夏の甲子園もいよいよ佳境。勝ち進んでいた名門・作新学院は本日負けて惜しくもベスト4を逃した、などというニュースが流れてきた。しかし、「頑張ったのに惜しかったネー」などということは、生来ヘソマガリの俺なので絶対に言わないのである(笑)。

そう、作新学院といえば、こともあろうにこの夏の甲子園大会開会中、同校の野球部員が「16歳の少女に抱きついてけがをさせたうえ現金を奪う」という事件を起こして強盗容疑で逮捕される事件を起こしてしまったことで有名な学校である(話は横道にそれるが、この少年は女の子に抱きついてるんだから強盗罪プラスアルファで逮捕すべきではなかったかというのが俺の個人的見解ではある。ま、どうでもいいが)。

で、俺などは頭が古いものだから、「あぁこれはまずい。教育の一環としての高校野球だから、やっぱり仲間が凶悪犯罪を起こした以上、野球部はいさぎよく今後の試合を辞退して栃木に帰るんだろうな」と思って、高野連の対応を見ていたのであった。ところが大会本部サイドは今回、「個人の犯罪だから」とかいって、野球部にはおとがめなし。で、チームはその後も素知らぬ顔で試合を続けて今日に至った、という話である。

あれ?と思った。俺はこれまで、大会本部=朝日新聞が、たかがガキの野球をこれほどまでに大きく報道するのは、高校球児というのは純真無垢で努力精進を惜しまぬ青少年のカガミであるがゆえに、その清きスピリットを顕彰しよう――というリクツがあるからだと考えていた。

だからこそ、高校球児は清く正しくあらねばならぬ。イマドキのジョーシキからいえば古くさい「連帯責任」なんて概念をもちだしては、「あ、オタクの学校は野球部員が万引きしたから甲子園は辞退してネ」みたいな言い草を、さんざん振り回してきたのである。

いや、俺は別にこれを責めているわけではなくて、それはそれでいい、と思っていた。いかにアナクロでタテマエ的なものであれ、「青少年かくあるベシ!」とかいって揺るがない、こういう頑固ジジイみたいな人たちがいるというのはそれはそれでアリだと思っている。むしろ、こういうジジイみたいな連中は、社会にニラミを効かせるためにもずっと存在していて頂きたいような気さえする。

あぁそれなのに! 今回の大会本部の「ものわかりの良さ」は何なのだ? 「個人の犯罪」だって? じゃあ、これまで「連帯責任」をとらされて甲子園への道を絶たれてしまった連中は納得いかんだろうが? ダブルスタンダード、ってか?

つまり、である。これまで「清く正しい球児」というタテマエを追ってきた朝日新聞も、いよいよここにきて「そりゃもう無理だから、もういいよ、現実追随でいくよ」と白旗を揚げてしまった、今回の出来事はそういうターニングポイントだと思うのである。

むろん、朝日新聞が「まぁ大したことじゃないし~」とかいってコトを穏便におさめてしまい、つまりはこれまで掲げてきた「清く正しき高校球児」みたいなフィクションをおそるおそる(笑)今回引っ込めてしまった背景には、それなりの流れというものがある。

いうまでもない、これまで各都道府県の代表が激突するという構図でやってきた甲子園大会も、実際には田舎の学校に大阪あたりのセミプロ選手(笑)が大挙助っ人でやってきては自称「××県代表」で出場するパターンが当たり前になっているわけで、もちろんそれは(俺がいつも書いているように)少子化の中で学校のPRをしたい田舎の学校と、「甲子園への近道→プロへの登竜門」という夢を描いている、利にさとい野球小僧(アンドその親)の俗情が結託して生みだした状況である。

高野連=朝日新聞も、どういうお考えかはしらぬが、結果的にそういう「プロ選手セレクション大会としての甲子園」を結果的には黙認してきた(たぶん大会を盛り上げるためにはスターが必要であり、スターを生むためには「野球名門校」に頑張ってもらわにゃ、といった発想があったのだろう)。

ま、しかし、今回の作新学院じゃないが、こういう名門校は部員が100人からいるというから、「教育としての野球」もクソもない、そもそも指導者の目なんか届かんだろう。そのとどのつまりが、今回の事件である(というか、この捕まった野球部員にしても、こういうことをすれば野球部に累が及ぶのではないか、と一瞬考えなかったか、と俺などは思うのだが、ある意味で高野連=朝日もこんなクソガキに足元を見られたというか、舐められていたといえるかもしれぬな)。

というわけで、朝日新聞のタテマエも、「いいよいいよ」と現実に追随しているうちに根っこが腐ってしまった、という次第。

ならばもう、いっそのことタテマエは全部辞めてしまってはどうか。ベンチ入りしている選手以外が凶悪犯罪おかしてもお咎めなし。野球留学、大いにけっこう。ひたすら強さを競う。明日のプロ選手の卵を鵜の目鷹の目で発掘する大会。それでいいではないか。サイは投げられた、のだから。