「ジャック・ヴァレの本を読みながらそこに登場する興味深い円盤事件を紹介するシリーズ」(笑)であるが、今回は「スワン/CIAコンタクト事件」を取り上げてみよう(事件の呼称については「定番」的なものがないようだが、とりあえずということで)。
これはヴァレの『見えない大学 The Invisible College』第3章に出てくる事件なのだが、一言でいうと、1959年、こともあろうに米海軍の軍人が「チャネラー」になってしまい、そのチャネリング相手に言われるがままに窓の外をみた軍人たちが本当に円盤を目撃してしまう――という前代未聞の事件である。そういえばこの事件、大昔に読んだけれども今は行方不明のロバート・エメネガー『UFO大襲来』(これは1975年刊にKKベストセラーズから出た邦訳書名。原著は1974年刊の『UFOs: Past, Present, and Future』)にも書いてあったことを思いだし、今回古本屋から改めて1円で購入してみた。
ただ、念のためジェローム・クラークの『The UFO Encyclopedia』を開いて「SWAN/CIA CONTACT STORY」という項目を読んでみると、ヴァレやエメネガーが書いているのとかなりニュアンスが違っていて、彼は何となく捏造されたストーリーであるようなことを匂わせておる。どうなってんだYOという気がするけれども、とりあえず以下ではまずヴァレ&エメネガーの書いている話をご紹介し、そのあとでジェローム・クラークの言い分をチェックしてみることにしよう。あんまり好きではないけれども、「と学会」式の「伝説」と「真相」スタイルだナ(笑)。
【伝説】
*その内容についてはヴァレとエメネガーで若干の異同があるが、以下の記述は2人の著作をベースに、ネット上でみかけた「The Day the Navy Established ‘Contact’」なる記事(出典は「Second Look Magazine May 1979」とあって、雑誌「Second Look」が掲載した記事のようだ 。著者はJay Gourley)を適宜参考にしている。
■1959年6月下旬@メイン州サウス・バーウィック
米海軍情報局の将校2人が、米メイン州サウス・バーウィックに住むフランソワ・スワン夫人のもとを訪れた。というのは、当時メイン州に住んでいた或る退役将校(海軍の提督であったという)から、「ある女性が宇宙人とおぼしき存在とチャネリングをしている」との情報が海軍に寄せられたからである。
実際に当地に赴いて面会をした将校2人は、この女性についてはカナダ当局が既に綿密な調査をしていた事を知る(注:なぜ米国の市民をカナダが調査したのかはよくわからないが、とりあえずメイン州はカナダ国境に面した州ではある)。彼女はいわゆる自動書記のかたちで「宇宙人」からのメッセージを受け取っていたのだが、ともかく2人はトランス状態に入ったスワン夫人を通じて、チャネリングの実験をしてみた。その宇宙人は「天王星のAFFA」と名乗ったようで、2人が「天王星の一日の長さ」「木星の遠日点における太陽との距離」といった、学歴や生育歴からみて彼女が知っている筈のない質問をしたところ、正答が返ってきたことに驚いたという(もっとも彼女に「天王星人とのチャネリング」をしているという自覚があれば、このあたりは自ら調べていた可能性はあるだろう)。エメネガーによると、彼ら宇宙人の面々は「OEEV」(諸惑星宇宙連合の意)を構成し、「EU」ないしは「EUENZA」(地球の意)という名のプロジェクトに取り組んでいるのだ――といった話を聞かされたという。
さて、このチャネリングの最後で、彼女は訪れた2人の将校のうちの1人(ヴァレは「カーティス中佐」という仮名を用いている。以下、それに従う)に「あなたもチャネリングを試みてみたらどうか」と勧めた(あるいは「憑依した宇宙人」が促したのかもしれない。エメネガーはそう理解しているようだ)。実際にカーティス中佐はチャネリングを試みた。が、その時はうまくいかなかった。
■1959年7月6日@ワシントンDC
このような経験をしてワシントンDCに戻ってきたカーティス中佐は、この日、CIAのオフィスで再度チャネリングの実験を試みる。ちなみにその場所は、米国写真解析センターとでも呼ぶのだろうか、CIA所管のNational Photographic Interpretation Center (NPIC) のオフィスであったようだ。同席したのは2人(一人は海軍の情報将校。もう一人は文民の情報官――場所からいってもおそらくはCIAの職員――だったという)。このたびの自動書記は成功し、「AFFA」が現れた。その際、次のような問答がなされた。
