そういえば、いわゆるブログが広まる以前の時代であったが、しょぼいサイトを自前で作っていたのだった。その当時に書いたコンテンツを再録してみようかと思い立った。とりあえず本の感想文などアップ。


阪神タイガースの正体

阪神タイガースの正体

  • 作者: 井上 章一
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本


 さいきんの阪神関係の本の中では、これ、出色でしょう。

 なんでかというと、建築史が専門のこの先生、やっぱり毎日毎日現実の壁にぶちあたりながらも「明日こそは!」ってけなげに頑張る阪神が大好きなんだけど、よくよくプロ野球史を調べていったら、実は阪神ってけっこうズルイ球団で、そんなにカッコいい存在じゃないんだなー、とわかってしまった。いわば「阪神幻想」を自らぶちこわす本になってる。でもでも、そんなウラがわかってしまっても、やっぱり阪神を見捨てることはできないよ、みたいな切ない心情がにじんでて、そこがいいんだよなー。

 で、具体的にどんな話がでてくるかというと、例えば「阪神は基本的に巨人の腰巾着である」。戦後のプロ野球の2リーグ分裂のときなんか、阪神球団はさいしょ新リーグ(現・パリーグですね)に移る構えをみせながら、最後は「人気球団の巨人についてけば間違いない」と仲間を裏切った。巨人という体制に反逆する「反体制のヒーロー」なんてイメージ、作り物なんですわ。

 「作り物」といえば、「東京なんかに負けへん。わいらは大阪代表や」みたいなイメージもあるんだけど、実はこのあいだまで大阪を代表するチームといえば「南海ホークス」だった(今のダイエー)。歴史こそ古いけど、たいした人気球団じゃなかった。いろんな幻想をふりまいて、今の阪神がある…。

 ますます人間くさい球団・阪神の実像がみえてくる本です。(2001/10/06記)