日本テレビのプロデューサーをしていて、原発事故後、なんか社の方針と衝突したとかいってフリーになったらしい木下黄太氏という方がいる。基本的に放射線被害をもっと警戒しろよ、という主張の方で、ブログとかツイッターとかで警鐘乱打してるようだ。

ブログはこちら→放射能防御プロジェクト 木下黄太のブログ  「福島第一原発を考えます」

ここで、ちと話は飛ぶ。「まもなく関東に大地震が来る来る来る」と何年も言い続けていて、たまさか(関東ではないが)大地震が起きたことで「この人当たる!」とか勘違いしてしまった信者が急増?し、その筋で有名になってしまった小林朝夫という方がいる。その発言を小生はここんとこずっとフォローしているんだが、それは地震や放射能を警戒するのはいいとしても、そういうインチキ予言を根拠にして「怖がる」のはきわめて危険なことであるからだ。

で、最近この小林氏が、福島第1原発の敷地内で「地割れ」が生じ、そこから蒸気が上がってる、これは地下に落ち込んだ核燃料がなんかすごいことになっているからだ、みたいなことを言い出している。あ、またデマかと思っていたんだが、実は先に挙げた木下黄太氏もブログで同じようなことを書いていたのだった。ソースは「福島第一原発の作業員」で、「メールで情報が地元関係者に届いた」のだという。「政府内の情報源」にあたってウラを取ったようなことも書いてある。うーん、と俺は考え込んでしまった。

街のインチキ予言者なら、まぁ許せる(いやホントは許せないんだがw)が、いちおう「ジャーナリスト」を名乗る人が、この種の怪しげな「情報」を広めるのはかなりまずいのではないか。少なくとも専門家に当たらないといけない。格納容器を破って核燃料が落ち込んでいる可能性はある。だが、それが熱源となって土中に蒸気を発生させ、地割れを起こし、噴出する。そのようなメカニズムは想定可能なのか? 何らかの「見間違い」の可能性はないか? そのあたりを詰めねばなるまい。平たく言えば、彼は「裏をとりきっていない」。

実は、以前からこの木下氏、ジャーナリストを名乗るにはいささか危うい人だと思っていた。というのも、この方、「首都圏でいきなり鼻血を出す人が増えている。これは低線量被曝の影響ではないか」みたいなことも書いていた。専門家のコメントも何もつけずに、である。そりゃ高線量を一気に被曝したら髪が抜けたり、鼻血が出たりもするだろうけど、話は首都圏ですよ、マイクロシーベルト単位の被曝でそんな急性症状が出るとは医学的には驚天動地の話じゃねーかと、まぁ素人の俺ではあるけれども、思ったのだった。

ちなみにこの木下氏、日テレ時代には確かオウム取材とかでならした人物のはずだ。そういう修羅場では、まぁ業界でいう「とばし」(裏を取りきらずに先走った報道をすることだな)はアリだったのかもしらんが、問題は低線量被曝の影響みたいな、ハッキリしたことのいえない世界で「こういうこともありうる、ああいうこともありうる」と吹いて回るのは如何なものか、という話である。

また脱線するけれども、内部被曝はスゲー怖いとか吹いて回ってるクリス・バズビーのECRRなんかだって、反原発サイドに立つ京大の今中哲二氏からは厳しい批判を浴びてるわけであってね、もう何でもかんでも危ない危ないといって回るのは違うと思うのである。

それこそ広瀬隆氏みたいに「反原発運動家」みたいなスタンスでそういう発言をするなら良い。だが、しかし「ジャーナリスト」の範疇というものはおのずからあるだろう。ただでさえメディアへの風当たりが強い時代である。使命感をもって仕事をなさるのは結構だが、そこんとこはちゃんとしていただきたい。