Q.「あなたは特定の政府、宗教、グループ、民族に肩入れしようとしているのですか?」
A.「いいえ(AFFAと署名する)」
Q.「第三次世界大戦は起きるでしょうか?」
A.「いいえ(AFFAと署名する)」
Q.「カトリックの信者は選ばれし民なのですか?」
A.「いいえ(AFFAと署名する)」
Q.「我々は宇宙船、というか空飛ぶ円盤を見ることができるでしょうか?」
A.「いつ見たいのですか?」
Q.「いますぐ見られますか?」
A.「窓のところに行きなさい」
そこで3人が窓際に行くと、実際に「空飛ぶ円盤」が飛んでいるのが見えた。すぐさまレーダー基地に電話をしてみたところ、その空域ではレーダー波の反射が探知できなくなっているが原因は不明、との返事が返ってきた。この目撃があったのは午後2時のことだった。こののち、「プロジェクト・ブルーブック」のロバート・フレンド少佐(当時)にワシントンDCに出向くよう連絡が入る。
■7月9日@ワシントンDC
ロバート・フレンドはこの日、まさに3日前の出来事が起きたのと同じオフィスに赴いた(ちなみに「ブルーブック」が置かれていたのはオハイオ州のライトパターソン空軍基地である)。そのミーティングに列席したのは海軍将校や文民の情報官(CIAの職員?)たちで計7人。その中には問題のカーティス中佐もいた(フレンドが呼ばれたのは、このたびの出来事の当事者が海軍の情報将校であるという重大性に鑑み、専門家としての意見を求められてのことであったようだ)。
スワン夫人のコンタクトとか、6日の円盤事件の話とか、それまでの事態の進展について説明を受けたのち、フレンドは、その場でカーティス中佐にAFFAとのチャネリングを試みるよう提案してみた。この時は「今は好ましくない。ただし、出席者に反対しているわけではない」といった返答が返ってきただけで、首尾良い結果は得られなかった。
フレンドとカーティスはその翌日、一連の事例についてのファイルを保管している海軍情報局(ONI)のオフィスに出向き、記録を調べた。そこには、スワン夫人とのチャネリングに現れた「宇宙人」として、「天王星のAFFA」「木星のCRILL」「水星のALOMAR」「水星のPONNAR」「ケンタウルス座からきたANKAR」といった名前が記されていたという。
こののちライトパターソン空軍基地に帰還したフレンドは、上官に報告書を提出。これに対しては「他の政府機関が調査している限り、ブルーブックとしては無関係でいい」との指示があったという(エメネガーによる)。
【インターミッション】
という話なのだが、ここで補足的に利用させて頂いた記事「The Day the Navy Established ‘Contact’」は、ザッと読んだがなかなか面白いことが書いてある。これは1979年の雑誌記事のようなので事件から20年後に書かれたものということになるが、実は話はそんなに単純じゃないかもしれない、ということを示唆している。ともあれ、そのアウトラインを以下に紹介。
肝心のスワン夫人も存命であった。彼女は米軍の情報機関からいろいろ話すなと言われていたが、この「Second Look」という雑誌の記者を情報機関の人間と勘違いしていろいろしゃべってしまった、と書いてある。彼女によると、その宇宙人の中には、人間を「危険な断層」(dangerous geological faults と言ってるから直訳するとこうなるが、つまり地震のことであろうか)から守るために太陽系をパトロールしているイイヤツもいるが、地球を植民地化しようというワルイヤツもいる、と言っている(「諸惑星宇宙連合」で連中はつるんでいるんではなかったのか、と思うがそこはよくわからない)。
それから彼女は、宇宙人とコンタクトをとったばっかりにキャリアを台無しにしてしまった海軍の士官から最近手紙を受け取った、他の人間はこういうチャネリングに手を出してはいけないのだ、といったことも語っている。これは先のカーティス中佐が、信用を失って酷い目にあったことを暗示しているようでもある。
さて、ここで記事は若干話の方向を変える。この事件には信ずるに足る重要な証拠があるというのである。それはエメネガーが入手した「CIA文書」で、そこには先に示したような「宇宙人」の名前やその組織、さらには7月6日の一件などが細大漏らさず記されている。そして、その書き手は7月6日のコンタクト現場、そして9日のミーティングにも列席していた文民の情報官=CIA職員であり、エメネガー自身、その人物に会ったことがあるというのである。
