ち、小手先の作文技術でごまかすようなことは禁じ手としていっていただきたいものである。(おわり)


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