先日、大学生の娘が講義で「竹取物語」を読むように言われた、とか何とかボヤいていた。なんかそれが記憶に残っていたのか、「そういえば本当はどんな話だったっけ?」とここんとこ少し気になっていた。

実はこの数年、まだ小学校低学年の下の子を寝かしつけるときにかぐや姫を語って聞かせたりしていたのだが、もうほとんど「創作」に等しく――たとえば最後のかぐや姫昇天の場面など、俺の脳内では「天皇の軍隊がかぐや姫を拉致するためやってきたのだが、そこへ襲来した巨大UFOが怪光線を発射して阻止、姫を奪還していく」という、何か左翼っぽいストーリーになっていたりする――そこはそれ、内心忸怩たるものがあったのだった。

そんなこともあって、最近、たまたま見かけた講談社学術文庫版をザッと読んでみた。古文を目で追いつつ意味がよく取れないと現代語訳をチラ見する、といった適当な読書ではあるけれどもなかなか面白かったぞ。

かぐや姫に求婚する5人の公達のエピソードのあたり、なんかオヤジっぽいダジャレを仕込んであって笑わせたりもするし、姫と竹取の翁の親子の情愛をめぐる話じゃ(やっぱりベタはベタなんだが)いまや人の子の親となっておる俺としてはけっこうシンミリさせられたりもする。

かと思えばラストシーン、天の羽衣を着せられたとたん、かぐや姫は「翁をいとほし悲しと思しつることも失せぬ。この衣著つる人は、物思も無くなりにければ、車に乘りて百人許天人具して昇りぬ」というのだった。つまり涙ナミダのお別れシーンから一転、記憶がなくなってしまった姫は「この爺さんたちナニモノ?」といわんばかりに天に昇っていくというクールビューティーぶりで、このあたりは実にハードボイルドである。

日本最古の物語などともいわれているようだが、やはりそこは古典、残るには残るだけの理由があるわい、と思ったことであった。