そのCIA職員の名前をエメネガーは明かしていない。しかし、取材によってその「文民」の身元は明らかになっている。7月6日の時点で存在を秘匿されていたCIAフォトセンターに所属していたアーサー・ルンダールである(ちなみに彼はトレモントンの円盤事件で映像分析に携わった人物である)。
もっともルンダールは、7月6日に円盤など見ていないし、エメネガーのいうようなメモについての記憶はないと言っている。フレンドが出席した会合でも、UFOが目撃されたという話は出ていないし、例の海軍中佐はトランス状態になどならなかった等々、その主張はフレンドやエネメガーと真っ向から対立している。
一方、ルンダールは、7月6日の現場にいたもう一人は、当時CIAに配置されていた海軍の写真分析官であるロバート・ニーシャム(その時点では消息不明だったようす)だが、やはり円盤など見ていないという点では一致をみたと主張している。
如何だろう。これを読むと、また印象が変わってくるのではないか。全く食い違う証言。怪しげな人物の登場。謎のメモ。そう、漂ってくるのは陰謀の香りである――そういえば、この「Second Look」の記事の末尾には、Grant Cameronによる追記というのが付されていて、そういう意味でいうと実にこれが意味深長である。
曰く、研究家のトッド・ゼッケルによると、ルンダールの自宅にはゼッケルが見たことがないほど大量のUFO本の蔵書があった。さらにはCIA筋からは「彼はUFO問題について3人の大統領にブリーフィングをした経歴がある」という情報も寄せられたというのである。
で、オレも少し調べてみたが、このルンダールは単なる技術屋サンではなく、CIAでも相当力をもっていて、キューバ危機のときなんかもだいぶ活躍した名高い人物であったらしい――何となく怪しい雰囲気が漂ってくるではないか。
が、しかし、やはり陰謀論は筋がよろしくない。もう少し見通しの良いジェローム・クラークの議論を「真相」(なのか?)として書く予定であったが、流石に疲れ果ててしまった。それはまた折をみてアップすることにしよう。しばし待たれよ。
これはヴァレの『見えない大学 The Invisible College』第3章に出てくる事件なのだが、一言でいうと、1959年、こともあろうに米海軍の軍人が「チャネラー」になってしまい、そのチャネリング相手に言われるがままに窓の外をみた軍人たちが本当に円盤を目撃してしまう――という前代未聞の事件である。そういえばこの事件、大昔に読んだけれども今は行方不明のロバート・エメネガー『UFO大襲来』(これは1975年刊にKKベストセラーズから出た邦訳書名。原著は1974年刊の『UFOs: Past, Present, and Future』)にも書いてあったことを思いだし、今回古本屋から改めて1円で購入してみた。
ただ、念のためジェローム・クラークの『The UFO Encyclopedia』を開いて「SWAN/CIA CONTACT STORY」という項目を読んでみると、ヴァレやエメネガーが書いているのとかなりニュアンスが違っていて、彼は何となく捏造されたストーリーであるようなことを匂わせておる。どうなってんだYOという気がするけれども、とりあえず以下ではまずヴァレ&エメネガーの書いている話をご紹介し、そのあとでジェローム・クラークの言い分をチェックしてみることにしよう。あんまり好きではないけれども、「と学会」式の「伝説」と「真相」スタイルだナ(笑)。
【伝説】
*その内容についてはヴァレとエメネガーで若干の異同があるが、以下の記述は2人の著作をベースに、ネット上でみかけた「The Day the Navy Established ‘Contact’」なる記事(出典は「Second Look Magazine May 1979」とあって、雑誌「Second Look」が掲載した記事のようだ 。著者はJay Gourley)を適宜参考にしている。
■1959年6月下旬@メイン州サウス・バーウィック
米海軍情報局の将校2人が、米メイン州サウス・バーウィックに住むフランソワ・スワン夫人のもとを訪れた。というのは、当時メイン州に住んでいた或る退役将校(海軍の提督であったという)から、「ある女性が宇宙人とおぼしき存在とチャネリングをしている」との情報が海軍に寄せられたからである。
