
「東京都民である」と公言することには以前から何となく恥ずかしい気持ちがあって、それはたまさか俺の住んでいる街が東京都最東部は江戸川区の、そのまた最東部にあって、まかり間違えれば千葉県に編入されていたとしても何の不思議も無く、であればこそ「ここを花の都トーキョーと呼んでいいものか」という気持ちが内心どっかにあるからだと思う。そういえば、いしいひさいちの「おじゃまんが山田くん」のテレビアニメで、なんか「東江戸川三丁目~♪」とか歌ってたような気がするな。
閑話休題。とはいえ「俺の住んでるのはTDLの近くでね~」的な言い回しも可能であるからして、何となく湾岸=ベイサイド=悪くないジャン!的な詐術で聞く人を幻惑するすべもあったのだが、しかしなぁ、「やっぱ、ここ、イナカだわ」と思わざるを得ないのだ、最近の江戸川区みてると。
言うまでもない、このたびの原発事故にかかわる江戸川区の対応である。都内の潜在的ホットスポット危険地帯と目される東京東部各区は軒並み自主的に放射線量調査に取り組んできた。だが当区にあっては、ようやく6月27~28日、区内わずか19か所(笑)に限って、しかも都から貸与された安物シンチレーション・カウンター(俺もこないだ5万円で入手したDoseRAE2だw)を用いての測定を行ったのみ。その後、新たに何かアナウンスあるかな~と思ってみていたのだが、今んとこまったく動きはないらしい。
で、このたびの区議会には地区住民より放射線量測定をちゃんとやってくれ的な陳情が多数寄せられたというのだが、多田正見区長はいぜんやる気をみせていないという。先の「独自調査」はやっぱりガス抜きのための糊塗策だったのか!
なんか腹立った。んで、こんな弱小ブログではあるが、一寸の虫にも五分の魂、もういっかい多田正見批判をすることにした。もう何回も書いたことを蒸し返して書いたりしてるが、許せ、俺は多田正見ほどではないが年寄りなのだ(笑)。
しかしな、議会も議会だ。主要会派は揃って「独自測定しろ」ってスタンスらしいんだが、かといってこういう区長に翻意をうながす力もない。「不信任案だすぞ、ワレ」ぐらい言うたれや!
…とブチ切れてみせたところで、いったん冷静になって、区のHPなどみてみる。先の19か所調査を踏まえて「区内における人工放射線の外部被曝量は1mSvに及ばず。安心めされよ」というような話なのだが、そこには「人工放射線による内部被曝はゼロと考えても差し支えない」という暗黙の前提があるようだ。確かに今回、子供たちがどれだけ内部被曝している/するかはハッキリしないんだが、少なくとも区内の子供が内部&外部あわせて人工放射線を年間1mSv程度浴びるケースはざらにでてくるんではないか。ウチの子なんかでも年間1mSvはちょっと厳しいと思ってる。
何でそうなるかというと、大雑把な計算をしてみたのだった。
先週末、買ったばかりのDoseRAE2を持って家のまわりをブラブラ歩いてみたんだが、地上1mの空間線量はおおむね0.15mSv/h。この数字をキホンに考えてみる。江戸川区のHPが載せてる「家の中に16時間・戸外に8時間」という例の計算式では、自然放射線は0.05mSv/h・屋内での被曝量は屋外の4割と仮定してるようなのだが、とりあえずこの計算式に従って計算すると、人工放射線の外部被曝量は年間で0.5278mSv。もっとも、共産党都議団が5月末に「東京でもけっこうホットスポットっぽいところあるよ」って調査出すまで、俺などは愚かにも都の出してた高さ18メートル@新宿のデータみて「あぁ平年並みね。けっこうけっこう」みたいなお気楽状態だったンで、じっさいはこの間、わが家も比較的無防備でいるうちに相当被曝しちまったンじゃないかという疑いもある。
