ネタ切れなのでまた天声人語を批評してみよう(笑)。

けさの天声人語のネタはロシアの隕石。まぁ例によってグダグダなんか書いてるけれども、最終的には北朝鮮のミサイルの話をひっかけて「怖いのは自然より人間」とか言いだすのである。で、シメはこんな感じである。

天に星、地に花、人に愛という。されど天・地・人のうち、ひとり「人」だけが利害や欲で互いを痛め合っている。落ちてきた訪問者、人界を何と見ることだろうか。


今回も小生、なんかヘンチクリンな文章だなーと反射的に感じたのであったが、3分ばかり熟考してみたところろ、その違和感の淵源が判明した。

天声人語にはしばしば登場する「論理のパターン」というものがある。そのひとつに、動物とか昆虫を引き合いにだして「こういう生きものたちは一生懸命頑張っているんだが人間は全然ダメ。もっと反省しなさい」というのがある。いわば「無垢なるもの」の立場に「憑依」して(by佐々木俊尚)人間界を批判する、というパターンである。

以前も書いたように、そこで引き合いに出される動物とか植物というのは別に無垢でもなんでもなく、単に生存のために粛々と生きているわけだが、勝手に擬人化したあげくに感情移入して詠嘆するというのは浪花節に過ぎず、すくなくとも日本のクオリティペーパー(笑)であるならばそういうインチキで人を動かそうとしてはいけない。


ところがこの人は今回もまったく懲りずに同じ筆法を繰り出してきたわけで、さらに驚くべきことに、今度は「隕石という無生物」にまで憑依してしまったのである。「落ちてきた訪問者、人界を何と見る」とかミエを切っているが、もちろん隕石は何も見ることはできない。何の意志も意図もなく、単に物理法則に従って宇宙空間から地球に飛来しただけである。別に隕石サマに説教してもらう必要はない。北朝鮮が非道いというなら、そういう全然説得力のないロジックを用いてはいけない。呪術師じゃないんだから。

そもそも、天地人のなかで「人」だけが利害や欲で互いを痛め合っている、とか言ってるが、そりゃ天体現象が利害や欲をもっているわけがないだろうが。生物としての人間が「利害」や「欲」をもって生きているのはアタリマエで、そういう人間のありようがお気に召さないのであれば、全人類を強制収容所に入れて思想改造するか、あるいはいっそのことハメツさせたらどうか。結局のところ、ご自分をそのような神の視点において「人類」に説教をたれようというところに、この御仁のはなもちならないエリート主義がみえてくる。全然反省しない天声人語。

【追記】

あと、「怖いのは自然より人間」とか言い切ってるんだが、これも東日本大震災を体験したオレたちにとってはいささか納得のいかんところではなかろうか。確かに北朝鮮からミサイルが飛んでくる可能性はゼロではなかろうが、万一の時には「あぁオレたちの力は及ばなかった、何とかできたかもしれんのになあ」という事になるのだから、責任の所在は、まぁどっかにあるのだろう。すくなくとも怒りを持ち込む先はある。

対して天災はどうか? おそらくどのような対処をしていたとしても、どうしようもない局面というのはある筈なのだ。その意味でいえば、何処に抗議をできるわけでもない、尻の持ち込み先さえ無い天災というのは実に無慈悲である。果たして「怖いのは自然より人間」、だろうか?