実際に当地に赴いて面会をした将校2人は、この女性についてはカナダ当局が既に綿密な調査をしていた事を知る(注:なぜ米国の市民をカナダが調査したのかはよくわからないが、とりあえずメイン州はカナダ国境に面した州ではある)。彼女はいわゆる自動書記のかたちで「宇宙人」からのメッセージを受け取っていたのだが、ともかく2人はトランス状態に入ったスワン夫人を通じて、チャネリングの実験をしてみた。その宇宙人は「天王星のAFFA」と名乗ったようで、2人が「天王星の一日の長さ」「木星の遠日点における太陽との距離」といった、学歴や生育歴からみて彼女が知っている筈のない質問をしたところ、正答が返ってきたことに驚いたという(もっとも彼女に「天王星人とのチャネリング」をしているという自覚があれば、このあたりは自ら調べていた可能性はあるだろう)。エメネガーによると、彼ら宇宙人の面々は「OEEV」(諸惑星宇宙連合の意)を構成し、「EU」ないしは「EUENZA」(地球の意)という名のプロジェクトに取り組んでいるのだ――といった話を聞かされたという。
さて、このチャネリングの最後で、彼女は訪れた2人の将校のうちの1人(ヴァレは「カーティス中佐」という仮名を用いている。以下、それに従う)に「あなたもチャネリングを試みてみたらどうか」と勧めた(あるいは「憑依した宇宙人」が促したのかもしれない。エメネガーはそう理解しているようだ)。実際にカーティス中佐はチャネリングを試みた。が、その時はうまくいかなかった。
■1959年7月6日@ワシントンDC
このような経験をしてワシントンDCに戻ってきたカーティス中佐は、この日、CIAのオフィスで再度チャネリングの実験を試みる。ちなみにその場所は、米国写真解析センターとでも呼ぶのだろうか、CIA所管のNational Photographic Interpretation Center (NPIC) のオフィスであったようだ。同席したのは2人(一人は海軍の情報将校。もう一人は文民の情報官――場所からいってもおそらくはCIAの職員――だったという)。このたびの自動書記は成功し、「AFFA」が現れた。その際、次のような問答がなされた。
Q.「あなたは特定の政府、宗教、グループ、民族に肩入れしようとしているのですか?」
A.「いいえ(AFFAと署名する)」
Q.「第三次世界大戦は起きるでしょうか?」
A.「いいえ(AFFAと署名する)」
Q.「カトリックの信者は選ばれし民なのですか?」
A.「いいえ(AFFAと署名する)」
Q.「我々は宇宙船、というか空飛ぶ円盤を見ることができるでしょうか?」
A.「いつ見たいのですか?」
Q.「いますぐ見られますか?」
A.「窓のところに行きなさい」
そこで3人が窓際に行くと、実際に「空飛ぶ円盤」が飛んでいるのが見えた。すぐさまレーダー基地に電話をしてみたところ、その空域ではレーダー波の反射が探知できなくなっているが原因は不明、との返事が返ってきた。この目撃があったのは午後2時のことだった。こののち、「プロジェクト・ブルーブック」のロバート・フレンド少佐(当時)にワシントンDCに出向くよう連絡が入る。
■7月9日@ワシントンDC
ロバート・フレンドはこの日、まさに3日前の出来事が起きたのと同じオフィスに赴いた(ちなみに「ブルーブック」が置かれていたのはオハイオ州のライトパターソン空軍基地である)。そのミーティングに列席したのは海軍将校や文民の情報官(CIAの職員?)たちで計7人。その中には問題のカーティス中佐もいた(フレンドが呼ばれたのは、このたびの出来事の当事者が海軍の情報将校であるという重大性に鑑み、専門家としての意見を求められてのことであったようだ)。
スワン夫人のコンタクトとか、6日の円盤事件の話とか、それまでの事態の進展について説明を受けたのち、フレンドは、その場でカーティス中佐にAFFAとのチャネリングを試みるよう提案してみた。この時は「今は好ましくない。ただし、出席者に反対しているわけではない」といった返答が返ってきただけで、首尾良い結果は得られなかった。
フレンドとカーティスはその翌日、一連の事例についてのファイルを保管している海軍情報局(ONI)のオフィスに出向き、記録を調べた。そこには、スワン夫人とのチャネリングに現れた「宇宙人」として、「天王星のAFFA」「木星のCRILL」「水星のALOMAR」「水星のPONNAR」「ケンタウルス座からきたANKAR」といった名前が記されていたという。
こののちライトパターソン空軍基地に帰還したフレンドは、上官に報告書を提出。これに対しては「他の政府機関が調査している限り、ブルーブックとしては無関係でいい」との指示があったという(エメネガーによる)。