加えて、いま俺のマンションの部屋を測ってみると0.10mSv/hぐらいあって、「屋内の線量は屋外の4割ていど」という当局の想定は甘すぎるんじゃねーか、現実にはもっと被曝するンじゃねーかとツッコミたくなるところもある(ま、俺んちの中にホコリ状の放射性物質とか入り込んでて除染してねーだけ、という可能性もあるが)。その点、いろいろと細かいことを言うと異論があるわけだが、とりあえず年間0.5278mSvだけ余計に外部被曝する、ということでヨシとしよう。
もちろん江戸川区の論理だと「1mSv以下だから安全」で、メデタシメデタシ、はい一件落着となるわけだが、残念ながら、このほかに食物・水・呼吸などから内部被曝がある、というのは上にも書いた通り。人によっては内部被曝は「外部被曝の数倍みておくべきでは」みたいな議論もあるわけで、仮に2倍としてもこれでもう軽く1mSv/yearは突破してしまうのである。そして内部被曝がじっさいどれほどになるかは、いきなり福島の牛肉から高濃度のセシウムが検出されてしまうような時代なので、まったくもう予断を許さないのである。
あるいは、俺の郷里・長野県の松本市などは、さすが民度が高いというべきか(笑)、「給食に汚染の疑いのある食材は使わない」と高らかに宣言して子供のいのちを守る姿勢を打ち出しているのだが、江戸川区などは「ん? しょくざい? ナーニそれ?」みたいな暗愚丸出しの姿勢なので、そういう頭の悪そうな人々の言っていることは信じられなくなってしまうのである。そう、江戸川区の学校・教育委員会関係者の思考能力もミジンコ並みで、学校プールは大丈夫かという声に対しても「ぷぅる? おせん? なにそれ?」と理解不能のごようす。「子供のいのち」みたいな高度に抽象的な概念はもとより理解不能で、「ほぇ~?」とかいってアサッテの方角を向いてるというのが実態のようである。
やっぱり長野県民のレベルからみると、東京あたりの首長・自治体にはどうしても物足りないところがでてくるな(半分本気・半分ウソw)。もっとも東京の場合は地方から出てきて住んでる人が多いので、単純に「東京=ダメ」とも言い難いところがある。ちなみに江戸川区長の多田正見氏は愛知県出身らしい。ま、もちろん個人の資質の問題かもしれんのだが、やはり俺的には教育県・長野に比べると愛知の民度はかなり低いようだな、という心証が形成されつつある。とりあえず反論は認めんから(笑)。
ちと話がそれたようである。イヤ、正直いえば、俺は年間1mSvちょっとぐらいなら、おそらく子供であってもほとんど影響はないんじゃないか、と思っている。だがしかし、それは科学的に断定できないグレーな領域における、ある種の「直感」なり「信仰」なりのレベルの話であって、そんな判断は他人には強制できない。ちょっと煽られれば、俺だって「いやぁ1mSvだってアブねーかもなー」と心千々に乱れるわけであって、であればこそ、現実に1mSvを超す被曝、おそらくは数mSvの人工放射線の被曝が懸念される地域がけっこうある以上、行政はそれなりの手を打たねばならんだろう。
なんせ「年間1mSv」であったとしても、とりわけ子供についていえば身体にどんな影響があるかは厳密な意味では「ワカッテイナイ」。どんな科学者を連れてきても「ハッキリとしたことはワカラナイ」。ならば年間数mSvレベルだとどうなるんだろう? そう疑問に思うのは当然のことで、そういう事態を前に「いや大丈夫じゃネ。たぶん」とか言ってふんぞりかえっている区長はなんなのだろう?
