「セシウム汚染:汚泥が満杯、自治体ピンチ 下水処理場など」という記事を毎日新聞が書いている。放射性セシウムが濃縮された汚泥が各地の浄水場などから大量に出てきているわけだが、埋める場所もないし、いったいどうしたもんやら、と各自治体が困っている、という話だ。

記事によれば、浄水場の汚泥は「14都県で約9万2000トン」、下水処理場の汚泥や焼却灰は「13都県で約2万7000トン」、それぞれ処分先が決まらずに浮いているとのこと。俺の家の近くにも都の下水処理場があるので、ホント他人事ではない。こいつは困った。

で、考えたのだが、もうこういう状況だし、政府は思い切って各地のゴルフ場を強制収用して、そこに処分場を作っちまう、というのはどうか。今となっては、ゴルフも決して金持ち階級の道楽とはいえないのだろうが、この狭い国であんなに場所をとるスポーツをするというのは、よくよく考えれば贅沢の極みである。

俺はあんまりつきあいがないのでよくわからんのだが、愚考するに、原発推進の旗を振ってきた我が国の「ベスト・アンド・ブライテスト」の方々は、おそらくこういう優雅なスポーツが大好きなのではなかろうか。とすれば、ノブレス・オブリージュというのは大げさかもしらんが、そういうエライ方々も、今回のような国難にあたっては自分の楽しみをいかほどかガマンして「よし、この際、ゴルフはあまりに贅沢に過ぎるので放射性物質の捨て場に転用することにいたしましょう」とか言えばいいのじゃないか。

もちろん経営者の方々には買い上げにご協力いただかんといかんし、周囲の住民の方々にも補償なり何なりをする必要があろうが、まぁゴルフ場の周囲はもともと農薬汚染ギワクなども持ち上がることしばしばであるからして、ある程度の理解は得られるものとする。総じてゴルフ場は人里離れた山のほうにあるらしいから、水源地への汚染の拡大などに気をつければさほどの問題も生じまい。

ま、よく考えれば、昔から人間というのは「畏れ多くて近寄りがたい土地」みたいなものを思惟してきたわけで、現代文明が生み出した負の遺産としての「忌み地」が21世紀に出現しても、それほど奇異ではなかろう。

「むかし、原発というものがあってのぅ、それが爆発したのじゃ。で、このあたりにも放射性物質が風に乗って飛んできたんじゃが、それが下水処理場とかに溜まりに溜まって、やむなく、Golfっちゅうスポーツをする場所だったこの山の中に、運んで埋めることになったんじゃな。人間がいかに愚かな生きものか。この汚泥の山をみるたびに、ワシはそうやって反省しているんじゃ」。で、こんな風に土地のジジイが語りついでいく、と。

ということで、とりあえずはコンクリートプールでも作って、汚泥を密閉しとけばいいだろう。ちなみに、25メートルプールの容量はだいたい400トンぐらいかな。で、さきほどの記事に出てきた、行き場のない汚泥等が現時点で約12万トン。ふむ、割り算するとプール300個に収まってしまうのか。

ちなみに国内にはゴルフ場が2300以上あるらしい。一か所で面積が100ヘクタールぐらいあるとすると、これは3000メートル×3000メートルみたいな感じだな。この中に25メートルプールの百や二百作ったって屁でもないのではないか。するってーと、仮に一か所100個としても2300×100×400=92000000トン=9200万トンの容量があるということで、おぉ、まだまだ余裕ありますな~。

とまぁ、こんな机上の空論を語ってみたのも、「けっきょく原発はこれからも動かしていくしかないありません(キッパリ」みたいなことをいうエスタブリッシュメントの皆様が、なんかこの状況に全然「痛み」とか「畏れ」を感じてみたいで腹が立つからなのであった。アンタ方はいまこの状況で何か大事なものを賭けているのか。自分たちの選択の帰結として生じたその災禍を何かのかたちで埋め合わせたい、みたいなことは思わないのか。せめてゴルフぐらいあきらめろよ。

なお、俺の中じゃあゴルフってぇのは、まだまだそういう階級の方々の娯楽だというハラがあるものだから、ここではあえてゴルフ場に敵役になってもらいました。じっさいにはゴルフ場が突如処分場になったりしたら、近くの人は「冗談じゃない!」って思うだろうし、安サラリーマンでも「いやゴルフはスバラシイ」とか言う人はいるだろうけどね、ここはひとつの思考実験ということで許せ。