オカルト  現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ

オカルト 現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ

  • 作者: 森 達也
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/04/10
  • メディア: 単行本



森達也はむかしから結構好きである。もちろんオウム取材でもいい仕事をしたと思っているし、というか本当は「放送禁止歌」が彼のベストではないかと思ったりもしているのだが、一方でオカルト系のルポルタージュもやっていて、そのあたりも何となく親近感を感じる一因となっているのだろう。

で、今回の新刊は「オカルト」。ついつい買ってしまう。ササーッと読めたんだが、しかし、うーん、今作にかんしてはあんまり感心しなかったなぁ。

基本はオカルト界隈のいろんな人に会いに行く、みたいなコンセプト。例によって清田君とか出てくるんだが、あんまり聞いたことの無い人もでてきて、あぁこういう人がいるんだー、的な読み方がひとまずはできる。

で、通奏低音的には「おっかけると逃げる、ほっとくと近づいてくる」的なオカルトのとらえどころのなさを描いているということもできる。観察者としてはそこに何やら何者かの「意思」みたいなものを感じてしまうよね、みたいな物言いもあってキホン是認したいとは思うんだが、しかし、「で? それからどうなんの?」というと、そっから先は何も言ってない。

何かカタルシスなんにもナシで終わっちゃいましたネ、みたいな感じ。当人もちょっと苦しいナと思ったのだろう、担当編集者をサンチョパンサ風に作中に登場させていじったりしてんだが、天下の森達也がこういうことで逃げを打つのはちょっと見苦しくないか。

たしかに森達也は「キャラ」が立っているので、本作みたいなユルイお話でもどうにかこうにか読ませることはできるんだが、そういうところに安住していただきたくはありませんナ、というのがとりあえずの感想。