多田区長にヤル気がないのは何故なのか。本当はご当人に答えてほしいのだが、ちなみに以前、HPから「区長への手紙」というのを出して「何で区で調査しないのか?」と聞いたところ、全然こたえになってない封書が返ってきたのでこれはもうダメだろう。彼がハッキリいわないので、もうここからは俺が独断で推理させてもらう。
第一の仮説は「彼の無知のゆえ」というものである。つまり田舎政治家たる彼は、現代社会を生きる政治家に不可欠な科学リテラシーをまったく欠いている、という仮説である。いわば多田氏=政治的低能説である。確かに直接的な因果関係はいまだ定まってはいないけれど、放置すれば甚大な被害が懸念されるような事態に対しては積極的に介入すべきだ――というのは、水俣病の教訓などからわれわれが得た「予防原則」という貴重な考え方なのだが、そんな語彙はおそらくこの老政治家の頭脳の中にはないのであろう。そういうことであったのなら、もすこし役所の担当者にでも話を聞いて勉強しておくれ。恥ずかしがらないでいいから。今からでも遅くないから。「予防原則」ってナーニ?って。
【注】ちなみにこの御仁、何かの会合で放射線の話しているときに「江戸川区は××デシベルだから大丈夫」とか寝呆けたことを口走っておられたという情報があるので、この多田氏=政治的低能説には一定の蓋然性がある、とみている。
第二の仮説。これは「何か利害関係があるのでやりたくない」という可能性。たとえばの話、区内でガッツリ調査してけっこう高いデータが出たらまずい、という事情がおありなのかもしれない。除染作業にはカネかかるし、江戸川野菜も売れなくなるだろうし、地元の大地主さんとかもお困りになるだろうし、とか。いろいろな「事情」が考えられる。でもまぁ実際にはかなり汚染されてたのをネグった結果、将来的に被害が出てきたとしたら、それは住民の健康とご自分の政治的立場をてんびんにかけて自分の都合を選んだということになるから、そういう政治をした人は問答無用で地獄の業火に焼かれることになるのだろう。もっとも地獄というものがなかった場合は多田氏の「逃げドク」になってしまうので、地獄の存在に確信がもてない俺としては気が気でない。まぁ多田区長の名誉のためにもこういうことはありえないと信じたいのだが、なんせ当人が万人に納得できる説明をしないのでこういう「利害関係最優先説」の可能性も否定しきれないのだった。
というわけで、いささか失礼かとは思うが、簡単にいいかえると①多田=頭が弱い説②多田=欲深説という2つの説が考えられるわけで、もちろん①+②、すなわち「多田=欲が深くて頭が弱い説」というのも論理的には成り立ちうるだろう。俺には思いつかないが、ほかに何か新説があるようだったら教えてほしい。
もちろん杞憂に終わればそれに越したことはない。しかし、少なくとも空間放射線量調査などというのは大した予算措置も要らないのだから、万一を心配する住民の不安をこうまで無視するについては十分な説明責任があってしかるべきなのだ。事実、東京東部の江戸川を除く各区はそれなりに一生懸命測定などして区民の懸念を払拭しようとしているわけで、その事実こそが多田正見氏の「不作為」に道理が全くないことを示している。にもかかわらずちゃんとした説明がないことに俺は腹を立てているのだし、いささか品を欠くとは思いながらもこんなエントリーを書いているのだ。
まぁ将来万一なんかあったとしても、その頃にはご当人は身罷られておられるだろうから「ヘヘヘ~、俺は痛くも痒くもないよ~ン」とかお考えなのかもしれぬ。でも20年後か30年後か知らぬが、不幸にして放射線による健康被害が目に見えて出てきた時には「あのとき多田区長が手を打っていたら…」というわけでウラミ骨髄、という人々がワンサカ出てくるはずだ。老婆心ながら言っておくが、今のうちに「将来の江戸川区ではタダという名前が蛇蝎の如く忌避される時代がくるかもしれないから心しておけ」とでも息子なり孫の方々にお伝えになっておくがよいのではないか。
なんかこういう言い方をするのは我ながらイヤミで嫌なんだが、確か区長のリコールをするにしても選挙があってから1年間はできない、とかいう話もあるので、今ンとこ、力無き庶民としてはこういうイヤガラセを言うぐらいしか手がないのだ。あるいは「恨む」「祟る」ぐらいか。番町皿屋敷の昔から、権力にもてあそばれる側が体制に一矢報いるにはそれぐらいしかないのである。
だから、前にも書いたような気がするが、こんな言葉が彼のもとに届くはずはないと思いつつ、俺としてはどうしても書かざるを得なかったのだ。こんな世の中がこんなもの書いたところで変わるなどとは思えないにしても。♪それでも私は書きたかった(岡林信康「手紙」)ってヤツ。
妄言多謝。
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