【インターミッション】
という話なのだが、ここで補足的に利用させて頂いた記事「The Day the Navy Established ‘Contact’」は、ザッと読んだがなかなか面白いことが書いてある。これは1979年の雑誌記事のようなので事件から20年後に書かれたものということになるが、実は話はそんなに単純じゃないかもしれない、ということを示唆している。ともあれ、そのアウトラインを以下に紹介。
もともとの情報を海軍に寄せた元提督というのは、H・B・ノウルズという人物であった。メイン州サウス・バーウィックにそのような名で該当する人物はたった一人しかいなかったのである。彼はこの時点で亡くなっていたが、ノウルズ夫人は存命だった。彼女はスワン夫人を知っていて、そのチャネリングを本物だと信じていたようだったが、亡夫は「全部が全部、信じこむこともあるまい」と言っていたそうだ。
肝心のスワン夫人も存命であった。彼女は米軍の情報機関からいろいろ話すなと言われていたが、この「Second Look」という雑誌の記者を情報機関の人間と勘違いしていろいろしゃべってしまった、と書いてある。彼女によると、その宇宙人の中には、人間を「危険な断層」(dangerous geological faults と言ってるから直訳するとこうなるが、つまり地震のことであろうか)から守るために太陽系をパトロールしているイイヤツもいるが、地球を植民地化しようというワルイヤツもいる、と言っている(「諸惑星宇宙連合」で連中はつるんでいるんではなかったのか、と思うがそこはよくわからない)。
それから彼女は、宇宙人とコンタクトをとったばっかりにキャリアを台無しにしてしまった海軍の士官から最近手紙を受け取った、他の人間はこういうチャネリングに手を出してはいけないのだ、といったことも語っている。これは先のカーティス中佐が、信用を失って酷い目にあったことを暗示しているようでもある。
さて、ここで記事は若干話の方向を変える。この事件には信ずるに足る重要な証拠があるというのである。それはエメネガーが入手した「CIA文書」で、そこには先に示したような「宇宙人」の名前やその組織、さらには7月6日の一件などが細大漏らさず記されている。そして、その書き手は7月6日のコンタクト現場、そして9日のミーティングにも列席していた文民の情報官=CIA職員であり、エメネガー自身、その人物に会ったことがあるというのである。
そのCIA職員の名前をエメネガーは明かしていない。しかし、取材によってその「文民」の身元は明らかになっている。7月6日の時点で存在を秘匿されていたCIAフォトセンターに所属していたアーサー・ルンダールである(ちなみに彼はトレモントンの円盤事件で映像分析に携わった人物である)。
もっともルンダールは、7月6日に円盤など見ていないし、エメネガーのいうようなメモについての記憶はないと言っている。フレンドが出席した会合でも、UFOが目撃されたという話は出ていないし、例の海軍中佐はトランス状態になどならなかった等々、その主張はフレンドやエネメガーと真っ向から対立している。
一方、ルンダールは、7月6日の現場にいたもう一人は、当時CIAに配置されていた海軍の写真分析官であるロバート・ニーシャム(その時点では消息不明だったようす)だが、やはり円盤など見ていないという点では一致をみたと主張している。
如何だろう。これを読むと、また印象が変わってくるのではないか。全く食い違う証言。怪しげな人物の登場。謎のメモ。そう、漂ってくるのは陰謀の香りである――そういえば、この「Second Look」の記事の末尾には、Grant Cameronによる追記というのが付されていて、そういう意味でいうと実にこれが意味深長である。
曰く、研究家のトッド・ゼッケルによると、ルンダールの自宅にはゼッケルが見たことがないほど大量のUFO本の蔵書があった。さらにはCIA筋からは「彼はUFO問題について3人の大統領にブリーフィングをした経歴がある」という情報も寄せられたというのである。
で、オレも少し調べてみたが、このルンダールは単なる技術屋サンではなく、CIAでも相当力をもっていて、キューバ危機のときなんかもだいぶ活躍した名高い人物であったらしい――何となく怪しい雰囲気が漂ってくるではないか。
が、しかし、やはり陰謀論は筋がよろしくない。もう少し見通しの良いジェローム・クラークの議論を「真相」(なのか?)として書く予定であったが、流石に疲れ果ててしまった。それはまた折をみてアップすることにしよう。しばし待たれよ。